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山田君 不動産で世を渡る(プロになる)※平成バブル 曙橋 確定測量が不調になるVOL2


曙橋の近隣の住民との立会が不調に終わった。重い足取りでデスクに戻った。初老の女性と揉めた部下は、未だに怒りが収まらない様子だ。
俺は今後の展開を考えたが、不安が頭の中を渦巻いている。
そんな中、俺のデスクの電話が鳴った。受付からで、区会議員からお電話です。という。区会議員に知合いは居ない。なんだろうと思い俺は電話に出た。

共産党の区会議員だった。曙橋の住民から通行権や地盤が崩れるのではないかとの心配の要望が入っている。今後の工事など住民の意見を尊重しなさい。
新宿区の開発指導課に言われるなら、行政指導に基づいて対処するが、議員に指摘されると納得できない。
ただ先ほど立会を不調に終わらせた女性が怒り狂って議員に要望したのはすぐに察知できた。

俺は慇懃無礼に対応し、電話を置いた。近隣女性の顔が頭に浮かんで、最初から話し合いに応じる姿勢はないあの姿に怒りがこみ上げる。ただ問題を解決すべき妙案は浮かばなかった。

夜、眠れなくなった。頭から曙橋の事業のことが離れない。悪い考えが浮かんでは消え、浮かんでは消える。不眠状態が続き何をやっても面白くなく、上の空になった。これが鬱か。ただ逃げ出すわけにはいかない。

確定測量は現在不調になっているが、立ち退き合意が終わったら売却先を探そう。今はやるべきことを実行するしかない。周りには元気を装い、なんとか持ち堪えた。戦う姿勢を持つことで徐々に停止していた思考が動き始めた。



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