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うらないでー

これから一緒に事業をやってみようか、などと話をしている社長さんの商売の一つに、占いというのがある。弟子も数名おられるそうで、そのお一人の紹介を受け、4月の「清水いはらマルシェ」に参加することになった。この人は、お客さんの金運を占うそうだ。

僕などまったく縁遠い世界で、出店料をとるマルシェで利益出せるんかいなどと、失礼な疑問を投げかけてみる。
ご自分でも人相占いをしているという代表申すには、今では占いだけでマルシェが開催されるほど、人気の商売なんだそうだ。へぇ~。

それで結構、クレームも来るらしい。もうすぐ結婚できるって占ってもらったのに、いつまで経っても良縁なんか来ないじゃないか、とか。
それ、何度も占ってたの?「いいえ、1回きりのお客様です」

当たるも八卦はっけ当たらぬも八卦とは昔からよく言われるし、精度が向上しているとはいえ、いまだに明日の天気予報だって外れる世の中である。
地震学会なんて、毎年べらぼうな研究費とっておきながら、一度だって発生する場所や時期を予知できたことないじゃないか。1回こっきりの占いに的中率100%を求めるなら、神も仏も証券会社にAIも、みんな商売あがったりである。
ずいぶん無粋ぶすいというか、洒落しゃれのわからん人間が増えているんだな。

「クレームがイヤだったら、悪い未来だけ伝えればいいんです」
これだと占いが当たっていなくても、文句を言いに来る客はいないそうだ。「外れてよかった」という心理になるからで、「アンタに占ってもらってから幸運続きじゃないかい!」などと、腹を立てたりはしない。
静岡なんて東海地震の危険が取りざたされて半世紀近く経つが、むしろ被害をこうむっているのは「安全」とされた他の地域ばかり。だからって「そろそろ地震、来ないかなぁ」なんて望んだりは絶対にしない。地震学会に限れば、いらないんじゃないかと思っているが。

「実際、悪い事しか指摘しない占い師も少なくないんですよ」
なるほどねぇ。表面的にはお互いにウィンウィンと言えそうだから、それもアリとなるんだろうか。
しかし社長はそうした手合いを、業界の風上にも置けないと考えているようだ。
「メンタルが弱く暗示にかかりやすい方が、悲観的な未来を指摘されたりすれば、本当に命を落としてしまう可能性だってあります。そんなことになったら責任の取りようもないでしょうと、自分の弟子たちには日ごろからきつくいましめています」

だいたい僕みたいな、およそ経営者向きじゃない人間に共同事業を持ちかけるぐらいだから、「儲けてやろう」はあんまり感じられない。むしろ正直に生き、商売することに真剣である。
こちらのようなアバウトさもなく、事象を掘り下げていこうという姿勢だから、言葉にも重みがある。
「私、宗教と名のつく団体の集会には、たいがい顔を出しています」
そこで人間の幸福とはなにかに耳を傾けてきたが、結論はどれも大した違いがなかったそうだ。そうなんか。

「占い依存症」という言葉も、このとき初めて聞いた。
生活の中の些細な判断も占いに頼りっきりになってしまう状態だそうだ。
占い師を過剰に信頼しているので、この人のご宣託がないと精神状態が不安定になってしまう。
何事も占いの結果で判断しようとするため判断力が低下し、日常生活の些細な迷いまで相手に頼ってしまい、自分で考え判断することがなくなる。
NHKのニュースが全て正しいと、いまだに信じている人みたいだなぁ。

占い師の立場からすれば、これほどいいカモもいない。「あなたはこのままではとても危ない」と不安をあおったり、「大金を手にすることができます」と、いま辞めたら損するような印象を持たせたりして、利用を継続させる。詐欺やんけ。
こんな悪質なビジネスまで成立しているというから、占いの世界も奥深いもんである。
法の抜け穴も多々ありそうだし、世間を騒がす新興宗教より、ある意味で厄介かもしれない。

ワシもやろうかなぁ。しかもウソ偽りなく、的中率100%の予言である。
「アナタは、いつか死にます」
それを占いとは言わんか。

hanami🛸|ω・)و


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