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「明日にかける橋」を渡す子どもオバハンの任務。

「ゆりえ先生は特殊な大人なんです。」


この言葉はあたしをいつだってストロングにする。


発達しょうがい児の施設を巡る度、
子どもの未来はとてつもなく幸せなのだと思わずにはいられない。

天才キッズという言葉は彼らの為にあるんじゃなかろうか?

そう思えるような子どもたちとの出会い、

その中でも忘れられない体験をいくつもさせて頂いた。


今日はその一つをお話しさせて頂きたいのだけど。


〜彼のことをあたしは「大臣」と呼んでいる。

ううん、そう呼ばずにはいられなかったの。

「ここのことならなんなりと!」

そう云って彼は両手を広げる。

その寛大で寛容な姿を見て、
「よろしくお願い致します。」
あたしは彼にぺこりと頭をさげた。

施設の子どもたちには基本敬語です、あたし。

自然と敬語になってしまうのは
きっと彼らを心から尊敬しているからなのだろう。

どこの施設でも必ず彼のような存在が居て
あたしを導いている。

あたしは彼に色々な質問を投げかけた。

丁寧に、敏速に、
的を射た答えにいつも感服させられるのだ。

「僕は電車が好きなので、将来は鉄道会社を経営しようと思っています。」

....凄い。

〜鉄道好きの子どもは
電車の運転手になりたがると相場は決まっている。

そう思っているのは、
あたしたちポンコツ大人だけなのだわ。

彼は車両のことや路線図の事まで決めているようだった。


彼らは想像の数だけ現実を持っているの。

それは、理想的なことで、
莫迦な大人たちはくだらない訓練でそれを手に入れようとするが
そんなに簡単にその思考に辿り着くことはないのよ。

出来たふりをするのね。
そんなの全くもってナンセンスだわ。

彼らにはその特殊能力が標準装備で、

それは、おそらく
大人になっても消えることはないだろう。

空想したものは全て現実にすることが出来る....

それは、無敵な装備だが
時としてそれは
彼らを苦しめることもあるのだと思う。



「ゆりえ先生は特殊な大人なんですよ。」

大臣は云った。

特殊かぁ....

そもそも自分が当たり前の規格に収まっていないのは気がついていた。
何を持って普通というのかはわからないけど....


〜彼は"理想的な大人"について語り始めた。

「本来、大人っていうのは
子どもの脳と、大人の脳をバランス良く持っているもんなんですよ。

でも、大人は途中でめんどくさくなって
子どもの脳を捨てるんです。

そして、大人の脳だけで生きてしまう.…

だから、こんな世の中になってしまったんですよ。」 

ここまで一気に話して一呼吸し、
そして彼はまた話しを続ける。

「ゆりえ先生は違うんです。」

その違いを尋ねると、

「ゆりえ先生は子どもの脳だけで
大人になった人。
だから、子どものことがわかるんです。」

なるほど、合点がいくな。

どうにもこうにも
周りの大人のことが理解出来ないときが
多すぎると思ってたら、

なーんだ、
そうだったのかぁ。

そして、更に彼は続ける。

「そんな大人、ゆりえ先生みたいな大人が
いずれ分断される、僕たちの世界と今の世界の
橋渡しになるんですよ。」

一瞬、息が止まったわ、あたし。

おそらく彼らには
あたしたちが見えてない未来の世界が
見えているのだと思う。

今の世界は大人たちによって作られ
大人たちによって汚されてしまったんだな。

でも、これからの世界は
彼らのようなニューリーダーが在るから
ピースフルな世界が何処までも広がっていくのだわ。


どうやら大役を仰せつかってしまったみたいね、あたし。


〜見た目はオバハン!
頭脳は子ども!


さてさて、
子どもたちの健やかな成長と
彼らの創る輝かしき未来のために

子どもオバハンは何が出来るかな?

まだ見ぬ未来に想いを馳せながら、
彼らの創造するまだ見ぬ未来を想像する〜

素敵だな、全く。
幸せだな、全く。

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