観戦記者:八木⑪  #指す将順位戦6th A級2組 メルモンさんvsずーさん戦観戦記

 面妖流さんの対局観戦が思ったよりも早く終わってしまったのでふらふらとしていると、他対局で千日手発生の一報を受ける。

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その流れで指しなおし局から見始めていたのだが、熱戦でありそれこそひとめぼれである。この対局は全勝街道まっしぐらのメルモンさんにいかようにしてずーさんが一太刀くらわせるか、という意味でとても重要な対局である。ですので、観戦記事を書いておいて、本人に事後承諾という心づもりで書こうと思いつつ、そういう内容をツイートしたところずーさんからは無理のない範囲でとリプ、メルモンさんからは愛のこもったいいねをいただいたので、こらもう、いいってことでしょうきっと。

先手と後手が入れ替わっての対局である。持ち時間は指しなおし局は15分60秒となっている。これはお互いの時間が秒読みに入っていなければ、15分60秒という規定によるものである。

さて迎えた局面では、先手メルモンさんが▲4六歩としたところ。

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後手ずーさんが△4二飛として振り飛車の意向を示したところである。Ibisha見習いのずーさんなので、振り飛車マスターが見られるということである。

さて局面は進んで先手のメルモンさんがつっかけたところである。

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振り飛車穴熊対ミレニアム風味の居飛車(これ以上の情報は脳内更新されていない)。居飛車のほうがある意味自由度があるので、また、居飛車は2筋方面から攻められる危険性がないので硬そうである。単純に△同歩ならば角交換後飛車を走るなど。振り飛車は何とかして2一の桂馬を使えればなので、自然に飛車先の歩を突いて角を圧迫していく。先手は手に乗って角を交換し、振り飛車も桂馬を活用する。ただ、先手の歩のなり捨てが軽妙であった(下図)

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ほおっておけないマムシのと金である。△同銀は仕方ないが、先手から先に角を設置する形となる。

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改めてみると、先手が有望でありそうな局面。コマ割りは損得なく、一方で、先手が竜ができている。ただ、穴熊相手であるし、戦いはこれからである。ここでの直感は後手から△7五歩などからカツラの頭が弱いというところか。すぐさま指すと、桂馬が来るので難しいところであろうか。というわけでもう一つの急所、後手は最終的に6四桂馬を狙っていく。

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先手の2八歩は手筋。馬は働かせない。先手としては銀を逃げている場合ではなく、補強すべきはカツラの頭。▲8七銀として、後手もあっさりと銀をとる。△7四の歩は動かしてはいけない、という形。▲同歩に馬の活用を図る△2九馬。先手もいきなりは何ともできないので、香車を補充しておくも、後手が飛車を利用してつっかける。△6六歩。

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王様のこびんにクリーンヒットでここは後手がよさそうだと思いながら観戦していた。▲同馬に△同飛車。これはやむなく▲同歩となるが、馬を引いていく。これは結構いけたんと違うか。A級2組に旋風が巻き起こるかと思っていた。

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ただ、先手のここでの▲8八玉が手順に再構築を図っていく手。△6七歩の追撃に、▲7八金と寄っておいて簡単には土俵を割らないという意思表示。後手はその歩を生かして△4六角であるけれども先手も負けじと▲4一飛車。

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思ったよりも簡単ではないのかどうかなかなか悩ましいところである。後手は現状の穴熊を生かして猛然と攻めかかっていく。△7九角成として、寄せられる前に寄せてしまえの構想。先手からの6六桂馬を消していたので、悩ましいところではあった。▲同金に、△6八歩成と軽く。

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これは取れない。とると尻金から銀などで何とかなってしまう。ここでの先手のギアの入れ替え方は大いに参考にしたい。お待ちかねの▲6四桂馬である。

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ここら辺が、それこそ1時間は考えたい局面である。本譜は銀を引いたのだけれども、ここで△7九とはどうだったか。ポイントは詰めろかどうかである。

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詰めろではない。どうしても9七→9六へ行った際の継続がない。というわけで7九とではない。
それでは、9六香車では?これは控室でも指摘があった手である。

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ほっておくのは詰めろであるし、ここで同銀または同香車では、ここで△7九ととしておいて、銀が引くと、再度の9六金などで。

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タラレバ検討会とはなかなかよく言ったもので、こういう時の一手がなかなか悩ましい。本譜は銀を引き、▲同桂馬成、△同銀として先手が追い付いてきたかの▲7一飛車成。

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この時、控室では、△7一とでは後手玉が詰みそうである、という見解で一致していた。観戦室から一声、▲8二龍の筋があるという。ただ後手が勝負にかけた一手は△7九と。これは下駄とは言ってはいけない類のものである。果たして。

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後手玉が思いのほか広く、もしかするともしかするかもしれない、と控室も熱さマックスである。

『両王手で詰みでは』

控室に緊張が走った。上図から、玉は寄るしかなく▲6四金、△5二玉に、一回龍で王手をするのが肝心で、4二に何かを受けないといけない。

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リラックスした状態でこの局面を見るのであれば、読み解ける。とりあえず後手はここで今後3三にひとまず駒を利かしたほうが良かったい、ということである(本譜もその通りになってしまったが)。本譜を先に追うとすると、△4二歩として、▲4四桂馬△4三玉に▲3三金が最後の一撃。

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△4四玉しかないが、▲4二龍として△都玉▲6五金までである。

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この時に、両王手になっているため、逃げ場所が一切ない。途中で▲3三金を△同銀などとするために、4二は銀などのほうがよかったということである。
さて、落ち着いてこの局面を振り返るとする。銀などのほうが本当によかったのだろうかというやつである。各自で楽しんでいただければと思うけれども、記者の見解では、銀でも金でも詰んでいるである。銀をなり捨てる手や、竜を寄る手など最後は歩が一枚しか残らなかったりする。
ものすごい熱気と熱量で両者戦い、最後の最後まで目が離せない熱戦であり、この熱気に押された記者はこの観戦記を書きたくなってしまった。夏の暑さも終わっているが、指す将順位戦は最後まで熱い。(了)

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