「目からウロコのコーチング」

■本レポート抜粋

どれほど大きな組織でも、組織は個人の集まりによって形成されています。組織の制度を上手く構築したとしても、個人の感情によって、もたらされる成果に大きな差が生じてしまいます。組織を構成する個々人の力をいかに引き出すか。部署内のメンバーの心の繋がりをいかに確かなものとするか。これからの時代を生き抜く、活発な組織を作るためには、本書で紹介されている「コーチング」の視点や方法が今まで以上に必要となるにちがいないと本書ではいいます。

コーチングとは、相手の可能性を引き出し、自ら考えて行動することをサポートするスキルです。コーチというと、部活の指導者のような、厳しい指導を行う人物像が思い浮かぶかもしれません。だが、コーチングにおけるコーチは、相手と対等な立場に立ちます。答を押しつけることなく、相手の中にある答を引き出すことで、その潜在能力を発揮させるのです。

本書では、コーチングの基本的な考え方と実践の方法にくわえ、「上司と部下」「銀座No.1ホステスと常連客」といった豊富な具体例が、わかりやすく提示されています。チームのリーダーはメンバーの力を引き出すためにどうすれば良いか。管理職として個々の部下とどのように向き合えば良いのか。こうした悩みを抱えている人にとって、人間の本性に根差した本書のメッセージが大いに役立つだろうといいます。

ーーーーー書籍情報-------

著者名:播摩早苗

著書名:目からウロコのコーチング

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■コーチングの効果

あなたが管理職の立場にあるとする。部下が船、そして目標を島だと仮定してみよう。船が置かれている現状を部下自身で認識できるようにし、不安を軽減して、目的の島までの航海をサポートするのが「コーチ」です。コーチングとは、相手という船が目的の島に最短の航路で向かうために効果的にサポートするコミュニケーションスキルです。

コーチングによる効果の一つは、「相手にとって『話を聴いてもらいたいひとになれる』ということ」です。部下にとって「話を聴いてもらいたいひと」になれたらどうか。部下は自ら錨を上げ、たとえ逆風でも広い海原へと進み、自分で判断できる能力を備えるようになるでしょう。部下が発揮する能力は、「いい気持ちで働けるサポートができるかどうか」というあなたの管理職としての能力にかかっています。

船のナビゲーションは航海の専門家にしかできません。だが錨をもちあげるための安心を生み出すことは、コーチングによって誰でも行えるのだといいます。

組織でコーチングを行う場合、管理職がコーチングスキルだけを学んでいても成功は難しいといいます。同時に自分のインターナル環境(内面的環境)のトレーニング、すなわち意識改革に取り組む必要があります。上辺だけのコーチングスキルでは部下を操作することになり、成果を出せなくなるからだといいます。

■相手の答を引き出す

現役時代は名選手といわれたひとでも、指導者として名を残せるひとと、そうでないひとがいます。その二つを分けているのは、「選手個々の技能を見極め、優れた部分に焦点を当て、伸ばせるひと」か、「誰にでも自分のノウハウを押しつけ、合わない選手を潰してしまうひと」かという違いです。指導者が厳しく自分のやり方を押しつけてきた組織では、いざ試合の際、選手たちはコーチの指示待ちとなり、立ち往生してしまうのです。

コーチングとは、会話によって相手の優れた能力を引き出しながら、前進をサポートし、自発的に行動することを促すコミュニケーションスキルです。そこには「指導」という概念はなく、コーチとその相手は対等な立場となります。相手の職業に関する専門知識も必要なく、コーチングスキルを習得すれば、どのような相手との会話でもそれを活かせるようになります。

ひとは他人から命令されたときではなく、自分で「答」にたどりついたときに前進できます。答はそのひとの中にあるとするのが、コーチングの考え方です。コーチの役割は、相手が答にたどり着くために、聴いて、受け入れて、質問することが重要だといいます。自発的にたどり着いた答に基づく行動は、命令による行動よりも、最終的に高い成果を得られます。ひとはみな条件が整えば、自分の力を最大限に発揮して、自己実現に向かうものなのです。

■質問して、聴いて、受け入れる

コーチングの大きな目的の一つは、ひとの潜在している能力を引き出します。そのためには、「質問する」ことが有効です。コーチングでは、「達成目標」をコーチに宣言します。目標を達成して成功した姿を宣言し、言語化することで、意識は成功することと深く関わりはじめ、成功のための機会に敏感になります。

コーチングは、質問して、聴いて、受け入れるという三つのスキルさえあれば、ある程度機能します。私たちは、自分の頭の中にある「ふるい」を通してひとの話を聞きがちです。それでは選りすぐられた情報だけが残ってしまいます。この「ふるい」と戦って、頭に浮かんだ自分の思いをすぐに手放し、相手の話を100%理解しようと思って聞きます。これこそがコーチングにおける「本当に聴くこと」といえます。

質問して、答を聴くことを繰り返したら、「コミュニケーションを完結させる」ことが大切だといいます。相手の話を要約したり復唱したりして、「話を受け入れた」というサインを発信することで、コーチングのワンサイクルが終了するといいます。

■自分の気持ちを出発点にしたIメッセージ

「承認」は、部下を認め、強みを最大限発揮させるのに効果的なスキルだといいます。大げさに褒めることとは違います。相手の「存在」について、あなたの「今ここで」の気持ちを伝えることです。

承認のメッセージには、IメッセージとYOUメッセージがあります。YOUメッセージは、「田中さんって、ステキなひとね」などと、相手を主体にして伝えることだといいます。それに対して「青木と一緒にいると、なんだか安らぐな」というように、発信する側が「今ここで」の自分の感じ方を伝えたものがIメッセージです。正直なあなたの気持ちだからこそ、相手は抵抗感なくそれを受け入れられます。

Iメッセージでは、発信する側は抵抗感を、受け取る側は照れを感じるかもしれません。だが、だからこそ相手をインスパイアさせるエネルギーをもつため、承認する場合は、I メッセージを使うとよいといいます。

Iメッセージは、承認だけでなく、コミュニケーションのすべての場面で活用できます。相手を勇気づけ、動かし、刺激し、行動させる力をもっています。私たちは、トラブルがあったとき、「あの部長は、私の話を聴いてくれない」というように、相手を主語にして考えがちです。しかし、それでは相手を変えることはできません。一方、遅刻した相手に「待っているから、早く来てね」と伝えるように、「私の今の気持ち」を出発点としたIメッセージであればどうか。相手は否定できず、YOUメッセージよりずっと受け取りやすくなります。

Iメッセージは、相手に対する自分の感情にフォーカスしてみえてくるものを言葉にした、クリエイティブなものです。このように相手に合わせたメッセージを発し、サポートするのがコーチングの極意だといいます。

■インスパイアを生み出す

コミュニケーションは、私たちの心を温かくも冷たくもするようなエモーショナルエネルギーを生み出します。相手を刺激し、勇気づけ、行動させるコミュニケーションのレベルは、もっとも高いエネルギーをもちます。これをインスパイアレベルといいます。ただ情報を伝達し、指示・命令するのでは、相手との間に距離ができ、冷えびえとした感じを与えてしまいます。これに対し、共感や呼応するものがあると、言葉以外のものが双方向に生まれ、空気が温まるでしょう。

上司が感情のこもった言葉を直接投げかけると、部下は勇気づけられ、エネルギーレベルがインスパイアレベルへと上昇します。コーチが「今ここでの率直な気持ち」としてのIメッセージを伝えることで、相手を勇気づける会話ができるのです。

コーチングでは、「思ったことをしゃべる」のではなく、「しゃべりながら自分の考えに気づく」ということをしています。インスパイアレベルのIメッセージを発信するときも、自分の考え、思いを正確かつ効率的にレポートしようとしなくてよい。自分が発信したいIメッセージの中身に集中するとよいといいます。

■「コーチングのアドバイス」

やる気レベルを下げる上司とはどのようなひとたちか。たとえば、「話を聞かずに評価する」「責任を転嫁する」「自分のやり方を押しつける」ひとたちだといいます。こういった上司は、指示・命令によって部下に答を与えるスタイルをとります。これは、かつて日本の繁栄を築いた管理職のあり方でだともいいます。下の者である「愚者」が、先生、親、上司といった「賢者」の命令に従うという「ヒエラルキー」に基づく人間観といえよう。

指示・命令だけのほうが、忙しい中でも早く成果を出せるとする考え方もあります。しかし、コーチングスキルによって部下の能力を引き出すことができれば、部下は自分で考え、自発的に行動するようになります。すると、自ら判断できる人材が育つため、結果的に管理者の負担が減るといいます。

コーチングのアドバイスは、相手のためのものです。相手がほしい情報や嬉しいプレゼントでなければいけません。コーチングにおけるアドバイスは、すべて話を聞き終わったタイミング、つまり、背景や現状を聞いてフォローするタイミングで要領よく行うことが重要となります。

■コーチングの構造

コーチングの構造は、次の五つのステップで構成されています。

(1)「目標」を掲げる

(2)「現状」の把握

(3)目標と現状のギャップをつくりだす「原因」を本人に言語化させる

(4)目標達成のための「行動」として何をどうやるべきかをイメージ化させる

(5)「アドバイス、フォロー」をする

上記5つといいます。

コーチングの構造は、「なりたい状態(目標)-現状=取り組むべき行動」として提示できます。これは「現状に何(行動)を足していけば目的地(目標)にたどり着けるか」を引き出すものです。

相手の周囲で起きて、人生に影響を与えていることは、その人が責任をとっていくしかなく、行動を起こして、自分から「変化の波」を広げていきます。それが自分の人生の主人公として生きるということです。

コーチングの相手は、どんな人生であれ、自ら選択して生きています。コーチが、「相手は主人公だ」という意識で質問や承認を行えば、相手は自分自身をより深く見つめられるといいます。そして、有意義で充実した人生を送ることになります。

■今後取り入れること

1)メンバーをどの領域にまでもっていくかのすり合わせをする。

自分が思っていることと、相手が思っていることが100%一緒とは限らないので、相手の言葉でどこを目指すのかを確認する。

2)現場でのフィードバック

現状、事象に対して答えを与えています。これが原因でもあり、思考をする癖が低下していると思います。したがって、今後はこちらから答えを出すのではなく、ヒントは与えつつ相手から答えを導けるような思考回路を伝えていきたいと思います。

3)クライアントへのコーチング

まずは、徹底したヒアリングを実施しその中から重要な部分をクライアントに理解してもらえるように相手主体で話を進めていき、結果価値ある施策や売上UPのための戦略を一緒に考えられる状況をつくりだします。