智和輪 テキスト

フィリップ・ハーパーは、外国人唯一の「杜氏」である。2007年、京丹後市の木下酒造に杜氏として就任した。ハーパーが蔵人として酒造りの修行に入った1990年代初頭は、伝統的な杜氏制度が残る最後の時代だった。それが何よりも貴重な財産になっている。2001年に「杜氏資格選考試験」に合格したハーパーにとって、木下酒造は杜氏として携わる2つめの蔵である。ハーパーが木下酒造でまず手掛けたのは、彼が「自然仕込み」と呼ぶ、昔ながらの日本酒造りだった。木下酒造での初年度にハーパーが手掛けた日本酒は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、一躍脚光を浴びた。そのとびきり清純な味わいが、最高級の評価を勝ち得たのである。

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