見出し画像

テレ東と東スポ

テレビを視なくなって久しいのに、TVerが始まったここ数年、テレビドラマだけは何故かよく観る。

選ぶ番組の中に、大手キー局のものはほとんどない。杉下右京さんあたりもトライしてはみるものの、飽きてしまって最後まで続かない。
唯一、テレビ東京だけは季節ごとの新番組をチェックしている。
テレ東の低予算を逆手さかてにとったスタッフ構成や、他局と視点の異なる設定が好きである。

テレ東ドラマにハマったのは『孤独のグルメ』からで、BSの正月特番でシーズン1と2を通しで観たためだ。吾郎さんの心の声で構成される大衆食堂の食事シーン、斬新だったなぁ。あれからもう、10年以上が経つのか。
以降、静岡のローカル局でが数か月遅れで放送するのを視ていたが、やはり同時期の視聴を切望していた。

そのうちテレビ自体を止めてしまい情報も途絶えたが、『孤独のグルメ』シリーズの後続番組らしい『スナック キズツキ』をTVerで知って以来、ドラマとの付き合いを再開した形だ。

ちょうど動画を始めて間もない頃で、カメラワークや編集技術、照明の当て方や登場人物のセリフ回しなど、それまでのストーリーを追うのとは全く異なる視点で画面と向き合っていたから、全てが実に新鮮だった。
とくに『スナック キズツキ』のシネマティックでエモい仕上がりには、50代を迎えた原田知世のはまり役と共に魅了される。アレ、何とか続編作ってくれんもんだろうか。

ところが今年に入って、観たいドラマがなくなってしまった。
極端な例外は関西テレビの『春になったら』で、これだけはどんな角度から見ても、出色の出来である。
物語の構成、それぞれの心理描写、テンポとリズム感、絶妙なキャスティング、映像で言えば適度なカラーグレーディング(こだわり過ぎて疲れる色合いのものが最近少なくない)と、どれも出しゃばり過ぎず、生と死の主題を際立たせる手腕が秀逸だった。

還暦を過ぎたばかりの平凡な人生を送る父親(木梨憲武)が、末期のがんをわずらい、結婚を間近に控えた娘と過ごす最後の数か月。決して重くなり過ぎず、地味で淡々とした描写からは、小津安二郎の系譜を想起せずにはおれない。
プロがその気になればいまだってこんなに味わい深いドラマ、作れるんだよなぁ。

それに対し、あくまで個人の見解として、テレ東が絶不調である。
と言ってもともと恋愛系は興味の対象外だし、新作のすべてを網羅しているなんてことは決してないが、新番組の1話目を観始めても、最後までたどりつけないものばかりだ。
変にシリアスな作りに腐心している風なのが、劣化したWOWOWドラマを観ているようで場違いな感覚になってしまう。
あっちは地上波に欲求不満の監督や演出家が、スポンサーに気兼ねすることなくのびのびと、それなりに金をかけて作り込むわけで、テレ東が同じ品質を追求しようとしてもかなう相手ではない。
ここはをわきまえ、あくまで自分の土俵で戦うべきだろう。

テレ東は軽妙で、少しくらい軽薄であってもいいから、コメディタッチの組み立ての方が好ましい。『ひねくれ女のボッチ飯』とか『絶メシロード』とか、あんなんでいいんですよ、オレは。ふっ。

テレ東か東スポか、そのくらいの地平で競い合ってほしいのに、どちらもかつての破天荒さが影を潜めている。この2社に限って、”成熟”の二文字は似あわない。
東スポであれば「ベイダーの目玉が落ちた!」。でも、「はめたら元に戻った」。このくらい異常なパワーみなぎる一面記事を、ぜひ取り戻してほしいもんである。

そんな中、テレ東ではようやく、安定の(?)シーズンもの2本が始まった。(明日に続く)

イラスト Atelier hanami@はなのす


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?