1日1000字チャレンジ#17

「空」
青から赤へと移り変わっていく空の色に疲れが溶けていくように感じてためていた息を吐いた。
んん、と伸びをして今日の進捗を確認する。当面の仕事は片付いている。こうも天気がいいと疲れはあれどどこか気分がいい。
今日はどこかで食べて帰ろうか。
荷物を片付ながら、近くの店を脳内でピックアップする。
地下鉄から出て、結局は行きつけのお店に行くことを決めて歩き出す。
陽の光が黄色から赤へ変わり、灰色のビルをピンクに近い色に染めていく。
お店の中はこんでおらず、自由に席が選べたのでせっかくだから窓際の席を希望した。
とりあえず頼んだコーヒーを口にしながら色が変わっていく街並みを眺めていた。疲れた顔のサラリーマンや、待ち合わせなのかかわいらしい服装をした女性や、腕時計を何度も確認しながら走っていく人。
同じ時間を生きていても、それぞれにとって時間の流れが違うような気がする。
こんなことなら、ノートパソコンを持ってくればよかった。
残している仕事はないが、調べ物をしたり、明日のための作業を少し進めてもよかっただろう。なんだか、心に余裕を感じる。
メニュー表を見ているといつからなのか新メニューが出ていることに気が付いた。旬の食材を使ったメニューで、ホワイトソースがかかったものだ。
ぱっ、と見たところ苦手な食材はない。店員さんに注文をして待つ間に陽はすっかり沈んだようで、先ほどとは変わって青から紺に染まっている。
明かりが灯り、スーツ姿の人が増えた。急いでいるような人もちらほらいるが、どこかゆったりとした時間の流れを感じる。
「お待たせしました」
と店員さんがメニューを持ってきてくれる。
店内はにぎわいだして、あちこちで店員さんが行き来しているのが見えた。
どこか、落ち着いた様子を見せるお客さんに対して店員さんはせかせかとせわしない。
新しいメニューに舌鼓を打ちながら、ゆったりと過ごす。
どこからともなく、ささやき声での会話が聞こえ始めて、飲食店特有のどこか和やかな空気が出来上がる。
外を歩く人も景色の一つと同化して、やっぱり食べに来て正解だったと一人納得しながら皿を空にして帰路についた。
電車の窓から流れる景色も、すっかり夜のものになっている。ビルの明かりが点々と尾を引くようにして流れていく。
その景色を眺めながら、明日もよい天気になればいいと思った。
もし晴れたら明日はどこの店にいって食事しようか。
そう考えればなんだか楽しみになってくる。

///感想///
時間に追われる。

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