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憧れの苗字『佐藤』さん。

私が通った短大の、学生課に、

大豆生田(おおまみゅうだ)さん

という職員さんがいた。

同短大を卒業後、新卒で母校に就職。

私達と歳が近いこともあり、皆、

『みゅうださん』

と呼んで、慕っていた。

みゅうださんは、仕事はきっちりこなしながら、
時に、色々な相談に乗ってくれ、

特に、寮生活の友人が、何かあった時の為に
持っていた、10万円を盗まれた時は、
みゅうださんが、犯人(寮の管理人)を
見つけ出してくれた。

この、大豆生田という苗字は、
短大がある県では、ポピュラーなのだが、
他県から通っていた私は、
それを聞いて驚いた。

すると、みゅうださんが、私に、
「◯◯さんの苗字も、ここでは普通だよ」
と言った。

確かに、地元では、間違えられる事が多いが、
短大では、すんなり読まれていた。

そんなある日、みゅうださんが、
結婚した、という事を知った。

お祝いの品は買えないが、
せめて挨拶だけでも、と、学生課に行き、

「みゅうださん」

と、声を掛けて、少し話した。

その胸には、

佐藤◯◯◯

という、見慣れない、ネームプレート。

「みゅうださん、佐藤さんになったの?」

と聞くと、みゅうださんは、満面の笑みで、

「そう!憧れの、普通の苗字!」

と、嬉しそうに言った。

あだ名について書いた記事に出てきた、
苫小牧(とまこまい)さんもだが、
変わった苗字の方は、文字数も多く、

名簿も、名前が何とか読めるくらいに、
小さくなる。

書き初めも、苦労するそうだ。

しかし、既に、みゅうださんと呼ぶ事に
慣れていた、私達は、
佐藤さんの意に反して、つい、

「みゅうださん!」

と、呼んでしまっていた。

苦笑いしながら、

「なーに?困りごと?」

と、対応してくれていた、
彼女の、優しい笑顔が、忘れられない。

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