出生数減少は想定より早い、2035年には40万人割れも
ここ数日、「消滅可能性自治体」の話題が世間を賑わしています。
現在、全国には1741の自治体(市区町村)がありますが、このうち4割超の744の自治体が消滅する可能性があるとされています。
また、消滅可能性は免れたとしても、人口の増加を他の地域からの流入に依存しており、地域の出生率が低い「ブラックホール型自治体」に分類された自治体も25個あります。そのうちの多くが、新宿区、渋谷区、品川区など東京都心部にある自治体です。
自治体の消滅可能性の問題の根本原因は、出生数が減少していることです。しかも、従来の想定よりかなり早く減少していることです。
出生数の減少は想定より早い
こちらは、出生数の推移のグラフです。
国立社会保障・人口問題研究所が発表している推計データと、私が独自に予測したデータをプロットしています。
国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、今年2024年あたりに、突然、出生数がV字回復し、その後、極値的なピークを迎え、なだらかに出生数が減少していく予測となっています。
一方で、私は、厚生労働省が毎月発表している人口動態調査を基にして、仮に今の減少率(年間約5%)がずっと続いた場合に、将来の出生数がどうなるかを予測してみました。
本来はコホート分析など必要で、正確な予測ではありませんが、根本的な間違いはないと考えています。
なお、これらは外国人の出生数を含まない数値です。
私の予測では、政府の推計と比較しても、かなりの出生数の減少が見込まれます。
2024年 70万人割れ
2027年 60万人割れ
2031年 50万人割れ
2035年 40万人割れ
なんと、2035年には出生数が40万人割れをしてしまう予測です。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、いったん出生数が回復することになっていますが、現在、その兆しはまったく見えません。
2024年4月23日に厚生労働省より発表された、2024年2月の人口動態統計速報のデータを見ると、出生数は前年同月比で4.2%の減少となっています。
減少率5%より、やや改善傾向ではありますが、プラスに転じる傾向はまったく伺えません。
そもそも、国立社会保障・人口問題研究所の予測は、なにか根本的に間違っているかもしれません。
ただ、怖いのは、その間違った予測を基に、日本の経済・産業・年金などの国の政策が計画されていることです。
将来、想定以上に若い人が減ってしまえば、経済は間違いなく衰退し、年金の支給額も激減するでしょう。
労働人口=国力
私は、国の力は、労働人口の多さに比例すると考えています。
学生時代、海外インターンに参加したとき、他の国の学生から「日本はなぜ高度経済成長を遂げたのか?」とよく質問されました。
自分なりにいろいろ考えて出した結論は、ベビーブームで若い労働力が大量に供給されたことです。
まだ15歳の体力とやる気にあふれた若者が都会で集団就職をして、一生懸命に働いたからこそ、あれほどの成長を遂げたのです。
(私の父も、15歳で東京で集団就職をした一人でした。)
日本人は働き者であり、他の国の人より優れている、という意見もありますが、私はそうは思いません。人の能力は国籍で大きく変わるものではないと思っています。
日本人が特別に優れていたのではなく、労働人口の増加が経済を成長させたのです。
とするならば、出生数の減少とともに、労働人口が減少することは、国の力が弱まることを意味しています。
2024年時点で、日本は、多くの業界で人手不足により営業活動が困難になりつつあります。
特に、トラックやバスの運転手、介護職員、学校の先生など、業務内容の割に給料が見合わない職業は、なり手が不足しています。
このまま労働人口が減少していけば、電車やバスが廃止されてどこにも行けない、スーパーに食べ物がなくて栄養不足、という状況が到来するかもしれません。
出生数の減少は、他のすべての課題を棚にあげてでも、すぐに取り組まなければならない、超重要な問題といえます。