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寝ながらシュタイナー『自由の哲学』(0/9)

はじめに
表題「寝ながらシュタイナー『自由の哲学』」は、私淑する内田樹氏の『寝ながら学べる構造主義』から拝借したものです。

『自由の哲学』初版は、1894年、ルドルフ・シュタイナーが33歳の時に出版されました。彼によれば、それまでの活動をまとめるものであり、また後年の仕事を基礎づけるものでもあります。
しかし、『自由の哲学』は、後年に幅広い分野において興味深い影響を及ぼすことになる彼の後期の仕事ほどには受け入れられたとは言えません。
その最大の理由は、彼が、私たち読者に私たち自身の思考のバージョンアップを求めたことにあると思います。
彼は、「自由」をめぐる諸問題は、いわば「高まった」思考によってはじめて捉えることができると考えていたのです。

また、初版のまえがきで彼はこう言います。
「感覚における楽しみしか知らない人は、生きることの美味を知らない。」
その美味を味わうためには、「抽象的な領域」における格闘を通して思考が高まること、具体的で人間的なものとなることが必要となるのです。
そのことによって、私たちは「理念世界を自分のものにし、人間的な目標に向けて使える」ようになり、最終的には「私たちに微睡むすべての能力を育て‥人間全体をあらゆる方向へ展開させる」ことができるのです。
このような「魂を活気づける」読みが私たち読者には求められているのです。

本稿では、(修行の成果を先に叙述した、後期の著作『神智学』に倣い)後半部分にある「実現するべき「自由な人間」」を先に紹介します。それらは、前半部分の抽象的な領域における格闘の際の支のえとなってくれるでしょう。
その次に、「『自由の哲学』の「自由」とは何か」を考察します。以下、「自由」が「理念的直観の実現」であること、それに関わる人間や意志の二重性、抽象的な領域における格闘(特に「思考の観察」)、各章の簡潔な要約、「『自由の哲学』から精神科学(霊学)へ」と進めたいと思います。

参考にした翻訳は以下のものです。森章吾氏の訳は進化を続けていますが、筆者自身が原文にもあたり、筆者の責任において一部改変しています。
1『自由の哲学』森章吾訳 イザラ書房
2『自伝Ⅰ』伊藤勉・中村康二訳 人智学出版社/ぱる出版
3『自伝Ⅱ』伊藤勉・中村康二訳 人智学出版社/ぱる出版
4『自由の哲学』本間英世訳 人智学出版社
5『自由の哲学』高橋巌訳 イザラ書房/ちくま学芸文庫

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