観戦記者:八木③  #指す将順位戦6th A級2組 こまちさんvsずーさん戦観戦記

 本日は7/17(土)21:00から対局開始の指す将順位戦6th A級2組 こまちさん vs ずーさん 戦をお送りする。あまりのエモさから観戦記者の八木が観戦記を申し出、両対局者の快諾をいただき、書かせていただくことになった。感謝カンゲキ雨嵐である。
 この理由としてはまずは下記の動画をご覧になるとよいだろう。

そして下記の通りの一連のツイート例である。

 これは一段と気合が入っており、こういう戦いを肌身に感じることができるのが指す将順位戦のだいご味であり、さらには対局者として参加していると共感もひとしおである。日本語の使い方があっているかわからないけれども、まとめると、エモい(語彙力)である。

 さて、観戦記者の八木は最近『逆転裁判5』を終わらしたところである。これでもう3回目くらいのクリアになるのだけれども、それでも最後の収束は内容を知っていたとしても心に響くし、今回はなんと電車内で3DSを抱えながら涙ぐむ、ということになった。というところで我に返って急いで対局室へ足を運んで下記の図である。

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記者はわが目を疑った。確か後手のずーさんは下記の通りツイートをしているはずであるし、こちらとしてもそういうつもりで対局室に向かったのだ。

相居飛車で雁木ならばよくわからないので最初は飛ばしていいとかなんて思っていない。いや、決して。『居飛車見習いなので振り飛車マスターですよね』は記者のコメント。控室ではどうやらこの日のために練習していたという情報であり、この対局にかける気持ちが詰まっている。

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さて、この局面では、四間飛車の専門家がもしかしたら、という形で示しているのは『端角』である。ただ、このタイミングではなく、後手としては7四歩を突いていく必要があるということである。なぜならば先手からの7五歩→7六角の形のほうがより価値があるという。(下記勝手読み参考図)

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しかし、そう、本譜は「端角」

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これは最近はやっている形であり、こうしておくと飛車先の歩は銀で受けずに済み、△4四銀などから進める。端歩を絡めても例の2枚換えである。ただ、▲3七桂の形のほうが△3五歩の力も増すので、それをまってから端角でもよいらしい。なるほどなあ。先手も先日端角に遭遇しているらしい。
 ここまででの消費時間は先手▲1分41秒, 後手△7分29秒。後手のほうが時間を使っているところから見ると、先手はもしかしたら想定しているところなのであろうか。ただ、次の先手の手は▲3七桂と桂馬の活用であるが控室はこれで後手に目標ができたという評判。ただ、先手の目標は桂馬の二段活用であった。

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ここでは△2二角もあり、そのまま桂馬をとりきるという形もあったようである。さて、その後は▲7五歩から先手も後手の7四歩を突いていないことを利用して圧迫していく。駒組は進む。

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△8四歩は控室でも想定されている手。ここから△7二飛を目指す。角の頭を積極的に狙っていく。

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実質相袖飛車になってヤギ歓喜である。いや、観戦記者も身を乗り出していく。
そういえば後手は以前に『袖飛車は硬いところを狙っていくので何のために指すのかわからない』というコメントを残している。こういうときは角の頭がやわらかいので棋理に沿っているということであろう。銀の進出は受け止められないので、ここはなんとかいなしたいところ。

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まずは相手の角道をとざしておくのが大事。いつでも△5七角成があるのは生きた心地がしない。もちろん△7五銀から拠点ができそうな形であり、その通りに進む。

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冷静に上手を見ると、先手は囲いが硬いものの拠点を作られているのでいきなり何かあるというわけではない。後手は硬そうに見えていわゆる玉飛接近の形なのでおもったよりも硬くはない。隙がないが、金が浮いているところがどうでるかである。また、角と銀をいかに使うことができるのか、というのが勝敗にかかわりそうである。ここで△3五角としたが、この手は控室では不評であった。

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改めてみても飛車を切って▲4三角がやっかいであるとの評。個人的には▲7四歩もあるかなとか思っておった。さてもちろん先手は飛車を切り、角をしたたかに4三に打ち付ける。

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ただ、この次の△6二金上が絶品であったらしい。なるほど。

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以下お互いに進む。そして迎えた下図である。

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控室では絶対に負けたくないという手、と評され、根性であったり気合であったりいう言葉がもれる。先手からの5六角も途中であったのではなかろうか、という言葉も聞こえる。ただ一方で、もしかしてこの桂馬を同龍で行くのではないか、という指摘が上がってくる。
記者『ずーさんはやらんじゃろ』
???『勇気がいりすぎるのでやらなさそうですね』

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今宵のずーさんは一味違っていた。受けとして打った桂馬をバッサリ取られてはこれは予想外であったろう。まさかね、まさか切るとはね。以下△7七銀からの殺到康光である。

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ここで控室では手が当たって喜ぶ観戦者の姿が。

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個人的にはこの感触が悪かったのだけれども変わる手も難しい。▲5三歩成まで進むと自陣まで馬が効くもののその猶予がなかなか難しいところであろうかと思う。さて進んで下図である。

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さきほどの龍切りであるならばここは後手が攻め切るものと注目が集まっていた。控室では△6五桂馬という鬼のような手も指摘された。後手の選んだ手とは…

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記者『わー(さっきの龍切りの勢いどこ行った』
???『さすが我が心の友だぜ!』
ちなみに控室ではこの後ヒャッハー祭りが開催された。

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そして最終版、読者の皆様もお考えいただこう。
賢明な皆様ならばお分かりのことであろう。

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以下即詰みである。

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投了図以下は玉が逃げたとしても頭金までである。

 お互いに勝ちたいという気持ちを持っていたとしても悲しいかな将棋では勝者と敗者が決まってしまう。そこに向かうまでの過程は人それぞれであるし、結果としてどうなっているかを見る場合ならば両者ハッピーというわけにはいかない。そういう気持ちをむき出しに、その熱意と勢いに我々はさらされ、表現の難しい感情をもって観戦にも向かえるのである。熱意にさらされた記者は対局室を後にした。(了)

<おまけ>





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