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人規十七則

一、徳を尊ぶ

一、人の身は、その本質を天からいただいたものである。

二、徳を心のうちに具えている人もあれば、学習してわきまえる人もあり、刻苦精励してはじめてわきまえる人もある。

三、平凡で恒常的な日常の徳を実行すれば、輝かしい徳を身につけて輝かせることができる。
内なる己自身(意念)に徳ができると人の身体もその潤いをうける。

四、人間は仁徳の中に身を置くのがよい。それは誰でもできる。仁の徳は天の与えた尊い爵位のようなものであり、人間の安んじているべき場所である。
知と仁と勇の三つが、世界中にあまねく通用する徳であり、正しい道を修めるには仁の徳に従うべきである。

五、学習好きなのは知の徳を育てることになり、実践につとめるのは仁の徳を育てることになり、我が身の恥を知るのは、勇の徳を育てることになる。

六、人の君としては仁愛の徳にとどまってそれを標準とし、人の臣としては敬慎の徳にとどまってそれを標準とし、人の子としては孝行の徳にとどまってそれを標準とし、人の親としては慈愛の徳にとどまってそれを標準とし、人々との交際では信義の徳にとどまってそれを標準とする。

七、自己の親を愛敬せずに他人を愛敬することは、徳に背反する行為である。
徳を尊ぶのでなくては、一緒になって大事業はやれない。

八、真に心を徳の世界において悠々自適、天下の利害損得、一つも心を動揺させることなく、志が確立していたならば、いつにわかに大事が生じても、業を成就することができる。

九、自らの徳をもって仁政を行う者は王者である。徳をもって人を服せしめるのは、相手が心の底から喜んで本当に服するのである。

十、偉大な徳があれば、ふさわしい地位が得られ、ふさわしい俸禄が得られ、ふさわしい名声が得られ、ふさわしい長寿が得られる。偉大な徳を備えた人は、天命を受けて天子となる。楽しめる君子は、美わしき徳に輝く。

十一、盛んな徳をそなえた人は、民衆にとって忘れることができない。

十二、文王はその徳を見事に世界に輝かされた。堯は偉大な徳を見事に世界に輝かされた。

十三、舜は大聖人である。我らは到底、聖人の大徳に及ばないが、既に志を立てて聖人を学ぼうと決心した以上、大舜であるからといって、その大徳に畏れることはない。

十四、国を治めるのは大徳を施すことであり、小恵を施すことではない。

十五、徳のある賢者を尊敬し、徳のある賢者がしかるべき地位にあれば、政治がよく行われて国家が平穏無事である。君主の心を正せるのは大徳の人だけである。大徳の人があって君主の心を正しくするなら、一国は正しく治まる。君徳が一国の道義の根源である。

十六、教育のあり方は、すべて自ら実行して心に会得した結果に基づいたもので、日常的な道徳の他に何か高邁な哲学を求めることを必要としない。誰もが学び、自分の本性としてもともと備わっている高貴な道徳性を自覚し、自分に割り当てられた任務としてなすべきことをわきまえ、それぞれにひたすら力を出し切って努力する。

十七、徳と道という、天下無双の霊宝がある。この宝を用いて、心に守り身に行う。この宝は上は天道に通じ、下は四海にあきらかである。この宝を用いて、親子・君臣・夫婦・兄弟姉妹・朋友の五倫に交われば、五倫すべて和睦する。天下は平らかになり、国は治まり、家は斉い、身は修まり、心はあきらかである。

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