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孤独だった心が「満ちてゆく」 MVで藤井風が演じた生涯を解く

「わしは誕生日を
孤独に過ごしとる人に寄り添いたいんよ」

そう語っていた風さん
孤独な老人を演じた「満ちてゆく」MV
その「生涯」を自分なりに考察してみました

「満ちてゆく」MVオープニング

過去の記憶が走馬灯のように転換していく
聞こえてくるのは風さんの優しいウィスパーボイス

「things change and we can do nothing about it
(変わりゆくものは仕方がないねと)
just letting go, feeling lighter, and becoming filled
(手を放す、軽くなる、満ちてゆく)
Overflowing(満ちてゆく)」
1番サビ歌詞の一部分である

「Overflowing」
実際の歌詞は「becoming filled」である

「Overflowing」風さんの声
ピアノの1音目が聴こえた瞬間
涙が溢れた

まさに心が「Overflowing」

小雪舞う悪路を進む車椅子
介助もなく ただ前だけを向き
独り どこかへ向かう老人
後の重要な場面と繋がる
主人公である老人の名は「kaze」

不自由な体で必死に車椅子を漕ぐ姿
風さんのピアノと相まり目が潤む

ノートに文字をしたためるkaze
老い先短いことを
ややもって覚悟しているかのようだ

いつものように独りぼっちの部屋で
ノートに向かう
その足元に突然 水が流れ込んできた

みるみる部屋に水が溢れてくる

気がつくと 大海原で浮遊していた
夢か現(うつつ)か


kazeにはトラウマがあった

災害か事故による水難により
幼い頃 最愛の母を亡くしている

母は自分を助けようとしたkazeに
「私はいいから あなたは生きなさい」
とでも言うかのように自ら沈んでいった

kazeを生かすため
子を想う母が遺した
命をかけた最期の愛

kazeは美しく優しい母が大好きだった
時々連れて行ってもらったピアノショップ

母ひとり子ひとり
家庭の事情を知っていたピアノショップオーナーは
kaze親子が来ると こころよく弾かせてくれた

軽やかに演奏する母のかたわら
少し照れくさそうに
そして嬉しそうなkazeの姿

kazeの左膝には穴空きツギハギ

膝に穴が空いても新調する余裕も無い
決して裕福な暮らしでは無かったが
寄り添い助け合う日々
幸せだった
何気ない日常

"あの時の自分には
自分より大切な人がいた
それが永遠に続くものだと信じていた"

kaze少年の手

あの日も着ていた赤い服
助けられなかった
自分のせいで母は亡くなってしまった
幼かったkazeにはどうすることも出来なかった

kazeはずっと自責の念に囚われていた

浮かない表情

インナーチャイルドを癒すべく
グループセラピーに参加したこともある

共感はしてもらえるものの
kazeの閉ざされた心が開くことはない

kazeの座っていた椅子に座る年老いた女性
いったい彼女は…?

kazeはピアニストになっていた

レストランで演奏するkaze

ふと顔を上げると
母によく似た女性

幻覚か見間違いか…

ハッとするも再び見た時には姿は無かった
居るはずないよな…
力なく小さく首を振るkaze

冴えないリーマンkaze

母子家庭で母を亡くしたkazeは
孤児院で育てられたと思われる

同情されるのが嫌で
三枚目のピエロを演じていたのが
いつの間にか陽気な"お調子者キャラ"
として周りからは下に見られる存在に

それは仕事に就くようになってからも変わらず
食品系の会社に就職
営業マンになったkaze

厨房のシェフに直談判してみたり
アジア人であることを生かし
アジア系スーパーへの営業を試みるが
どれも上手くいかない

荒ぶるkaze

得意でもない お酒を呑み
バーで暴れる日も

何をやっても上手くいかず落ち込み
もがき苦しむ日々

ある日いつものように乗っていた地下鉄で
亡き母によく似た女性を見かける

鬼気迫る表情

慌てて追いかけようとする

でも…
自分のせいで母は亡くなってしまった
その場で座り込んでしまう…

思い直したkazeは母の姿を追い求める

そうして辿り着いたのは
幼い頃 母と訪れたピアノショップだった

指が覚えていた

母との記憶を取り戻すべく
無我夢中でピアノを弾く

弾いているうちに思い出したことがある

孤児院で嫌なことがあると
決まって近くにあった小さな教会に逃げ込んでいた

たしかこの辺りにあったはず…

駆け出すkaze

必死の思いで辿り着いた教会
そこに母の姿はない

母の墓に現れたのは…

肩を落とすkazeを見かね現れたのは
ハイヤーセルフのもう1人の自分

不自由な身体で必死に向かう

老人のkazeが向かったのは
ピアノショップだった場所

冒頭 小雪舞う中
最期の力を振り絞るように
kazeがどうしても訪れたかった場所
アートギャラリーに変わっていた

飾られていたのは
懐かしくも愛おしい
若く美しい生きていた頃の母の姿

ずっとずっと逢いたかった最愛の人

いつかkazeが逢いに来てくれると信じ
待っていた母

kazeの目に光るものが

愛を求め続けてきた
実は既に自分の中にあった

母の身体は無くなっても
魂は いつも いつでも
kazeと共にあった

若かりしkaze
なにかを悟ったように「あっ」と声を出す

お墓に微笑みかけるkazeのハイヤーセルフ

ハイヤーセルフの"kaze"が語りかける

「愛は求めるべきものでは無いんだということ
愛とは すでにいつも自分の中にあるもの

与えれば与えるほど
分かち合えば分かち合うほど

解き放てば解き放つほど
愛は『満ちてゆく』もの」

しがらみ(サラリーマン)を捨て
本当の自分
なりたかった自分(ピアニスト)になるべく
駆け出すkaze

頑なに閉ざされていた扉を自ら開け放ち
解放へと向かう

解き放たれたのである

手から落ちるペン

kazeに人生の最期が訪れた

実は地下鉄で見えた母も
教会で悟ったkazeも
全ては まどろみの中で見た
最期の幸せな夢

幸せな記憶のまま
母の元へと帰ったkaze

恋人がいたこともあっただろうが
パートナーとは縁がなく
身寄りはなく友人もいない
天涯孤独

大好きだった最愛の母だけを想い
罪悪感と後悔を抱え
孤独を過ごしてきたkaze

1番近くで見守り続けてくれていた母
そこにあったのは
生死を超え永遠に変わらない愛

いつも肩に掛けていたショールを
息絶えたkazeに
そっと優しく掛ける母

「よく頑張ったね
もう2度と手を離さない
ずっとずっと一緒にいましょうね kaze」

ハイヤーセルフが 近づいたのは
kazeの母の墓

腰を曲げ話しかける

「kazeに…会えましたか?」

   〜end〜

あくまでも一個人の感想.考察です

喪失感と罪悪感
何をしても埋められない寂しさ
孤独でいること
母を思い続けることで
罪を償おうとしてきたkazeの生涯

インナーチャイルドやハイヤーセルフ
「心の救い」たち

愛とは
永遠のテーマ

山田智和監督脚本のもと
初めて本格的な演技に挑戦した風さん

6分間の短編映画
もし可能であればBTSを観てみたい

文中ハイヤーセルフkazeの言葉は
NHK『tiny desk concerts JAPAN』内での
「満ちてゆく」演奏時の風さんの言葉です

私自身 大切な人を急逝し
埋められない寂しさのなか
孤独に生きています

「満ちてゆく」MVの孤独な老人が自分と重なり
風さんの歌声とともに胸がギュッとしました
何度も泣いてしまう
色々思い出して哀しいのもある

死んでるように生きていて
生きるのを辞めてしまおうと
思ったときもあります
そんな時「藤井風」の音楽に出会い
生きがいが出来ました

風さんのライブに行く
今の自分にとっての生きがい

LAAT福井以来ライブは行けてません
何となく もう二度と行けないような気がしてます

以前は「帰ろう」を聴くまで空に帰らない
と、決めてました

今は「満ちてゆく」を聴くまで絶対に帰らない
と決めてます
※聴けたら帰るという意味にあらず
いつかまた風さんのライブに行けたらいいな

超長文 乱筆たいへん失礼いたしました
一稿目から激重になってしまいましたが
またご縁がありましたら覗きにいらしてください☺️

最後までご拝読いただき誠にありがとうございました

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