月吻

キラキラしないで

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父のことは世界で1番苦手だが、世界で1番自分に似ている人でもあった。正確には私が父に似て生まれたのだ。 父から受けていたのは教育という名のネグレクトだったと思っているし、それを今でも時々思い出しては引き摺り続けている。癒えない傷になってしまったのは事実だろう。 中学1年生の頃不登校になりかけたことがあるが、私の精神的な不安定さによるものだと今では思う。そしてそれが父から遺伝したものであるとも。 かつて父は周囲に対して威圧的で感情を制御しなくなることが頻繁にあり、性質が似てしま

    • 「オン・ザ・ロック」感想

      この作品を端的に言うなら、良く言えば「最も大衆の目線に合わせた作品」、悪く言えば「他者に対して尖ったところのあるソフィアコッポラが本来の色を消して、他人に気を使った作品」だと思った。その意味で、SC作品の中では珍しく私の好き度上位には来ない。 彼女は幾度となく中年男と若い女の関係を描いてきたが、お気に入りであろうビルマーレイ出演の「ロストイントランスレーション」と比較しても、その丸くなりようは明らかだ。「ロスト〜」では日本という慣れない異国を舞台に、居心地の悪さを共有するプラ

      • 「アデルブルー」再考

        「アデル、ブルーは熱い色」 愛するレアセドゥの実質的デビュー作であり、私自身歪な執着を捨てられない作品でもある。 最近では監督の撮影方法に問題があったと言われている(レアの訴え参照)。しかしながら、本作はレズビアンの痴情のもつれ、それが発生するに至った「性的少数派と多数派」という大きなテーマに加え、「貧富の差」という2重のダイナミクスを描いており、私はこの一点において高く評価した。 エマにとってアデルとは、同性である自分に恋していながらも結局は男性にもアプローチできる「性的マ

        • 輪郭

          また悪い夢を見ていた。私を連れて行ってくれるのに、一向に手には触れようとしないで、私の意思で選んだことにしようとする。私がそれを選ぶように仕向ける。一応笑顔を見せるけど、彼女の感情には実態がない。私を愛しているかはわからない。悲しくなって涙が出た。抵抗する状況にもなく、成す術もなく泣き叫んだ。その声で自分の意識が地上に上がる。よかった、やっと息ができる。眠るのは好きだ。意識を手放すと延命できるような気がするから。命の貯金をして長寿になれるような気がするから。でもたまに、心が闇