観戦記者:八木⑥  #指す将順位戦6th B級3組 やきそばさんvs八十一甫さん戦観戦記

 まずはこちらをご覧いただこう。

 こういうツイートはなかなかうれしいものだ。意気揚々と観戦記を書かせていただくことにした、そう、先々週の八木はそれでよいと思っていた。この場を借りて観戦記を書くことを快諾いただいた両対局者には感謝いたしたい。

 昨今では、各地でのコロナウイルスに対するワクチン接種が行われており、思うようにいかない地域もあるところであるが、幸運なことに記者は2回目の接種が受けられるという予定であり、接種翌日が対局日である。1回目は弊餅による記録によれば熱と痛みは解熱鎮痛剤でなんとかなるので、2回目もそうだし、観戦くらいであればなんとかなるだろうと高を括っていた。

 両対局者について簡単に紹介する。
 やきそばさんはまじめな作戦家という印象で、6th対局前は2-1の白星先行である。4thからの参加で 4th:2-9(B級2組↓), 5th:7-4(B級3組→)という成績である。今期は昇級を狙える位置にいるはずである。緻密なデータ集めによるやきそばデータベースにより相手の棋風をコンサルタントしているイメージがある。ビッグなアーチをオーバーザレインボーである。
 八十一甫さんは確か旧ガリィさんで記憶しているのであるが、意外なことに記者調べでは5thが初参加である。5th:7-4(B級3組→)という成績である。これまでの6thでの成績は対局前は1-2でありここらで白い星を1つ手に入れたいものである。対局スタイルは想像では型にとらわれない相手の意表をつくような組手を想像する。この想像の起源となっているのは24アカウント名のhyogeの部分であり、ここからは古田織部の生きざまである『へうげもの』を想起させるからである。それを題材にした漫画もあり、あれは面白いから読んだほうが良いぞ。茶の湯などの文化を闘いの場にした一武人の生きざまである。「ほなら、こういうことしたら、あんたどうすんのよ」という手が多い印象がある。ガリィさんの名前での記憶が強かったので、ラギィさんとたまに間違ってしまう。ウェルカムバック・ラギィさん!
 この二人はTwitter上から対局前の”対局”が始まっており、なんと実際に指す将前に対局を行っている。相手の弱点を相手に聞くなど、なんと仲が良いのであろうか。

 話題は変わりますが、対局当日、接種する前の医師の「1回目出た人はね、そうね、覚悟したほうがいいかもしれないね」という念に負け、早々に39度まで熱が到達している。ただ、タイミングよく解熱鎮痛剤をのめば21時開始の対局までにはスマートフォンにて対局場に来場でき、様子は見ることができる、というふうに読んでいた。

 上記の文章には間違いが2種類あり、①対局開始は20時からであったこと。②熱が出るときイキモノは寝ることができることの忘失である。21時9分に起きて対局室に飛び込んだ記者が見たのは感想戦の情景であった。(これは僥倖といえる)またその後有志より情報提供いただき控室の様子を知ることができたのでそれを合わせて観戦記を書かせていただきたく思う。アクティーさん、ありがとう。

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第1図の特筆すべきところは後手の△6二銀に先手がすかさず▲7八飛としているところ。△6二銀に惑わない、そこには先手の意思が存分に感じられる。むしろ後手が驚いている印象があった(次の△5四歩に12秒かかっている)。その後は後手は飯島流引き角戦法に向かうも、すぐさま角を引かない工夫を見せ、先手は自然に美濃に囲っていく。そして先手が銀を繰り出して第2図である。

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後手としては攻めが遅れている様子であるので先手からの▲5八飛車が見えているのであればそれに対抗する。そう△5二飛車。先手の攻めを包み込む方針。

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その後、手は進み先手が再度仕掛けていく図となった第4図。

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控室はこの時悲鳴にまみれていた。▲4四銀が部分的に受けられないのである。後手は非常手段に出ていく。△1三角から。△1三角に▲4六歩として、その後△5四歩▲4四銀△同銀▲同角△5三銀と跳ね返し▲2六角とし待ってましたの△4六角であるけれども、その後にこの割打ちが決まってしまう(第5図)。

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後手は最終的に下段がスースーするのが気になる。△6八角成▲5二銀不成(▲5三角成が壊滅的)△同金▲6八金としていったん落ち着く(第6図)。

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ここからの後手の構想はなるほどな、と思う。まずは急所への手裏剣△4八歩を飛ばす。とると割打ちのお返しがあるので、▲3九金は当然であるがそこで△4一飛車が攻防の一手(第7図)いいねえ。

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ただ先手にも返し技はあるもので、まずは機先を制する手裏剣▲4二歩から同飛車は悔しいので我慢の△同銀であるけれどもここで▲7五角が用意の手だったか。

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このやきそば激辛であるな。これは記者の感想。その辛さ加減は以下も続く。さすがに4八の拠点をただでとらせるわけにはいかないと、△4九銀とするも▲4七銀として△7四歩▲8六角△6四歩として角を緩和するも▲4六歩が激辛ヤキソバである。

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控室ではやはり焼きそばよりも焼き肉のほうが分があったか、であるとか焼き肉の後の焼きそばはおいしいですよね、とか、にゃーんとかそういう声が飛び交う。
 その後やはり4九の銀は助からなかったのであるが、先手も急がず陣形を組んでいくため、後手もある程度の元気が出てきた格好になる(第10図)。

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△7三桂馬などとも活用できる形にも見えるので後手もやる気が出てくる。ここでも先手はあわてなかった。手裏剣である。▲6二歩である。△同飛車は当然として▲6四歩にも△同飛車である。我慢の時間である。先手はそこで▲7四歩として角により威嚇。飛車は我慢の引きである。△6一飛車。その後も角道を見せながら相手を翻弄し、最後にはガチンと音が鳴るような銀打ちで決めに行く(第11図)。

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ここで△同金左上を見て、清算するのかな、と思っていたところ、後手のこの手にまずしびれる。

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ただ、次の先手の手もものすごい手であった。これにもまた記者はしびれた。

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指されてみれば、後手は馬をとれない。同角成があるため。そして後手には歩しかないので駒を使っての受けはできない。後手はやむを得ず、△5三金とするも▲同角成。そして△4一歩の底歩で耐えた。

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控室からはここで▲4三馬があるという。△同玉であるならば▲5二銀として王手飛車取りである。
先手は▲7二飛車成として△6五飛としてから▲4三馬である。その後先手が迫っていくも後手もいまだあきらめていない(第15図)。

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この角は4二の地点を受けつつ、ほかの手であれば△4五飛車としてこれは何か起こっていてもおかしくない。ただ先手は攻める手をやめない。決め手がある。

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 龍を切る。

 △同銀であれば、▲3二銀打としておき、金打から金を動かして詰む。△同角も同じく。本譜では△4五飛としたが、▲3二銀以下▲4五龍で討ち取ったり、である。

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 全体を振り返ってみると後手の意欲的な作戦に先手が冷静に時には激辛にそして激しく襲い掛かる形となった。焼き肉は正義である。棋譜を追うだけでも途中のお互いに駒をとらないという闘志あふれる戦いであり、病み上がりの記者も元気を幾分か分けてもらえたようだ。

 皆様も、副反応一回目出たら二回目もお気をつけあそばせ(了)

<おまけ>

ふふふ、当たってた。ふふふ。(了了)

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