つぶやき物語【追跡1~追跡20】のまとめ(冒頭に中書き③追記)

【追跡21】~は、6/10(月)スタート(o^-^)b ※物語の最初からお読みの方は【中書き③】を、途中から読まれた方はまとめも併せて、ご一読頂けると大変嬉しいです。

【中書き③】
 実は事件の翌日に、癌の際に励ましてくれた医療関係の友人と、久し振りに会う約束をしていましたが、待ち合わせ時間は当日に決める予定でした。
 携帯を失くした私は連絡手段に窮していましたが、私を心配した彼が共通の知人を介して、何とか連絡を付けてくれたお陰で、妻が駆け付けてくれる。
 事情を知らない彼女に経緯を伝えると、「きっと戻って来るよ」と笑顔で言い切るので、何だか私もそんな気がして来るので不思議。
 それでも戻って来ない事態も想定して代替機を手配しつつ、携帯を持って行った女性や不手際した女性従業員を、犯罪者や被害者にしたくないと願いながら、大晦日の夜も更けて行くのでした。
【追跡21】へ続く。
~・~・~
【前書き】
残すところ後3日という昨年末、私の不注意により不本意ながらも、この物語は走り出しました。
仕事納めを前日に済ませた解放感と、久し振りの外食に浮かれていたのだと思います。
手元に会社のスマホは有るものの、個人的な情報は無くした携帯電話にしか残っていない事実に、気付けば想像以上の窮地。
目の悪い私はアラームやスケジュールの管理は勿論、年末年始に家族や知人へ電話やメールの出来ない、正に『ぼっち状態』に追い込まれました。

追跡1【師走に幕開け】
年末に遠方から親戚が訪ねて来たので、近所のファミレスへ行った。
食事後に帰宅した時、携帯電話が無い事に気付き狼狽するも、社用スマホの存在に一安心。
急ぎ携帯の番号へ発信すると、女性の声が聞こえて安堵したのも束の間、これから始まる捜索劇開始のゴングが鳴った。

追跡2【呑気な迷探偵】
電話の向こうの女性へ、私の携帯である事と拾ってくれたお礼を伝えた。
続けて居場所を尋ねると店内に居るとの返答に、今から取りに行くので渡して欲しいと伝え、電話を切る。
きっとテーブルに置き忘れた後、次に来た人が見つけたのだと想像したが、全く見当違いの展開へ。

追跡3【拾得された事実を確認】
私は店へ到着し、入口で辺りをキョロキョロと見回すが、誰も駆け寄っては来ない。
ようやく出て来た女性従業員へ携帯を落とした事を伝えると、「紺色の携帯ですか?」との質問に、私は大きく頷いた。
しかし彼女の次の言葉に私は耳を疑い、思わず声を出してしまう。

追跡4【人違いのすれ違い】
「自分の携帯との事でお渡ししました」との言葉に、「私の携帯です」と語気が強まる。
本人確認の有無について畳み掛けて問うと、驚愕の未確認。
女性の行方を訊くと、少し前に店を出て行ったと聞いた瞬間、頭の中に「君の名は~♬」と古いTVドラマの主題歌が流れた。

追跡5【彼女の足取り】
私は我に返り携帯の番号へ数回掛けると、「はい」と意表を突いて女性の声が聞こえる。
私は丁寧に居場所を尋ねると、「〇〇駅に居ます」との答えに、携帯を返して欲しい意向を再び伝えた。
「ではお店まで持って行きます」と台詞を残したが、最後に聞いた彼女の声となる。

追跡6【願えども梨の礫】
携帯を渡した従業員の言によると、その女性はかつての常連客、最近は平日たまに姿を見せる程度。
更に知的障害者と思われるとの分析と、向かいの病院への通院の可能性をも推理する。
私は所用が有り、返却に訪れた際の対応を頼み退店したが、彼女の来訪は実現しなかった。

追跡7【愛しき参謀】
帰すると盧間もなくく、スマホへ着信が有り、地域を統括する責任者を名乗る男性から。
彼は今回起こした店側の不手際を深く詫びてから、解決に向けて私の世話役を申し出る。
お陰で一人寂しく過ごす筈の年末年始を、恋人同士の睦言の如く、彼とは毎日熱く語り合う仲となった。

追跡8【先入観は大怪我の基】
取り急ぎ携帯会社へ連絡した私は、回線停止の依頼と位置情報の入手可否について確認する。
当日の担当者は「この機種は対応していません」と、つれない返答。
「ガラホだから仕方無いか」と信じてしまったが、この判断がその後の捜索への障壁となって立ちはだかった。

追跡9【迂闊な振る舞いの代償】
保守契約をしていた事を思い出した私は、万が一の際の補償について問い合わせる。
すると盗難や紛失の際は、少ない自己負担で新しい電話を自宅へ送付との説明を受けた。
ただ前提として警察への届けが必要と知り、自分の不注意が招いたとは言え、面倒が纏わり付く。

追跡10【悪人にはせぬとの思い】
管轄の警察署へ電話して事情を話すと、遺失届は電話でも受け付け可能らしい。
ただ、被害届は近くの交番まで行く必要が有ると言われ、その違いを尋ねた。
すると「被害届は相手を訴えたい場合に出すもの」との説明に、そこまではしたくない私は遺失届を選択した。

【中書き①】
 私の携帯を渡された女性とは、2度に渡り電話で話す事が出来たので、当初は私も安心しきっていました。
 しかし女性従業員からその際の対応について説明を聞いて、そのいい加減で無責任な対応に愕然とします。
 ただその反面、私が携帯を忘れさえしなければ、発生しなかった事件と考えると、一番悪いのは私であると猛省。
 その報いとして私の年末年始は、地域統括の責任者、携帯会社、警察との連絡に、明け暮れる日々となるのでした。

追跡11【時に猜疑心も必要】
「〇〇駅に居る」との言葉を思い出し、構内に置き去る可能性も考えた。
だがJRの落とし物係へ連絡するも届け出は無く、仕方無く登録だけ行う。
諦め切れず携帯会社へ連絡し、ダメ元で位置情報を再度確認すると、「出来ますよ」との即答に、喜ぶ前に私は唖然とした。
  
追跡12【朧げに見えし影】
先日と真逆の回答への憤りを抑えつつ結果を待てば、女性が居たとの地域はその範囲外。
そう言えば店近くのバス停は、県道の反対側からは〇〇駅に向かうが、手前からは違う方向。
そしてその終点が位置情報と合致する事実に達した時、言葉に潜む小さな噓の傾向に気付く。

追跡13【寧ろ被害者】
私は従業員の「知的障害が有る」との言葉を思い返し、相手の立場で考えてみる。
「この携帯はあなたのでは?」と言われて受け取ったばかりに、すぐ持ち主から電話が掛かって来た。
つい店に居るとの答えから、駅の名前さえ誤魔化す展開が、途方に暮れる女性の姿を映し出す。

追跡14【手掛かり探る実験】
改めて携帯会社へ連絡し、回線再開を指示したのは、ある作戦を思い付いたから。
その後に電話してみると、電波が届かない状況を示す自動音声を確認後、前日までの利用状況を調査。
もしこの日、メールを受信すると料金が増加するので、電源を入れた形跡が判る仕組み。

追跡15【不思議にも希望的観測】
翌朝に確認すると料金は増えておらず、電源を入れた痕跡が無いと知る。
位置情報は最後に接続された場所を示す為、再調査してもらうと予想通り昨日と同じ範囲。
悪人と思えぬ彼女の人物像から、携帯は使えない状況下で、未だ手元に置いたままの様な気がしていた。

【中書き②】
 今回、驚いたのは携帯会社のオペレータによるいい加減な対応で、振り回される結果となりました。
 一方、私と同じ障害者である彼女は、電話に2度も応えた態度やその声と話し方から、悪い人では無い感触がします。
 丸2日が経過しても携帯は使われた形跡が無い事が料金の変動が無い結果から分かり、放置したままで電源が切れたと私は予想。
 確かな根拠は無いけれど、彼女を犯罪者にしたくない思いも有り、携帯は戻って来る予感がし始めました。

追跡16【敵か味方か来訪者】
事件翌日、癌の際に励ましてくれた友人と、1年振りにお茶する約束が有った。
だが時間と場所が決まっていない上に、携帯にしか連絡先の登録が無く、手段に窮してしまう。
途方に暮れ、陽も沈もうとする頃、呼び鈴を鳴らすと共に部屋の戸を叩き、私の名が連呼された。

追跡17【賜りしお告げ】
「大丈夫?」と飛び込んだ妻は、自転車で駆け付けたらしく、呼吸は荒く不安気な面持ち。
事情を手短に話すと、共通の知人経由で聞き取ったと、番号を書いた紙を私へ手渡す。
友人へお詫びの電話の後、お礼を言うと彼女は「きっと戻って来るよ」と、屈託無い笑顔を見せた。

追跡18【お初は厄介】
仕事始めまでに戻ってないと支障が出る為、万が一に備えて代替品の準備を進めた。
回線を通さなければば取消可能と知り、費用は店側が負担すると確認の上、対象機種の送付を依頼。
予定より早い翌日、お歳暮なぞ届く筈の無い私の元へ、再度設定を要する新顔がお目見えする。

追跡19【乞う平和的収束】
自動音声による前日までの料金確認を継続するも全く増えてない事実は、電源が切れたままを示唆。
その状況と警察等への届け出も無い情報を、地域統括責任者へ連絡する。
その際に彼から、不手際をした女性が通常勤務していると聞き、被害者は増やさないと改めて誓った。

追跡20【ぼっちも年納め】
必要では無い携帯をどうするかと相手の立場で考えれば、返すか捨てるか。
悪人では無いとの前提で、交番へ届ける可能性を強く感じる事は、楽天的かもしれない。
だが年内に厄介者と別れ、穏やかな大晦日にしたい筈と信じる私は、除夜の鐘を待たずして、一人淡い夢の中。

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