人学

西郷隆盛は二度目に流された沖永良部島で、川口雪篷に借りた細井平洲の『嚶鳴館遺草』を読んだ。これは、民のための藩政改革をどのように行えばよいかという改革のテキストであった。単に改革の技法だけではなく、その根本の精神が切々と書かれていた。細井平洲が言うのは、「為政者は民の父母である。子供の悲しみや苦しみを親として感じ取り、それに手当をしなければならない」ということである。西郷は、「愛民」という言葉を知ると同事に、自分の無力さと人間の器量の小ささを知った。そして天の存在を知った。彼はここで「敬天愛人」の思想を生んだのである。

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