新古今和歌集 自訳

「橘のにほふあたりのうたた寝は
 夢も昔の袖の香ぞする」
皇太后宮大夫 俊成女

心の悩みに疲れ果て、思わぬ所で、転た寝をしてしまいました。
ふと目を覚ますと、橘の香りが…

夢の中の香りでは、無かったのでした。その香りにまつわる、色々が思い出され辛くなりました。

作者の父(実は祖父)にも、同じ趣の名歌があります。
(たれかまた花橘におもひ出でむ
 われも昔の人となりなば)
実は二つの歌には、本歌が有ります。古今和歌集・伊勢物語六十段にある
「五月まつ花橘の香をかげぱ
 昔の人の袖の香ぞする」

ある意味、新古今和歌集は本歌どりの世界かも知れません。
元歌を知ると、楽しみが増します。