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2024/07/11 ※虫注意

部屋の隅に虫がいた。
羽音の一つも立てずに、
丸い黒い目がこちらを見ていた。
電子レンジと同じか一回り大きいくらいで、
尾の短いトンボのような見た目をしていた。
二つの目玉が私を向き、微動だにしなかった。
私は時計を見た。
丁度針は8時を指した。
家を出て鍵をかけ学校に向かった。
どことなく視線を感じながら歩道橋を登った。
登った先にあの虫がいた。
駅につき、改札を潜ると向かいのホームにあの虫がいた。
大学に着き授業を受けた。
どこからか視線を受けているような気がして、
生きた心地がしなかった。
家に帰った。
あの虫はいなかった。
私は安堵すると共に、いないことをわかっていた。
そもそも虫などいないのだ。
全てが私の妄想だった。
そう納得せざるを得なかった。

夕飯の支度をしていた。
ベッドの側で、丸い大きな黒い目が私を見ていた。



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