アクセシビリティという言葉

 アクセシビリティという言葉を知っていますか?「利用のしやすさ」と訳されますが、ユーザビリティも同じように訳されます。また、似たような言葉に「ユニバーサルデザイン」もあります。この違いに注目してみましょう。


正常と異常

 障がい者は、その能力が「正常」ではないとみなされています。つまり「異常」であると思われています。私が思うに、これは正しくもあり間違ってもいます。
 そもそも人の能力に対しての異常とは何か、それをはっきりさせるためには正常について知っておかねばなりません。人の能力における正常とは、その能力値が大多数の人が含まれる範囲に入っていることを表しています。極端な言い方をすれば「みんなと同じ」という考え方です。こういった意味で「障がい」とは、あくまでも統計的に数値化された特定の能力値に対する評価で、異常値にあるということを表しています。例えば、ほとんどの人の目が見えない世の中であれば、見えないということは「障がい」にはなり得ません。
 私自身は、「障がい」に対して「異常」という言葉を使いたくはありません。それは、「異常」には「異質である」という意味も含まれているからです。人は自分とは異質な相手を受け入れがたいものなのです。
 様々な異論があるとは思いますが、私は「障がいとは、その特定の能力値が大多数の人が含まれる範囲に入っていない」ことだと認識しています。人としての質が変わっているわけではありません。このことが忘れられがちなのだと思います。
 人には悪いところもあれば良いところもあります。全ての人の良いところに注目し、より過ごしやすい社会を作るのが現在の福祉の目的だと思います。

アクセシビリティとユーザビリティ

 最近、ようやくアクセシビリティという言葉が一般に認知されてきています。全ての人にとって利用がしやすい環境のことを表す言葉です。
 WindowsパソコンのPC設定の中では、Windows10までは「簡単操作」と表示されていた項目が、Windows11では「アクセシビリティ」に変わっています。スマホでも「ユーザー補助」から「アクセシビリティ」に変わっています。
 似たような言葉にユーザビリティがありますが、この2つは似て非なるものです。ユーザビリティとは、「人にとって利用しやすい環境」のことを表します。この「人」というのが、健常者のみを表しています。

対象者から見たアクセシビリティ概念図

 上図のように社会的弱者を対象としないユーザビリティに対して、アクセシビリティは社会的弱者にも配慮する考え方です。
 例えば、役所や交通機関の案内で、目的別の行き先を床に色分けした線で描いてあるところがあります。これは、ユーザビリティの考え方で、見えない人にとってあまり意味のないことです。音声により誘導できるシステムが加われば、視覚障がい者にとってもアクセシビリティに配慮されていると言えるものになります。
 ユニバーサルデザインは、機器や施設の設計で全ての人が使いやすい物を作るという理念を言います。最近では、家電に点字がついている物も増えていますし、2~3段の段差はスロープにする等の設計が増えています。あまり知られてはいませんが、缶入りアルコール飲料には点字で「オサケ」と書いてあります。
 このように全ての人を対象とした配慮は広がっています。本年の4月からは、改正障害者差別解消法が施行されます。合理的配慮は義務になるのです。以下のページを参考にしてください。

リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」 - 内閣府 (cao.go.jp)

内閣府Webページ

パソコンにおけるアクセシビリティ

 パソコンにおけるアクセシビリティは、視覚障がい、聴覚障がい、肢体障がい別にアクセシビリティ設定項目があります。下の図は、Windows11のアクセシビリティ設定項目です。スタートメニューの歯車マーク(設定)をクリックして、左列のアクセシビリティをクリックすると現れます。

Windows11のアクセシビリティ設定

 視覚障がい者にとって実用的な設定項目やショートカットについては、次回以降に解説します。同じような設定は、MacでもChromeBookでもできます。

 今回は概念的な話が多くなってしまいました。申し訳ありません。
 次回以降、具体的な設定方法などに触れていきたいと思います。

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