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完璧な世界のつづき

子どもの頃は、笹でパンダの食事をつくったり、家の前の溝に笹舟を浮かべたり、虫を観察したり、空想のお話をつくったり、絵を描いたりすることが好きな、おかっぱ頭の子どもでした。

∞∞∞∞∞∞∞

クマのぬいぐるみにヒモをつけて連れ回し
虹を追いかけて
顔を真っ赤にして走る

いつも一人だったけれど
わたしの世界はいつも完璧だった
ただただ 幸せな時間

いつのころからだろうか
まわりにある世界に
うまく馴染めないわたしに気付き
関係性の中での役割を演じるようになった

わたしはわたしと口では言いながら
飛んでくる言葉に耳をふさぐ術もかわす術も
もってはいなかった

家族や周囲のひとたちに
献身的に生きることが人生であると
いい子ちゃんになったのは
いつのころからだろうか

自分勝手だとわたしを責める人は
いま思えば
わたしを言いなりにさせたいだけの
人たちだったことにも気づかず
利己的な自分を責めた

この世界になじもうと努力しながら
バランスをくずし転落

いまもあるとは言い難いけれど
もっともっと人を見る目もなかったころ
ぬるい言葉を信じて
「信頼」ということばの意味を
芯からつきつけられることになる

自分自身への信頼すら失ったところからの
生還のプロセス
わたしの作り直しの物語は
そこから始まっている

完璧な世界の延長線上にいたころのわたしは
凛と立っていた
いまよりももっと
まっすぐに見据えていた
けれど 人の弱さの背景にあることや
寄り添うことをよく知らなかった

目の前の命のぬくもりや血の通うさまを
わたしは存分には感じ取れていなかった
わたしの命のぬくもりや血の通うさまを
正直には誰にもみせていなかった

そうして 頭でっかちだったわたしが
果てしのない勘違いの連続のうえに
築いてきた社会のなかの定位置

つくりあげた虚構と現実とのずれは
もう埋まらない

つぎからつぎへと身体におこった異変
思考で生きることの限界
自分で作り上げたはずの世界の
ひび割れがみえた

だから すべてを手放して
子どもの頃の 
完璧な世界の続きを生きる

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