病気のフレディ・マーキュリーが、笑い転げて作った曲
3月4日はQUEENの「I'm Going Slightly Mad(狂気への序曲)」がリリースされた日です。作詞作曲はフレディ・マーキュリーです。
タイトルからして、穏やかではない曲であるとお察しいただけると思います。この曲についてはQUEENファンの間でも好き嫌いの分かれる曲なんじゃないかなと思います。
「I'm Going Slightly Mad(狂気への序曲)」
この曲はフレディ存命の最後のアルバム「Innuendo(イニュエンドゥ)」に収録されているのですが、フレディの病状がかなり悪化していた時期に作られています。
フレディが辛い時期に作られた曲だけあって、ファンにとっては目を逸らしたくなるような悲しい曲でもあるのですが、同時にフレディの生き様を濃縮したような、彼らしさがふんだんに詰まった曲でもあるんですよね。
病状が芳しくない中での曲作り
この曲が作られた1990年の秋といえば、フレディが亡くなる一年前で、フレディの病状はますます悪化し、歩行もままならないほどの時期でした。
しかし、フレディは決して悲観的な雰囲気は出さず、それどころかもっともっと曲を作りたい歌いたい、ととても仕事に精力的だったそうです。
この曲は友人と夜ふかしをしている中で作られたのですが、歌詞を疑いたくなるほど、自分の病気を面白おかしく曲にしています。
まず、「狂気への序曲」という曲名の通り、どんどん自分が狂っていくと暗示しています。
エイズが当時不治の病であったことは、本人も承知していたはずです。余命も覚悟していたことでしょう。その上でのこの歌詞です。
こんな歌詞が何度も登場します。
病気で自分がおかしくなっていく様を、友人と笑い転げながら歌詞にしたというのだから驚きです。
こんな歌詞を思いつき、笑い転げたそうなんです。
その他にも自分が狂っていく様を面白おかしく表現し、ユーモアに溢れた歌詞が次々と登場します。
「狂気への序曲」のMV
この曲のMVはモノクロなのですが、それは病気によるフレディの顔のできものを隠すためなのです。厚塗りのメイクでうまく隠せてはいるものの、痩せ細った体は病気の深刻さを感じさせます。
ですが、本人は病人とは思えない生き生きとしたチャーミングなパントマイムを披露しています。
この曲のMVは、痛々しくて見ていられないと感じる方もいるかもしれません。こんな姿を映像に残さないでほしかった、と悲しむファンもいるかもしれません。
けれどこの曲はフレディがリビングでくつろぎながら、友人と笑い転げて作った曲なのです。
悲しみや不幸を綴った曲ではないのですよね。この曲にこそフレディらしさが溢れているなと思うんです。
治る見込みのない病に侵された苦しい時でさえユーモアを忘れないという、彼の前向きでウィットに富んだ内面が、垣間見れる気がするのです。
ラストはこんな歌詞で終わります。
確かに。懲りもせず毎度毎度つらつらこんなマニアックなことを書いている私も狂っているのかも…。
◆「I'm Going Slightly Mad(狂気への序曲)」
他のメンバーも巻き込んで楽しんでいる様子のこんな曲です。「生まれ変わったらペンギンになりたい」という、ブライアン・メイの暴走も見どころです。