真理を告げる統計学

近代とは科学といふ知識体系こそが真理だと信じる時代だ。何事にしろ、科学的であれば信じるに足るし、科学的なエビデンスがあれば、そこで近代人の思考は停止する。
その先駆けは、科学的に構想された社会制度である共産主義だった。科学が現実をどう解釈するのも自由だが、その解釈に現実が気兼ねして姿を変へるわけではないのに、共産主義者たちは現実のはうが間違ってゐると確信できた。これが科学が人間を魅了する理由だ。
科学的思考においては、間違ってゐるのは、現実なのだ。これは前近代において宗教が持った魅力と全く同質だ。

科学とは数量化である。数字になった情報に人間は真理を見るやうに脳が作られてゐる。長さも重さも人間はデジタルで認識するから計量が可能だ。音ですら人間にとっては色でもカタチでもなく数列であるから、交響曲を創造できる。

前近代から現象の数量化と方程式の考案は始まってゐて占星術といふ統計的データを処理する方程式が誰の運命をも解き明かすことを信じることができた。
事象を数理的に説明できたとき、真理に到達したと人間の脳は感じるやうに出来てゐる。
近代の占ひ師である理系のインテリたちもやはり、同じく統計学によってあらゆる事柄に関して真理を告げる。
たとへば、政治の分野でなら、21世紀の新しい共産主義、人間が目指すべき理想社会は、統計民主主義として提示されるだらう。

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