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人規十七則

七、物を格める

一、我が身の生まれつきの徳性を発揮するとともに、後天的な学習につとめ、広大なところをおし究めるとともに、精緻なところを十分明らかにし、高く光明に満ちたところを追求するとともに、日常的な中庸を守り、前に学んだことを復習するとともに、新しい知識を求め、重厚な誠実を養いながら、礼のきまりを尊重する。

二、広く詳しく知識を得ても、その眼目を把握しないと、臨機応変な処置がとれない。博識から入り、眼目を把握してその知識を統合すること、眼目を把握してそれから出発して博識に至ることの二者が常に助け合って成績があげられる。そして詳細に究明しようとする努力こそ、眼目の把握と博識の獲得の両事にわたっての、最も大切な仕事である。

三、物事には根本と末端とがあり、また初めと終わりとがある。何を先にして何を後にすべきかということがわかるなら、それでほぼ正しい道を得たことになる。

四、平天下(天下を平かにする)のもとは治国(国を治める)にあり、治国のもとは修身(身を修める)にあり、修身のもとは正心(心を正す)にあり、正心のもとは誠意(意を誠にする。意識を誠実のものとするよう努力する)にあり、誠意のもとは致知(知を致す。致すは推し極める)にあり、致知は格物(物を格める。事物の道理を究明する)にある。

五、世界の事物には、どんな場合でも理が備わっている。世界のすべての事物について、すでに自分の見抜いた理を手がかりとしてますますそれを推し究める。こうして長い間の努力を積み重ねて、ついにあるとき突き抜けたとなると、万事万物の表も裏も精緻も粗大もすべてすみずみまで究め尽くされる。これを「物が格る」という。

六、機械や技術は年々変化進歩している。これらは初めは頭の中で考えられ、次に実際に試してみて、それから実用化される。しかし旧式のやり方に親しみ、保守的になり、頑固でどうにもならないという人間がいるものである。いろいろ発明工夫をして、新しいものを創り出し、広く広めるようにすれば、利益を高める一つの方策となる。

七、人の心は霊妙なもので、どんな場合でも知識が働くものであり、また世界の事物には、どんな場合でも理が備わっている。世界のすべての事物について、すでに自分の見抜いた理を手がかりとしてますますそれを推し究める。こうして長い間の努力を積み重ねて、ついにあるとき突き抜けたとなると、万事万物の表も裏も精緻も粗大もすべてすみずみまで究め尽くされ、さらに自分の心の本質と働きが明白になる。これを「物が格る」といい、「知の致り」という。

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