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詩 自作品まとめ

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自作の現代自由詩を主にまとめています。
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記事一覧

赤と黒

城壁に揺れる 一輪の黒い薔薇 夜露と共に花開き 朝日と共に蕾ゆく 誰しも欲しがるが 誰も手にできない 風に乗せ 甘い芳香で市中を充す 誰しも酔うが 誰も目醒めない夜 城壁を登る 露を湛えた花際を そっと指でなぞる 黒く 震えてた花びらは 赤く染まり始めた

最も長い夜

長い夜が始まろうとしている 北風の演出も伴い 一層色濃く感じる冬の気配 今宵は 外とは別世界の部屋に籠り 暖をとり 湯の沸く音をBGMとして ゆっくりと じっくりと 好きな事に興じよう 深く静かに沈む 最も長い夜を愉しみながら 明日からは  長い夜も明け行く

天目よ

天目よ その蒼きは空の如し 天目よ その深きは海の如し 天目よ その逞しきは岩盤の如し 天目よ その連なりは核分裂の如し 躍動と静寂の息吹きと共に 大胆と精緻の交差を織りなす天目よ そこに宿るは宇宙の在処 我が中にも また在り

夜の震え

冷たく湿った空気に 夜は白んでいた 夜の寂しさと夜の震えが一層募る 怯えたようにただじっと佇む木々は 知っていた それでも この冷気と湿気と寂寥と 物憂げな夜が自分達を育むことも 明かりを灯す街の者たちは…

今宵愛でる

扉を開けば 君の芳しき香で満たされる 帯を解けば その時々で妖艶と清楚が入り乱れ のどを鳴らす声が微かに溢れる アタマとケシタ 小口にかかる 白く輝く稜線に そっと指を這わせる 花ぎれを纏うその姿は 秘めたる美しさの証 今宵は如何に君を愛でたものか 僕は何を愛でようとする

泥んこ団子

泥んこ練って 泥んこ丸めた 投げて 弾けた泥んこ団子 自由って楽しい カミナリ声が鳴り響き クルクル回る泥んこ服 涙が流れて 弾けた泥んこ無邪気 自由もたまには叱られる 次の日晴れて塀を見た “芸術家だな!” 頭に優しくのる大きな掌に 弾けた泥んこ花となる やっぱり自由っていい

気儘な旅

当て所なく続く 気儘な旅は最高さ こう見えても 幾多の苦難を乗り越えた 作りは頑丈さ 渡った国は数え切れん 自慢じゃないが 誰かの役に立ったこともある 神々しい光と雲に抱かれ 波の子守唄を聞きながら 今は暫しの休息だ 次の旅はいつかって… そんなことは分からんよ 海の奴に訊いてくれ

私は見た 今にも弾けんとす 内に秘めたる 膨大なエネルギーの塊を 遥か彼方に現れしその塊を前に 私はただ  そこに呆然と 立ち空くむしかなかった 恐怖や不安ではなく 驚異と畏敬の念と共に

最後の仕上げ

僕は最後の仕上げとして 大きな粗い刷毛を取り出し 単調なキャンバスに リズミカルな雲を散らした 途端に町の息遣いが一変した

言葉に宿るもの

魔力に魅せられ 震える時… 言葉には色んな力が宿ってる 愛の詩(うた)に喜ぶ時… 悲しみと怒りに咽ぶ時… 言葉には色んな思ひが宿ってる 道に迷い 過去を悔いる時… 思索の海を渡る時… 言葉には色んな考へが宿ってる どんな時だって頼もしい 言葉の無限の宝庫に敬意を