ADHDの俊介くん
#子供の発達障害 #ADHD #注意欠陥多動性障害
あれれ、クラスに困った子がいるよ
ここは、とある小学校の3年生のクラス。
担任の先生が教科書を開いて、授業を始めて1時間くらい経過すると、俊介くんは突然席を立ってあちこちうろうろと歩き回る。先生が注意して一旦席に戻るが、今度は3分も経たないうちに再び席を立ってうろうろし始めた。
なお、着席している時は周りの児童が持っているキラキラした鉛筆、かっこいいキャラクターの筆箱、人気アニメの下敷きなどに気を取られて、先生の話が聞けなくなる。そのおかげで「明日は図工で絵の具が必要」「算数でコンパスや三角定規、分度器を使う」「体育で縄跳びが要る」などの指示があっても、全く頭に入っていないので、忘れ物をすることも多かった。
鉛筆が使えなくて、無断で人のものを使ってしまう
この前なんて筆箱に入っている鉛筆が、全部芯が折れていて全く使えない状態だったので、隣にいる児童の鉛筆を勝手に使ったこともあった。その様子を見かねた女の子が、持っていたカッターナイフで俊介君の鉛筆を削ったことによって、今日一日文字が全く書けないという災難を免れることができた。
身の回りは、いつもぐちゃぐちゃ、ごちゃごちゃ・・・
その上俊介君は普段から整理整頓が苦手で、自分の部屋を始め机の中やロッカーの中は、常に物があふれかえって散らかり放題。授業で使うプリントや
重要なお知らせを書いた手紙がどこへ行ったのか、自分でもすぐに見つけることができない。この前なんか買ったばかりの文房具を紛失してしまったこともあった。
興味のある話題には、すかさず飛び込む
同じクラスの男の子が集まって、当時流行っていた遊戯王などのカードゲームの話で盛り上がっていると、俊介君はすかさず割り込んで自分の知識をひけらかす。
「あ~!そのゲーム僕も知ってるよ~!○○ドラゴンって攻撃力が高いんだよね~そして××ソルジャーって防御力が高いんだよね~!そして☆☆フェニックスって滅多に手に入らないレアカードなんだよね~!!!あとモンスターが傷ついたら神秘の泉で体力を回復させるといいよ~!!!!!」
と、このように大きい声で長々と話す。男の子達は「また始まったよ・・・」とうんざりした顔になるが、本人は全く気づいていない。
嫌なことがあると、怒りを抑えられない
体育の授業で、俊介君達のチームが負けると、俊介君は悔しい気持ちを抑えられずに、「お前がパスを間違えたから悪いんだ!」と同じチームの女の子にきつく言ってしまった。女の子はしくしくと泣き出して、俊介君はその子の友達から「ちょっと!それは言い過ぎだよ!」とつるし上げを食らってしまった。
他にも、こんな問題行動が・・・
授業中は急に立ち上がってうろうろ歩くことが多い俊介君だが、ちょっとでも自分の気に入らないことがあると教室を飛び出してしまったり、自分の机の下に潜り込んで15分間は出てこない時もあった。この前は女の子に注意されると、「うるせぇ!ブス!」と暴言を吐いて女の子を突き飛ばした。このことから周りと諍いが絶えず、とうとう担任の先生が母親を呼んで親子面談することになった。
母親と本人と担任で面談をすることになったが・・・
「お宅の俊介君は、本当に忘れ物が多く、授業中でも勝手に歩き回ることが多いんですよ。ご家庭では一体どのようなしつけをなさってるんですか?」
「申し訳ありません・・・何回言って聞かせているんですけど全く効果がなくて・・・」
「その上机の中もぐちゃぐちゃで片づいていない、本当にだらしなくてやる気がないとしか思えません。」
その当時は発達障害という概念が全くなかったので、俊介君のような児童は、ただしつけがなってない、落ち着きがない乱暴者だとみなされていた。そして俊介君は、あちこちをきょろきょろと見回し、今日放映されるお気に入りのアニメ番組が見たいという欲求が募っていた。面談が終わった後、母親は俊介君と一緒に机の中を掃除して、アニメが始まった10分後に帰宅した。
怒りが極限に達して、こんな事態に・・・
そしてとうとう、決定的な事件が起こってしまった。
俊介君に迷惑しているクラスの男の子が、俊介君に対して嫌なことを言い、俊介君は逆上して机の下に有る椅子を投げつけたのだ。男の子は軽い怪我を負って、担任の先生が双方の親に連絡を入れた。俊介君の母親は相手にひたすら平謝りをしたが、俊介君は目から悔し涙を流し、自分は悪くないという気持ちでいっぱいだった。
今顧みると、彼はADHDだったと言っても過言ではない
これまでの経緯から振り返ってみると、俊介君は典型的な、
ADHD・注意欠陥多動性障害だったと十分に思える。
現在ではそのような発達障害に対応する機関が徐々に増え、当事者の子供だけで集まってレク活動などを行うデイサービスも登場して、学校でもできる限りの配慮を行う方針を固めている。しかし子供の頃に適正な支援を受けないと、大人になって仕事をしても失敗を繰り返して、挙句の果てにうつ病などの 2 次障害を 起こしてしまうことにもなりかねない。
ちなみに著者である私と俊介君が通っていた小学校は、私たちが卒業して数年後に「わかば学級」という知的障害や発達障害などの児童を受け入れる特別支援学級が加わった。
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