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青天の霹靂21(冬眞と廉の話し合い2)

「つまりは、持ち主の思い」
「そうだ。だから、廉夏は燃やしたんだろう。死せる人の思いだからな、これは。燃やすしかなかったんだ」
「ああ、だから廉夏は言ってたんですね」
「何と?」
「帰って行くって。僕はどう言う意味なのか、分からなかった。でも、それを聞いて納得です。それより、もう、良いでしょう? 廉さんが廉夏のことを自分の命よりも、大切に思っていることを僕は知ってます」
冬眞は少し怒る。
それに、廉は驚いたように聞く。
「うん、私が何かしたか?」
「いえ、しなかったから気付けました」
「しないからか?」
「ええ。僕でも、気付けたのに、廉さんが一切動こうとしないのを見て、何か理由があって動かないんだと分かりました」
「何で気付いた?」
「分かりませんか? 廉さんは僕より目敏いですよね」
それに、廉は苦笑いする。
「俺は褒められているのかね?」
「ええ」
「で、俺が動いていないと気付いたか? 流石だな」
「ええ。穂波さんに僕が『この庭に、とても思い入れがあるんでしょうね』と言ったとき、こう返ってきました。『ええ。その人にしてみればと』と。だから、ごく近しい者だと、分かります。それが、誰なのか廉さんが突っ込まないことに、僕は違和感を覚えました」
「それだけで気付くとわな」
簾は笑う。
「僕を試すのは、もういいでしょ? 何のためかはおおよそはわかりますが、僕が京極の跡取りとして、相応しいかを廉さんは見たかったのでしょうが、それと廉夏、いえ妹さんとどちらが、大切なんですか?」
それに、間髪入れずに廉は迷いなく、答える。
「廉夏だな」
「それを聞いて、安心しました」
冬眞はホッと一安心する。
「だろうと思っていましたが、やはり聞くまでは」
「安心できないってか?」
「ええ。僕の力を試したいのなら、それを、僕はお受けします。逃げも隠れも致しません。でも、それは廉夏の命が狙われている今じゃない。おかしいと、思ってたんですよ。どうして、何も廉さんが今回動かないのか?」
「嫌、お前が気づいた時点で俺の中では終わりだ。もともと、じい様に言われてて、オブザーバーに撤してただけだしな。息子であるお前の力をじい様も俺も見たかったのかもな。でも、こうなってしまっては、オブザーバーに徹していられないな。下手したら、廉夏が母さんのようになる。もう、大切なものを無くすのは、ごめんだ」
廉は血管が浮き出るほど、力強く拳を握る。
それで、廉の後悔の深さが分かる。
でも、思ってもいなかった名が、飛び出し、冬眞はびっくりする。
「でも、豪造さんが何故?」
「じい様は、今回の主役はお前たちだと、言って、俺は極力、オブザーバーに徹しろと言う命を受けた。つまり、お前の力いや、息子の力が、見たいんだろうな。けど、今回はそうも言ってられないな」
この言葉に、未だ廉は豪造こそが京極の頭だと思っていることが分かる。
そして、じい様と呼ぶことから、尊敬はしてても、親と認められないのが分かる。ずいぶん葛藤もあったことだろう。

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