見出し画像

招かざる訪問者との物語16

【新入社員 高木美穂】
高木美穂は、今年、仙台の薬科大学を卒業して一友製薬に入社した。MR(医薬情報担当者)として半年間の研修生活ののち、10月より、全国にある支店、営業所に配属され、医療機関を担当する予定だ。

高木は、仙台の出身で大学卒業までずっと両親と2人の妹達と暮らしきた。3姉妹の長女として頼れるお姉ちゃんだ。幼い頃から母親の手伝いをし、妹達の面倒も良くみるしっかり者、弱い人や困っている人がいると放って置けない優しい性格は、母親譲りとよく言われていた。
そんな彼女にとって、一友製薬に入社し、同期の仲間たちと過ごす研修生活は、期待とちょっぴり不安も感じながらのスタートだった。

入社から3ヶ月が経ち、この那須高原の新緑にそよぐ風が心地良く過ごしやすい季節を迎えている。

毎日、びっしりと詰まった研修スケジュールに最初は戸惑っていた高木美穂も、時間と共に順応し成長する自分を実感していた。

戸惑う集団生活も、日々の講義やグループワークも、振り返れば、様々な気付きを与えてくれる。高木は、社会人となり、改めて医学薬学知識を学ぶことや医薬品業界の商慣習、ルール、自社製品や競合製品など様々な勉強することが、自分の大きな使命に向かって心身を鍛えているように感じ、嬉しい気持ちが湧き上がってくるのを感じた。

大学6年間、薬剤師を目指して勉強していた頃より、ずっと一日一日がリアルに感じる。
前より具体的な目的意識があるからなのか。

コロナ禍で学生生活の後半は、多くがリモート授業だった。あまり家族以外の人と深く関わる機会も無かった。
そんな物足りなさを感じながら大学を卒業したせいだろか?研修所での仲間たちとの濃密な生活は、毎日が一喜一憂で実に刺激的なのだ。

高木は、時々、医療機関を訪問する自分を想像してみる。MRとして自社医薬品について説明したり治療効果や副作用の有無などを医師や薬剤師に聞き取りながら、先生の質問に受け答えする姿を思い描くと、今、学んでいる知識が凄く大切なんだと思える。

ロールプレイでは、ドクター役の社員相手に、ニーズを探りながら、製品を訴求するやり取りが面白くもあり難しくもあり、そんなやり取りがとても楽しく思えるのだ。

今日は、コンプライアンス研修。いつもと違って、講義の後は、グループワークの予定だ。

演台に立つ高山講師を眺めながら、どんな話しが展開されるのかを心待ちにしている高木がいた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?