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【読書感想文】「成瀬は天下を取りにいく」(著:宮島未奈)をAudible で聴き読み

本屋大賞を受賞し、話題となっている「成瀬は天下を取りにいく」をオーディブルで聴いてみた。続編の「成瀬は信じた道をいく」も合わせて聴き、成瀬と小説の虜になった。 


あらすじ

西武大津店の閉店のニュースから話が始まる。西武大津店は、地元民にとって単なるデパートという枠を超えた、思い出の場所であった。地元民の一人である成瀬あかりは「この夏を西武大津店に捧げる」と友達の島崎みゆきに宣言。閉店までの1ヶ月間、毎日西武大津店に通うのであった。

成瀬は変わった女の子。成績優秀、冷静な性格ながら、けん玉大会で優勝し、200歳まで生きる目標を持つ、お笑いの頂点を目指す、髪がどれくらい伸びるか確かめるために高校は坊主にする…など話題に事欠かない人物。成瀬に近づく人、注目する人、嫌う人、恋心を抱く人…など成瀬の周りにいる人は皆感情が揺さぶられるのだった。

感想

以下私の感想である。
ネタバレもないわけではないが物語のオチだとか核心には触れないように頑張った。なのでこれから読もうとしてる人も。

1.成瀬が気になる

成瀬は、私も含めた一般の人が「やってみたいな〜」と思いながらも通り過ぎてしまうことを本気でやっている。

例えば、夏休みの絵画や書道、標語などのコンクール。普通ならどれかから1つ選んで行うところを成瀬は全てやっている。そして表彰までされている。

これだけ1つ1つのことに本気で生きていたら、なるほど人生100年では足りなすぎるだろう、最低でも200年は欲しいという成瀬の意見もうなづける。

塾に行ってないのに成績は優秀で、けん玉もできるし、200歳まで生きるための体力づくり(ジョギング)も欠かさない。

Audibleの感想の中には、成瀬が天才肌という意味合いで「ギフテッド」だという声もあった。

しかし私が思うに、成瀬は「gift」を与えられているわけではなく、「取りにいく」という言葉の方がふさわしい。行動力という才能を与えられている。まさしくタイトルにぴったり「成瀬は天下を【取りにいく】」だ。

読んでしばらくは成瀬のことが気になってたまらなかった。

2.地元愛を極める

西武大津店、琵琶湖、膳所、ミシガン、観光大使…など成瀬は地元への愛を極めている。

「膳所」って地元民じゃない限り「ゼゼ」とは読めない難読地名だが、「ゼゼカラ」のおかげでもう忘れない。

また、街のパトロールなどを自主的に行なっている、と聞いて、アンパンマンか!と突っ込んでしまった。成瀬はある意味アンパンマンだ。

3.変わっているからこそ安心感がある

成瀬は変わった人物だが、ぶれない。
行動に軸がある。
だから周りの人に安心や信頼を与える。

困った時、成瀬ならどうするか?
登場人物もそう思うし、読んでいる私も成瀬への信頼を覚える。

4.成瀬は美人なのか?

この小説の個人的に好きなところは、
成瀬の容姿への評価の言及がないことだ。

通常、女性が主人公やヒロインになる場合、美人だとか決してそうでもないとか、可愛いとか端正な顔立ちをしているなど、容姿への評価が出てくることが多い。

成瀬はどんな顔立ちなのか?
聴いた限りで覚えているのが、成瀬に恋心を抱く男子の「マスクを外した方がかわいい」など、わずかである。

恋心を抱いているなら、もっと容姿に対する言及がありえるはずだ。

成瀬以外の人物では、一人顔面を評価されている人がいる。

「成瀬は信じた道をいく」で観光大使をしたパートナー、初対面の島崎みゆきから見ても黒髪美人だという評価である。

同じく観光大使なので、「成瀬も美人なんだろうな…」と推測できる。

だが作者からの明確な言及はない。

意図的に成瀬への容姿の評価を避けているようだ。

もし、美人・そうでないなど、どんな顔立ちか言及されていたら、そこにブロックされて、成瀬がどんな人間か想像する余地がなくなってしまう。

容姿に対する言及を控えることで、成瀬はどんな顔立ちかを超えた、すごい人なんだ、と思わせる効果がある。

最も、表紙の成瀬のイラストはキリリとした美少女だし、もし今後映像化されるなら、女優やアイドルなど、容姿の優れた人が起用される可能性もある。

あくまでも物語の中で言及されていないという話である。

5.思い出す作品は「坂本ですが?」

成瀬シリーズで思い出す他の作品がある。それは
『坂本ですが?』というハートフルな?ギャグ漫画だ。

主人公の男子高校生坂本は、エキセントリックでありながら常にエレガント、友達想いで、女子達にも慕われている。最初は彼を疎ましく思っていた不良たちも彼の虜になる。

坂本くんなら大丈夫、という安心感。
それがちょっと成瀬と似ている。

6.成瀬の将来を考える

成瀬は今後どうなっていきたいのだろう?成瀬なら、その時々でやりたいことを考えるのだろうが、個人的には政治、特に市政に飛び込むのではないかと思われた。

読んでいる時にちょうど都知事選で石丸伸二氏の話題があった。彼は元安芸高田市長で、日本全体のことを考えて都知事選に立候補したとのこと。

その行動力や賛否両論な見られ方、地元愛が成瀬と重なった。最年少かつ初の女性で地元をPRする成瀬市長、琵琶湖が人であふれる姿が思い浮かんだ。

だが彼女のキャラクターはメディアに出ると短期間で消費されてしまうのではないか、という心配もある。成瀬は200年生きるのだ。向こうの世界線のメディアも長い目でみてほしい。

おわりに

本屋大賞など複数の受賞がある作品なのでさまざまな感想を持つ人がいるかと思う。

私自身は、この作品は行動を促す作品であると感じた。成瀬のように、叶えたいこと、やってみたいことはすぐ行動しよう!と感じられた。

もし成瀬シリーズで感想を持っている人がいたらコメントをくれるととてもうれしい。

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