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【役職員向け株式報酬】上場会社等の機関決定にかかる重要事実の軽微基準に株式報酬としての株式発行等にかかる一定の決定が追加!?


本稿のねらい


2024年6月14日、金融庁は「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」(本改正案)につきパブコメ募集を開始した。

これは、次のとおり、上場会社等(金融商品取引法第163条第1項参照)の業務執行決定機関による株式報酬としての株式発行・自己株式処分・新株予約権発行(株式発行等)にかかる決定のうち(同法第166条第2項第1号イ)、一定の要件を満たすものをインサイダー取引規制における重要情報の軽微基準として追加するものである(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第1項第1号)。

上場会社等の業務執行決定機関による株式報酬としての株式発行等に係る決定がインサイダー取引規制上の「重要事実」から除外される基準について、次のいずれかに該当すること、に改正するものです。
・希薄化率が1%未満と見込まれること。
・価額(時価)の総額が1億円未満と見込まれること

金融庁ウェブサイト

本稿では本改正案の概要について説明することを目的とするが、別稿にて、近年増加していると思われる役職員向けの株式報酬に関しても概要を説明する予定である。

【参考】最近の役職員向け株式報酬の例

本改正案の概要


上場会社等が株式報酬として株式発行等にかかる決定を行う場合、金融商品取引法の各規制に関しては次のような問題があるが、本改正案は、あくまでインサイダー取引規制の一部に関する内容である。なお、開示規制に関しては、現在の役職員に対する株式報酬として多く利用されている譲渡制限付株式ユニット(Restricted Stock Unit: RSU)や株式交付信託等への手当てがされておらず、経済界から改正要望が上がっている(経団連ウェブサイト)。

①開示規制

  • 上場会社等の役職員向けの株式報酬として株式発行等を行う場合、「有価証券の募集」(金融商品取引法第2条第3項柱書)に該当するため、発行価額の総額が1億円未満となるとき(*)を除き、原則として、有価証券届出書の提出が必要となる(同法第4条第1項第5号)。

*募集・売出しにかかる有価証券の発行価額・売出価額の総額(新株予約権の場合、新株予約権の発行価額・売出価額の総額に当該新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計額を合算した金額)に、募集・売出しを開始する日前1年以内に行われた募集・売出し金融商品取引法施行令第2条の12に規定する場合に該当するもの、同法第4条第1項の規定による届出をしたもの及び当該届出前にしたもの並びに発行登録追補書類を提出したもの及び当該提出前にしたものを除くにかかる当該有価証券と同一の種類の有価証券の発行価額・売出価額の総額を合算した金額が1億円以上となる場合における当該募集・売出し以外の募集又は売出しをいう(企業内容等の開示に関する内閣府令第2条第5項第2号)。いわゆる通算規定である。
**2019年6月21日結果公表パブコメNo.13, No.14(金融庁ウェブサイト

②インサイダー取引規制

  • 上場会社の業務執行決定機関(*)が、株式発行等を行うことについての決定をしたことは、払込金額の総額が1億円未満であると見込まれない限り(有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第1項第1号イ)、「重要事実」に該当する(金融商品取引法第 166 条第2項第1号イ

  • ★本改正による例外(軽微基準)

    • 上場会社等又はその子会社・関連会社に対する役務の提供の対価として個人に対して株式又は新株予約権(株式等)を割り当てる場合

      • (1)希薄化率が1%未満

        • 株式・新株予約権の目的である株式の総数が株式等を割り当てる日(割当日)の属する事業年度の直前の事業年度の末日又は株式の併合・株式の分割・株式無償割当てがその効力を生ずる日のうち最も遅い日における発行済株式(自己株式を除く)の総数の100分の1未満であると見込まれること

      • (2)発行価額が1億円未満

        • 割当日における株式・新株予約権の目的である株式の価額の総額が1億円未満であると見込まれること

株式報酬の合理的な見込み額の公表が可能になるよりも前に重要事実が発生していると考えられる場合には、当該公表までの間、依然としてインサイダー取引規制への抵触が懸念され、コーポレートアクションが制限される。

そこで、一定の場合に規制の適用除外を認めるべきである。
具体的には、報酬としての1億円以上の株式の発行であっても、例えば時価総額に比して発行価額が僅少である場合や、事業報告で開示された取締役の報酬の決定方針に定められた範囲内で行われる場合等、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微である場合には、インサイダー取引規制上の「重要事実」に該当しないこととすべきである#11

経団連ウェブサイト

以上


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