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丸投げしたアナタのせいよ

平成15(2003)年9月2日。地方自治法が改正され、それまでの管理委託制度に代わって、指定管理者制度が導入された。
管理委託制度とは、公共団体や公共的団体(農協、商工会、自治会等)、および一定の要件を満たす地方公共団体の出資法人を指す。税金垂れ流しと酷評こくひょうされた第三セクターなど、これにあたるだろう。
それが指定管理者制度の導入によって、民間事業者を含む幅広い(法人格が必ずしも必要ではない)団体に、受託対象が変更された。

以降、公の施設のうち、地方自治体が直接管理を行わず外部に管理を任せる施設については、指定管理者を指定して業務を代行させることになる。
今や大半の公共施設は(民間組織による)指定管理者が受託し、運営していると言っていい現状だ。

時の小泉政権が掲げた「聖域なき構造改革」の一環で、新自由主義経済路線による「小さな政府」論から発したものである。
郵政民営化・道路関係四公団の民営化・政府による公共サービスを民営化することで行政のコストを削減し、市場にできることは市場に委ねる方針が打ち出された。
「官から民へ」「国と地方の三位一体の改革」「中央から地方へ」など、それっぽい美辞麗句が大手マスコミを通し、喧伝けんでんされていく。

平たく言えば、経営能力のない行政に変えて、民間企業の競争力・ノウハウなどを導入することで、ひっ迫してきた自治体の予算を圧縮しようとしたわけだ。
役人による安易な天下り先を止めたという点では評価できるかもしれないが、もともとそういうところに天下っていたのは下っ端で、金食い虫の役職クラスは安泰あんたいのままのような気がする。

露骨に言ってしまえば、自分たちでは経費の圧縮などとてもできないお荷物案件を、民間へ「丸投げ」したともいえる。
そもそも収益性などは二の次で、住民サービスの一環であるべき公共施設の予算を大幅にカットしたうえ、後は民間の知恵でなんとかしろという事だ。ご都合主義も極まれりと思った。
関わってもろくな事にならないな、そう思って個人的には傍観ぼうかんしていた。

その当時、僕が在籍した会社は諸事情から部門を独立し、上司が代表取締役になっていた。100%親会社出資による、グループ企業の一つである。

社長に就任したウチの親分、時流に乗り遅れちゃまずいと思ったのだろう。自社でもできそうな指定管理者の案件を、物色し始める。
それを横目にはらで見つかんなきゃいいと思い、「どう思う?」とかまをかけられては話をそらしていた。苦労ばっかりで儲かんない商売、やめようよ。

そんな怪しからん部下の態度にごうを煮やしたか、気がつけば僕の部下であるはずの営業クンに、直接指示をし始めた。
トップ相手に不遜な物言いになるが、その時はいつもの悪いクセが出たと思ったもんだ。
そっちが決定権者なんだから、「やる!」ってはっきり方針を打ち出せば、こっちはブーれながらも動いたはずなのに。婿むこさん体質で、下にもはっきりものが言えない性格だったのか(婿むこは関係ないか😅)。
こちとら本社から独立する際、仮にもアンタが指名した”取締役”なんだし、反対する立場の意見を聞いたって、バチは当たらんだろうにと思った。

更に言うとウチの社長さん、指示はしてもご自分は一切動かず下に「丸投げ」するから、今は張り切ってる営業クンがその内つぶれちゃうんじゃないかと危惧もした。
そして、当たらなきゃいいと願う予感ほど的中するもんである。

ある日の朝礼で、社長が事務所のスタッフを集め挨拶を行った。
「今回、○○社と共同で指定管理者を受託した。ついては私と営業の○○君が担当し、準備を進めていく」と、これ見よがしにぶち上げたもんだ。
○○社の役員さんと親分は古くからの酒飲み友達で、どうせ飲み屋で一杯やりながらノリで話を進めちゃったんだろう。
向うの担当になる人物の顔も、すぐに浮かんできた。

受託したその場所がすごい。静岡県浜松市天竜区春野町という、本社から車で片道3時間近くかかる町営の施設である。静岡県の奥深い山の、ほぼどん詰まりの場所と言っていい。
5棟のコテージ、伝承館、食事処を5年契約で運営するという。

当時の指定管理者のプレゼンであれば、少なくとも数社がエントリーし、提案を競ったもんである。
この施設に限ってはウチのグループ以外手を挙げるところがなく、すんなり一発で決まったらしい。
そりゃそんなところまで出かけて運営しようなんてもの好き、他にいそうもないわな。(明日に続く)

イラスト hanami🛸|ω・)و



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