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青天の霹靂12(ホテルのオープン記念パーティー)

ホテルのオープン記念パーティに意気揚々とやって来た廉夏は、ホテルを前にして、すごく不満そうに言う。
「やっぱり、こんなの全然違う」
「ホテルのオープン記念パーティなら、こんなものだろう」
廉は冷めた眼差しで言う。
でも、廉夏は、すごく不満そうだ。
「そうかもだけど、もっと、陰惨な雰囲気じゃなきゃ。雰囲気味わえないわ。楽しみにしていたのに」
「それは、一体どんな雰囲気のホテルなのかね? 一体、廉夏さんや」
廉が苦笑いで言う。
「だから、陰惨で、もっともっとおどろ、おどろしいホテル」
「誰がそんなホテルに泊まりに来ますか?」
冬眞が聞く。それに、廉夏は待ってましたと言わんばかりに言う。
「えっ、それは私達とか?」
「僕もですか?」
嫌そうに言う。
「そうよ、当然じゃない」
「でも、一組じゃ、集客は望めませんね。たとえ、一年契約したとしても従業員の給料すら、賄えませんよ。それとも、何ですか? 廉夏ちゃんが、従業員の給料賄える自信がおありですか?」
ピシャリと冬眞が言えば、確かにと、廉夏は頷く。
「ないです。ごめんなさい」
廉がその間に、受付をすませ、パンフレットを持って戻ってくる。
「納得は出来たか?」
「一応は、でもヤダ」
廉夏はブスくれる。それに、廉は笑う。
「お嬢様の機嫌を損ねたようだな」
廉に冬眞はそう言われ、苦笑いをする。
「ええ、そのようです」
廉は廉夏の機嫌を取るように、受付でもらったパンフレットを廉夏にくれる。
「教会もあるらしいぞ」
「本当だったんだね」
脅迫状に書かれていたことを、廉夏は思い出す。
それに冬眞は言う。
「こちらが目星ですね」
廉も、それに答える。
「だな」
二人で難しそうな、話を始めると、興味なさそうに、廉夏は会場を見回す。
「まだかしら? 遅いわね」
「今日の主賓の一人だから、挨拶周りで忙しいんだろう? 主役は最後の登場だ」
廉は言う。
「ふ~ん、そう言うものか?」
そう言ってると、早速、その人物が登場した。
「冬眞先輩。来てくださったんですね。リルカ感激」
ハートマークが語尾に付きまくっている。
「何が、かんげ~きよ」
廉夏が吐き捨てるように言ったあと、にっこり笑う。
「そりゃ、あんな熱烈な招待状もらったら、無視できないでしょう」
「あら、何のことかしら? リルカ分かんない。先輩、怖い」
リルカが冬真に抱きつこうとすると、それを意外にも廉が止めた。
「ダメだよ。仮にも、人の夫になったばかりの者に手を出しちゃあ。せっかく、可愛いんだから、他にも目を向けてあげなきゃ。今日来たお客様が、かわいそうだよ」
廉がにっこり笑って言えば、ポーッとなったように廉を見る。
しかし、それはすぐある人物が遮る。
「お姉さま、お父さまがお呼びです」
そう言って、妹の穂波(ホナミ)が呼びにくる。
リルカはポーッとなったまま行く。
廉夏は、穂波に挨拶をする。
「久しぶりね」
「お久しぶりでございます」
そういって、頭を下げる穂波。
「相変わらず、可愛い奴じゃ」
「そんな、滅相もございません」
「あら、本当よ。私が男だったら嫁にもらいたいぐらいよ」
穂波は照れる。
「あれの、妹とは、とても思えん」
「楽しんでいって下さいね」
「そうだ。警告は確かに受け取ったわ」
それを聞き、穂波は固まる。
「ならなぜ。来たのですか?」
「私には守ってくれる騎士が2人いるから」
「騎士ですか?」
そう言うと、廉夏は両隣にいる廉と冬眞を見る。穂波は、にこやかに笑いながら言う。
「確かに、お二方とも強そうに見えますが、その油断がとても危険かと思います。相手を素人と侮らないで下さい。相手は死に物狂いで、来ますからどんな手を使って来るか、分かりません。なりふり構わず来るかと思いますどうか廉夏さんをお守り下さい」
そういって、逃げる。
「チッ、逃げられたか? つまらん」
「油断か? 僕ら油断してますかね。そんな気はないんですが」
冬眞が苦笑いで言う。
「油断しているか。そう言って俺達に発破(ハッパ)をかけているんだと思うぞ。よく気が付く子だよ」
廉が言う。
「廉兄もそう思うでしょう?」
「ああ」
「でも、これから、どうやって、暇を潰そうかしら」
「どうしよう?」
廉夏は悩む。

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