観戦記者:八木⑨  #指す将順位戦6th A級2組 面妖流さんvsガスボンベさん戦観戦記

 いつもとは一味違うステイホームでのお盆休みでは八木は家事に奔走していた。一方でオリンピック後には台風やら熱帯性低気圧など災害が発生し、一刻も早い復旧と皆様の健やかなる生活が戻ることを祈るものである。そんなお盆の終わりの13日の金曜日、ジェイソンだってこんな日はお家で将棋を観戦するものなのだ、に執り行われた指す将順位戦A級2組の様子をお送りする。
 毎度おなじみ面妖流さんは、この観戦記を書かれたのちの成績が振るわず、対局前までは1勝3敗と黒星先行である。ただ廃指しは相変わらず続いておるので、やはり観衆の前に魅せる将棋に傾いているため本来の粘りがなくなっているようである。心配はしてないんだからねっ。ただ、本観戦記はもちろん黒星先行となんら関係ないことをここに記しちゃっておく。
 一方のガスボンベさんは本棋戦初参加である。将棋に対する熱い気持ちが大きく見え隠れしており、その一部が本人記載のnoteから漏れ出ている。

本対局についてが上の文章で、個人的に熱さを感じたのが下の文章であるので、これはこの記事を見に来たならば読んでおくよろし。
 指す将A級付近の観戦にもよく参加しており冷静な判断と的確な指摘が勉強になる。本戦までの星取は2-2であり勝ち越しの星をとっておきたいところである。

 さてこの両対局者に勝手に共通点を見出した。
キーワードは「乱戦上等」である。相手に対して序盤から妥協をゆるさず盤上で全力で相手を倒しに行く姿勢がある。この対局の行方はいったい。

画像1

先手面妖流さん、後手ガスボンベさんで始まったこの対局であるが早速これである。面妖流さんの十八番の一つに右四間飛車があるが、右四間に飛車がいないのである。このタイミングで控室の識者から『コズミック…』という言葉が出てきたので探してみると、後手の戦法で4八銀に該当する銀を指さずにつっかける手があるようである。参考URLは下記。

どこかで見たことある人が書いている。最初に考え出した人が誰だかわからないけれども、体系的にまとめるのも結構大事である。これは楽しい戦型であるので個人的に試してみる予定。
 さて局面図に戻ってこの歩は△同歩と取れない。

画像2

指す将の対局でなかったら投了して退場して布団に顔をうずめるレベルである。もちろんこんなことは起こっていない。

画像3

後手のガスボンベさんは実質振り飛車党なので、すぐさま飛車を回るという趣旨と想像される△3三銀。ほっとかれたら△4二飛車などから逆襲を狙う。なので先手もここは主張を貫き▲4四歩であるが、△3三銀からの一連の流れで△4二飛車。

画像4

先手の▲4八銀を後悔させに行く手。先手としては▲4七銀として飛車の位置を整えるが、後手も△4四銀として一息つく。

画像5

このあと、駒組の段階に入る。想像では殺陣のシーンで最初やりあっていったん離れて距離をとっている様相である。紹介しておきたいのは下図である。後手の仕込みである。

画像6

序盤に後手は慎重に時間を使っており、中央を圧迫しておいて先手へプレッシャーをかけておくところが肝要である。主導権を握るという意思が感じられる。

画像7

▲先手の3八金に呼応して歩で頭を押さえておく。前に避けると結局拠点の歩が残り、そこに銀を打ち込むというのがわかりやすい。なので、やすやす銀を渡せない。引く一手である。そして後手も銀を引いて開戦である。

画像8

先手としても一応舟囲いであるので戦ってもよさそうである。そして先手としては右桂の活用が肝要であるため▲3七桂馬。後手は角交換から筋違いに角を打ち込んでいく。

画像9

上からの筋違いがだめならば…

画像10

下から打てばいいじゃない。細かいところであるが、先手の▲5六歩の形になっているところがミソである。金を引いたときに△5六角成の余地を残している。また、先手からの▲5六角の余地もない(銀あるからやらないとは思うけれども)。単純に先手は金が4七の地点に効かなくなるとよろしくないので、角を下にうけるものの、ばっさりと切られて底金を打っていく。

画像11

見える未来としては、△3八金に▲同飛車とするよりないけれども、歩成がある。かといって、▲4五歩も弱気であり防戦一方になってしまう。ここで先手の面妖流さんは長考に沈んだ。
 最近の面妖流さんは長考に沈んだ後、数手を指して投了のパターンもあるので、なかなかなんとやらである。
 15分の持ち時間のうち、約9分を使って指した手とは!

画像12

歩の消極性を▲6三角成を見せることでカバー。6四の銀も浮くので▲4六飛とリカバリーできる。控室では、後手はいつ飛車を切るかが話し合われていた。後手は角をとり、その流れで△4七角と叩き込む。

画像13

取ってくれれば御の字であるが、ここで飛車を引かれて若干雲行きが怪しくなった、と記者は感じた。飛車引きののち、後手は△7二銀と陣形を引き締める。これで強く戦える。一方で先手は▲4八歩として拠点を追い返して危機は去ったかのように見える。後手ももちろん承知であっさりと角を切り、銀を打ち込む。

画像14

根元の桂馬をとりに行けば明快であるか、と控室で言われていた手。先手は秘術を尽くしてやりすごしに回る。
▲4九飛車△3七銀不成▲3四角△3八銀▲7九飛車などとして最終的に下図を迎える。

画像15

個人的な感想としては、後手が飛車成りを確定しているように見えるも、先手も駒がある。後手は攻め駒が不足している。一方で、陣の硬さは後手のほうがよく、△6四銀がなにからなにまで守っている雰囲気。

 この後、後手が先手馬の動きに乗じて天使の跳躍を決め、先手も入手した香車で△6四銀に働きかけるも、最初に先手陣に火が付きそうである。そこで先手の放った受けの手が下の図。

画像16

こういう時に記者であれば『なんやこんなん』、と△同飛車成とするところである。もちろんそうしないといけないところであるが、先手は馬を引き付ける。

画像17

ここでの△4六歩にぎょっと思ったとこであったけれども、改めてみると、例えば3八龍などとすると気合の▲4九金などとされて飛車の防御力を存分に生かされることになるのか。これは先手も守りがいがあるところである。

画像18

先手としては何とか角で美濃囲いを攻めたいところであるので、王様の小瓶を狙う▲7五歩であるが、後手は憂いの馬を消しに行く。慌てる必要はないという印象を受ける。
すなわち、△6八成桂▲同銀△5四金である。

画像19

さすがに逃げることはできないので▲同馬△同歩として▲5三角とするも、△6二香車がぴったり。

画像20

先手は▲4九金として防御に回るも、後手は丁寧に指していく。
投了図は先手の最後の継桂の望みを後手が絶ったところで先手投了となった。

画像21

 最初の先手の注文を後手が受け取りそれを逆用してから丁寧に指していた印象がある。先手も途中で守りがいがある局面になったところもある一方で、押し返すところまではいかなかったということであるね。涼しくなり始めた夜の熱い対局であった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?