1・はじまり
私には名前が沢山ある。
家族に呼ばれる名前、友達に呼ばれる名前、恋人に呼ばれる名前、仕事で呼ばれる名前、そして肌を重ねるだけの関係の名前。
それぞれの人格と、それぞれの顔。
そう思ってる人はきっと、世の中には沢山いると思う。
他の場所で出てこないように必死に隠して生きてる。
どれが本当の自分なんだろうと悩むこともあったけど、どれも自分だと思うと気持ちは不思議と落ち着く。
そしてもう一つバグってるなって思うことがもうひとつ。
人を好きになるって気持ち。
まだ23歳。彼氏がいたこともある。もちろんセックスもいろんな人とした。
むしろセックスできたら何でもいいんじゃないかって思うくらいの感覚。
好きな人とできたらそれでいいかなって思う自分がいた。
中学生の時好きだった先輩。
勇気を出して告白したけど妹と同じ名前だからという理由でフラれた。
それでもずっと好きだった。
ある日を堺に関係性は突然変わる。
「お前だったらやれる気がする・・・」
酒に酔った先輩からびっくりな発言をいただく。
お互いにお酒が飲める年齢。
酔っ払いの戯言だ。
でも本気にしちゃうよね、好きだから。
「え?ほんとにしようか?」
と、目を合わさずに笑顔で答えた。
その日家まで送ってくれた先輩。
お互いに酔っ払っていたと思う。
「おやすみなさいのちゅうは?」
とあざとく言って目を閉じてみた。
唇があたった感覚。
「おやすみ」
と言って帰った先輩。
そこで我に返る私。
今唇だったよね?
キスしたってこと?
どゆ意味?
『びっくりしてパニックなんだけど、ほんとにしようね?』
と連絡して家に入った。
もちろん、先輩からの返事はあったけど、既読はつけずに眠りについた。
つづく
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