観戦記者:八木⑱ #指す将順位戦7th B級2組 しまのばさんvsのののさん戦観戦記

そう、つまりはこういうことだったのである

以前に書いたB級2組しまのばさんーやきそばさん戦の観戦記は下記のurlから

 この記事を書いたときにはそこまで意識してはいなかったものの、そういえばである。そういえば、この3者、数々の指す将ラジオ業界の修羅場を潜り抜け、数々の指す将イベント業界の修羅場を潜り抜け、風のうわさでしか存在しない”某会”で研究会を行っているこの3人が直接対局をするという事実に気が付いてしまった。
 例年であればB級2組は人数が多いイメージで、必ずしも同じリーグであっても当たることがないということもあり、そこまで気にしていなかったものの、そういえば12人リーグなのである。この場合、同じリーグの人はすべて総当たり戦となって対局があるため、同じリーグの自分以外の対局も、相手棋士の調子や踏み込みや棋風についての情報も事前に探ることができるため、観戦者数が増えてくるものと個人的には認識している。

 この3人の間柄としては、公になっているものでは、youtubeでの指す将団体戦や、逃げラジなどを参照されたい。私の言葉で書き表せないほど、ここ数年でその関係性は増し?続けており、このようなことは類を見ない。

 というわけで、上記やきそばさんーしまのばさんの観戦記を書いたので、これはもちろん、観戦記者としてはこの3すくみをなんらかの形に残さなければならない使命に燃えている。

#フォロワーから見た私の棋風

 こういう情景である。こういうタグはいつのまにか消え失せてしまうのだけれども、タイムリーなので紹介させていただいた。

 さて、本記事では8月9日20時より24大阪道場にて行われたB級2組4回戦、しまのばさんーのののさん対局について書いていきたいと思う。

初手何が起こったのか

 観戦室に記者が入室したのは対局始まって5分過ぎたところである。その時にまずやることとしては、棋譜を最初から振り返ることであろうかと思うけれども、とりあえずこちらをご覧いただこう。

これは見間違いなのかとヤギは最初おもいました

 中の人が違っているのではないだろうか。この初手としては相手をよく知っているからこそ指せるものなのではないだろうか。この次の後手の対応も素晴らしく、2秒も考えずに△3四歩と突き、それとともにため息一つついた気配がした。
 先手のののののさんは、第三回戦を終えて全勝で、終盤の切れ味鋭い寄せと伊藤先生の詰将棋の成果もあってか詰めへの嗅覚鋭い。一方で最近まで体調を崩していたようであるので、その部分、将棋の体力に不安が残る面もあったとかなかったとか。
 後手のしまのば(島ノ葉尚)さんは、第三回戦を終えてのののさんと対照的な結果となっており、納得のいく将棋が指せていないような印象。最近は上品な棋風と例えられたとか何とか。

 そういえば、最近のしまのばさんのnoteは文章がそのまま脳内で再生されてしまうので、月一回30分間でいいからラジオでだべってほしい。

33手目 開戦す

 初手の衝撃はどこへやら先手の居飛車ミレニアムと後手の四間飛車→三間飛車の形となった。この四間飛車であるが序盤では珍しく30秒ほどの考慮で指され、局後、のののさんから『そんなの聞いてない』とコメントあり。続く局面は、後手が石田流へ組み替えるため、△4二角と引いたところ、そこで1分の考慮で先手がえいや、と突きだした。

 石田流には楽には組ませないという意思の表れか。もちろん後手は同歩ととれないので、飛車を浮いておく。△3四飛車。▲4四歩の取り込みに△同銀として、▲2六飛車△3三桂馬として石田の形ができあがる。

4筋の歩を切らしている部分、先手はどのように対応していくのか。とりあえず先手はさらに深く潜っておく。▲8九玉。後手の形は飽和に達しているので、後手も攻めの形を見せる。進んで下図である。

これをとるのは、同銀で駒が活用されており、先手としては▲5六銀の形を作りたいところ。先手は手待ちの▲8六歩。2分と20秒の長考であった。これは同角では▲7五歩として角が死んでしまいそう。後手は1分の後に△5六歩と進め、▲5六銀に△5七歩として垂らしの歩を目指す。硬い相手にはと金攻めである。

ここで先手も捌きに行く。▲6五銀がそれ。後手も△5五角としてこれでいけると踏んだようである。

ただこの局面では、先手に手番がわたり、それを生かして▲3二角と打ち込む。


2三の地点を守るすべがない。つまり守らなくてよい。後手は△5八歩成りとしてと金に期待する。▲2三角成以下、▲5五馬まで進んでみると先手の馬がとても猛威をふるっているように見えた。ここまでの指し手ののののさんの力が発揮されたと言える。

後手の葛藤、美濃囲いの弱点

 第8図では、何が何でも▲7四桂馬を打ちたくなる。ただもし、この▲7四桂馬が最後まで続かなかったら大問題である。後手は現状では横に効く駒を渡す予定はないし、それであったらむしろ▲7四桂馬を打たせて良いのではないだろうか。

後手は△7九とに賭けた。
局後では、この△7九とが思ったよりも響いていなかったことを後悔していたことを記しておく。先手は小考の後▲7四桂馬である。
▲7四桂馬、△9二玉、▲9五歩、△7九と、▲同銀。
後手の手が止まった。

こういうときに盤上の悪魔はひたひたとすり寄ってくる。
△6四金。
控室では悲鳴が上がった。

 記者として書きたい部分はむしろこの後のことなので、この図に関しては両対局者にこの場を借りてお許しいただきたい。40秒の後に▲6四馬。この金の入手により、▲8二金、△9三玉、▲9四歩、△8四玉、▲8五銀などの詰み筋が生じてしまい、この金はただでとられてしまうのである。

 控室の誰もがあきらめかけていた時に、その手は放たれた。
△8二角。

 単純に同桂馬であれば同玉として将棋は続く。ウォーズやクエストであればそうしていただろう。将棋が続くのであれば、勝負は終わっていない。つまり、まだ後手はあきらめていない。光り輝くシマノバショウを見た。
ただ先手も冷静であった。
▲9四歩。

 7四の桂馬や6四の馬をとったとしても詰めろは解除されないため、△9五歩として根元の香車をなんとかしにいくところである。先手は決めに行く。
▲9三銀である。こういう時ののののののさんの嗅覚鋭い。

まぼろしの逃げる手順

 この銀は取るほかない。△同桂馬として先に▲8二桂馬成としたのは、9三の地点のものを角でとられないようにするため。△同玉に▲9三歩成。ここで△7一玉である。

 控室では、8二にと金を捨てる筋が指摘されていたが、これに対しては△6二玉と逃げてどうか、という話であった。すかさずヤギが「4四角!」というも『同龍!』とされてヤギは一敗である。
『あれ、龍が効いている』
控室が落ち着かない雰囲気となった。▲8二と。
 6二玉に今度は▲5四桂馬としたときには、△5一玉であり、龍が効いていなければ…4二に金駒を打って詰む。でも、龍が効いている。
 △同玉が指されたのはこの最中であった。

 以下、先手の正確な▲7四桂馬以下、後手玉は詰んだ。のののののののさんは見逃さない。

 お互いの読みが満載の熱戦であった。上記の棋風をもう一度振り返ってみるとこの将棋ももう一味楽しめるであろう。両者とも対局お疲れさまでした。(了)

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