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盲目のスラッガー〜あるいはアダム・ダンの最適打順とは何番であるのか〜【少年マガジン原作(企画書)応募作】

【キャッチコピー】
安心しろ、その努力は必ず誰かが見ている

【あらすじ】
 
中学時代にその名を全国へと轟かせてた天才ピッチャー我鳴大地(がなりだいち)は仲間の裏切りと右肩の怪我から野球に見切りをつけごく平凡な公立高校、八線高校に入学する。しかし、そこで彼が出会ったのはとてつもないバットスイングをするが自身が目を瞑っていないと全くそのスイングが出来ないというとんでもない問題バッター、3年生で弱小野球部のベンチにも入れていない丸山来音(まるやまらいおん)だった…

【第1話のストーリー】
 
シニアの大会の決勝戦、そこで全てのアウトを三振で奪って勝利したピッチャー我鳴大地(がなりだいち)の名前は1つの伝説になっていた。彼には強豪校からスカウトの声がかかっていたはずだが何故か入学したのは弱小野球部しかない公立、八線高校だった。
 理由は単純、その決勝で無理をした彼の右肩は完全に壊れてしまっていてとても野球を続けられる状態ではなかった。
 野球を避けるようにして八線高校に入学した我鳴だったが、入学直後のグラウンドで異様な光景を目撃する。身長2mはあろうかという大男が延々と野球部のグラウンドの隅で球拾いなど雑用をやらされていたのだ。
 怪訝に思う我鳴だったが自分はもう野球には見切りをつけたと無視する。しかし、後日用事で帰りが遅くなった我鳴はもう誰もいないグラウンドの隅、同じ場所で真っ暗な中とてつもない風切り音が響いているのを聞く。
 暗闇の中、我鳴が目を凝らして見るとそこでは先日見た大男が猛烈な勢いでバットを振っていた。
 気になって思わず声をかけてしまった我鳴。聞くとそのバットを振っていた男は野球部の3年生で丸山来音(まるやまらいおん)と名乗った。
 彼は甲子園に憧れて高校から野球を始めたが中々練習に参加させてもらえず皆が練習を終えた夜にこうして毎日素振りをしているのだという。その数は日に1万回で台風が来ようが雪が降ろうがこの2年間1日も休んだ事は無いらしくその数に思わず我鳴は驚く。
 翌日、我鳴がグラウンドへ赴くとやはり丸山は球拾いばかりさせられていた。その光景に自分が中学のシニアチームでその野球の才能ゆえに孤立していた事、それが理由で決勝の舞台でチームメイトから半ば守備のボイコットのような物を受けてアウトを三振で奪うしかなくなった事、それを主導していたのが唯一信頼していた当時我鳴の球を受けていたキャッチャーであった事を思い出し、思わず野球部相手に丸山のようなすごいバッターにまともな練習環境を与えないのはどうなのかと我鳴は文句を言ってしまう。
 しかし、その言葉を聞いて八線高校の自称小さな大エース身長156cmの小森は大笑いし今から丸山と3球勝負をしてやるとマウンドに上がる。
 結果は昨夜に我鳴が見た物は嘘っだった様な力無いスイングで丸山のバットは球にかすりもしなかった。
 何と丸山は自身の目を瞑りながらじゃないと本来のスイングが出来ないという致命的な問題を抱えていた。

【第2話以降のストーリー】
 勝負には負けてしまった丸山だが、同時に我鳴があのシニアの決勝戦で伝説を残した我鳴大地であることが八線高校の野球部員たちにバレてしまい、その我鳴の野球部入部を賭け2、3年生対新入生(丸山は3年生だが新入生チーム入り)で紅白戦を行う事になり再戦の機会はすぐに訪れる。
 もちろん我鳴は怪我で球など投げられるはずもないのだが、ベンチからそれをブラフに相手チームに揺さぶりをかけた事もあって相手の2、3年チームは大した事もないマウンドの1年生ピッチャーから中々点が取れない。
 しかしそれはコントロールだけは一級品、2、3年チームのエース小森から新入生チームが点を取れないのも同じで試合は投手戦、2、3年生チーム1点リードのまま9回まで進んだ。
 表の新入生チームの攻撃、一塁にこの試合初めての四球のランナーを置いて打席は丸山、これまでの3打席は全て力ないスイングの三振でこの打席に入る前に我鳴が声をかけた。
 そして小森が投じた丸山への1球目、バットは空を切ったが丸山は試合で初めて目を瞑ったままスイングし、初めて見たそのスイングの強烈さに周りの野球部員たちが度肝を抜かれる。
 小森の2球目、動揺があったのか真ん中付近に抜けた球は初めて丸山のバットに当たり打球はファールとなった。
 それを見て我鳴が小森を野次ると、腹を立てた小森は次で試合を終わらせてやると自身の渾身の決め球を投げ込む事を決める。
 しかしこれまで試合を冷静に観察し続けていた我鳴は完全にそれを読んでいた。本来なら読みとかけ引きで試合をコントロールするタイプのピッチャーだった我鳴が先程丸山に出していた指示はこうだ。
 もうバットをボールに当てようと何かせずに目を瞑って思いっ切りバットだけ振ってこい。ただ、もし2ストライクまで追い詰められたのなら最後は内に一歩だけ踏み込んで1、2の3でスイングしろ。と、
 こうして投げ込まれた3球目、小森の決め球はアウトローへの渾身のストレートだった。狙い通り投げ込まれたそれはものすごい音で丸山の鋭いバットスイングと正面衝突。飛んでいく打球は軽々とグラウンド場外へと消えた。
 逆転のホームランに大喜びする新入生チーム、信じられないとマウンドで崩れ落ちる小森、しかし1番それに驚いているのはホームランを打った丸山本人で呆然としばらく打席に立ち尽くした後、我鳴に声をかけられてやっと塁を一周した。
 こうして試合を逆転した新入生チームだったがまだ裏の守備が残っている。勝ちを諦めない2、3年チームは疲れ切った1年生ピッチャーを攻め立て2アウト、ランナー1塁2塁でサヨナラのチャンス。
 ここで周りが囃し立てるのもありマウンドには何と右肩を壊しているはずの我鳴が登る。怪我の事は本人も十分に理解しているはずだが、先程の丸山のホームランを見て彼もまた野球への情熱を取り戻しかけていた。
 しかし我鳴がマウンドから投じた1球目、リリースしようとした瞬間に彼の右肩を強烈な痛みが襲って球はとんでもない方向への大暴投。ランナーが帰り試合は新入生チームのサヨナラ負けとなった。
 こうして怪我の事が明るみになった我鳴だったがコーチとして八線高校野球部に入部する事となり、丸山も普通に練習に参加出来るようになった。これまで雑用ばかりやらされていたのは野球部を仕切っていたエースピッチャーの小森が丸山の大きい身長に嫉妬して嫌がらせを行っていたせいだったが、渾身の球をホームランにされた事でその2人も和解する。
 暗闇の中でばかり練習していたせいで無意識に目を閉じていないとまともにバットが振れないのは変わらずの丸山だが我鳴のコーチングもあって、体格の威圧感で四球をもぎ取ったり、球を見ること出来ないので空振りが多いのは当然だが球に当たりさえすれば長打と失投をホームランにしたりと試合で活躍する機会も増えていく。
 こうしてただの弱小野球部であった八線高校が甲子園を目指す戦いが始まったのだ…

#週刊少年マガジン原作大賞
#企画書部門

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