茶会事件簿 木地

亭主をしていて「正客は、どうも慣れていない方」と思いました。少しばかり、やり取りが怪しいのです。

真塗に蒔絵の干菓子盆を出しました。菓子を取った客から意外な質問がー
「こちらのお盆の、木地は何ですか?」

驚いた私は、一瞬息を飲みました。
(お正客様誠に失礼しましたですが、木地は不明です。木地のままとか、薄い塗で木地が見える時は、聞く様ですが。まったく塗ってある品は、木地を聞かない習いなので…)

(例えば春慶塗なら、木地は檜。溜塗なら、木地は松。決まった物も有りますが)中年男性の客は、それでもシツコク
「じゃ絶対に真塗なら木地、聞きませんか?」と。

(さあ私も未だ50年余の勉強なので、絶対との言葉は使えません)謙虚ぶって木地好きの客から、逃げました。