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-EAST LOOP物語 最終章-東北クロッシェ村の誕生

そして東日本大震災から10年が経ちました。

たくさんの方から応援をいただき、10万個以上の作品を被災地の編み手さんから日本全国、世界へも届けることができました。

200名以上の編み手さんが参加し、収入だけでなく、元気になっていったことはお伝えしてきたとおりです。

このEAST LOOPプロジェクトはフェアトレードの考えを元に構築しました。

フェアトレードとは、厳しい環境にある人に仕事の機会を作って自立に近づける取り組みです。
つまり、自立につなげることが大切で、東北の人たちが自立して事業を回すことができるのであれば、現地の人たちに移管すべきだと当初から考えていました。

しかし、課題がなかったわけではありません。
震災直後は誰もが被災地の支援に関心を持ち、そのためEAST LOOPの商品もたくさん販売することができました。
しかし、時間の経過と共に売り上げは下がる一方でした。

ただこのことは当初から織り込み済みでした。
無理やり売り上げを上げることはこのプロジェクトの主旨とは異なっていたので、自然なこととして受け止めていました。そして、復興支援という役割を終えた時点でプロジェクトを終了させるという選択肢もありました。

ただ、2年経っても3年経っても現地で厳しい環境が続いていました。

10年経った今でも、厳しい環境に置かれている人はいらっしゃいます。

コミュニティもばらばらになってしまいましたが、EAST LOOPを通じて仲間を作り、新たなコミュニティが生まれた地域もありました。精神的に辛いときに支え合える、お金では測れない強いパワーを持つコミュニティです。

これを無くしてしまうのはもったいない。

継続できる可能性があるのだろうか。探ってみることにしたのです。

まず最初に移管作業を行いました。
2013年に岩手県の強力なカウンターパートであるNPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク(山里ネット)に事務局業務を移管しました。

そして見切り発車ではありましたが、現地に積極的に移管していこうと、2014年1月 合同会社東北クロッシェ村を法人として設立しました。

看板2

復興グッズのEAST LOOPだけでは継続は難しいなど課題はたくさんありました。一方でプロジェクトを続けたことで、編み手さんたちが育っていました。
EAST LOOPの商品を繰り返し編むことで、手が慣れ、技術が向上していたのです。
これはひとつの財産です。見方を変えて、この熟練した編み物ができる女性たちは地域資源の一つになると思ったのです。

そして、ハートのブローチをデザインしてくださった岩切先生から、
「毛糸のメーカーがサンプル編みをできる人を探している」
という貴重な情報をいただきました。

手芸店の店頭には、販売しているこの毛糸で編めばこんな感じの帽子、ベスト、小物になりますよとサンプルが飾られています。これは手芸店の人が編んだのではなく、毛糸のメーカーが販促物としてサンプルを提供していたのでした。
その編み手さんがいないので探しているとのことでした。

「毛糸メーカーのサンプル編み」×「東北クロシェ村」

サンプル編みの仕事は毎年発生します。それを継続的に受注できれば、会社として存続することが可能になります。一縷の望みが見えてきました。
早速、毛糸のメーカーに連絡を取り、仕事に繋げました。

またEAST LOOPに取り組んでいる最中に、他の東北のエリアから「私もそのような仕事をしたいです」と何度も問い合わせをいただきました。
何度も東北に通っているうちに、女性が仕事をする場所が少ないことを目の当たりにしました。
厳しいのは沿岸部分だけではなく、内陸部でも仕事の機会がない人たちがたくさんいました。けれども、EAST LOOPは被災地支援プロジェクトなので被災していない人が編むと偽装になってしまいます。
そこで、被災地以外の編み手さんに参加してもらえるように、あえて社名からEAST LOOPを外しました。これからは東北を編み物の拠点にできたらとの思いで「東北クロッシェ村」という会社名になりました。


ありがたいことに、今では国内の多くの毛糸のメーカーさんからサンプル編みの仕事をいただいています。
規模は大きくはないですが、毎年安定した売り上げを作ることができるようになりました。

毛糸メーカーさんの中には、メンバーのためにとスキルアップ講座を開催してくださったり、メンバーはさらに力を蓄えています。

勉強会

また、HPを通じて編み物の製品の制作の依頼も来るようになりました。
バックや帽子、セーターなど、受注できる製品も増えてきています。現在50名ほどの編み手さんが東北クロッシェ村に参加しています。
これほど多くの編み手さんを持っている団体は全国でも珍しいそうです。

しかし、東北クロッシェ村の強みはそこだけではありません。
編み手さんの多くは震災で被災した人たちです。


「震災の時さぁ。EAST LOOPのハートの編み物で助けてもらったからさぁ。恩返ししないとね」

編み手さんたちは、よくこの言葉を口にしながら、仕事に取り組んでいます。彼女たちにとっての仕事は「作業」ではなく、今まで支えてくれた多くの人への「恩返し」なのです。恩返しの気持ちがギューッと詰まっていて、それが丁寧な製品づくりにつながっているのです。

円のハート


東日本大震災から10年経ちました。

津波で被災した人を助けなければ!
そんな思いでスタートしたEAST LOOPでした。

「人間の究極の幸せは4つ。

愛されること、
褒められること、
役に立つこと、
必要とされること。

働くことで、このうち3つが満たされる」

何もかも失ってしまった人たち、
自分が流されればよかったと何人もの方が口にしました。

しかし、自分の手で作ったものを、知らない誰かが購入し、人に喜ばれるという体験は
「自分にもできることがある」「自分も人の役に立てる」「生きていていいんだ」という感覚、自尊心を取り戻すきっかけとなったのではないでしょうか。


そして、私たちも、このプロジェクトを通じて、たくさんの宝ものをいただきました。

豊かな東北の自然と純粋な人々。

困った人を何とか助けたい、応援したいという多くの人との出会い。

そして何より、
手仕事が持っている力。


この場を借りて、EAST LOOPのプロジェクトを支えてくれたすべての人に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

誰一人欠けていても、このプロジェクトは生まれなかったし、10年も継続することができませんでした。
キッカケは悲しいことだったけど、こんな経験をさせていただいたことに、ただただ感謝しています。そして手仕事の力がもっと科学的に立証されて、いつの日か医療の現場にも取り入れられたらいいなと思います。


ここでEAST LOOP物語は終わりです。
駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
何か一つでも気づきがあれば、嬉しく思います。




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