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Au service de la Franceで学ぶフランス近代史: アフリカの大地に太陽は昇る?
元のタイトルは "Un peu de soleil".
めちゃくちゃ人種差別の話だが、フランス近代史の上ではかなり重要な話と言える。
どんな話
アフリカ独立の話。冒頭の白黒ニュース番組がカメルーン独立のニュースを流すところから始まる
ある日、アフリカのダホメの大使三人が訪ねてくる。彼らも独立を求めてやってきたのだ。アフリカセクション担当のMoulinier(フラカス)が担当する。上司のMoïseとしては、独立させたくない方針。エージェントMoulinierは大使をバカにする人種差別丸出しで話合いにあたるが、当然に失敗。そこでMoïseは交渉を新人のMerleuxに任せたのだった。
Merleuxは彼らの独立に向けた後押しをするのだが、大使が次々と不審死を遂げる・・・
歴史的背景
アフリカの年
この話は「アフリカの年」を扱っている。したがって、劇中の時間は1960年となる。カメルーン独立は60年1月なので、劇中の時間はその直後か。
さて、「アフリカの年」という言葉は世界史用語であるし、ちょっと歴史に詳しい人でも知ってるだろう。しかし、なぜ1960年なのか?なぜ一斉にアフリカの国が独立していったのか?ぼくは知らなかった。
簡潔にまとめると、フランス政府は1958年にはすでに独立を容認する姿勢を示している[1]。それでギニアは1958年に独立している。1960年になったのは「たまたま同じくらい準備に時間がかかっただけ」と言うのが適切だろう。
そもそもではあるが、独立運動自体はもっと前からあった。実際「パン・アフリカリズム」という言葉が存在している。パン・アフリカリズムは1900年にできたコンセプトと言ってもよさそうだ。しかし、独立に向けた運動の前に第1次大戦、第2次大戦と続き、独立運動どころではなかったのだろう。
フランス植民地独立の動きへと変わった出来事は2つある。1つはインドシナ(ベトナム・ラオス)戦争でフランスが敗北したこと、1954年。もう1つはアルジェリアで独立「戦争」が発生したこと、1954年。時系列的にはインドシナ戦争敗北が7月、アルジェリア戦争が11月。アルジェリア戦争については、au service de la Franceでこの後も何度も出てくるので、その時に書きたい。
戦争が立て続けに起きたフランスでは、とうとう大統領が交代する。第二次大戦の英雄(とフランス人は信じてる)のドゴールだ。フランス軍部はナショナリズムあふれるドゴールがガンガン行ったるでぇの姿勢を期待した。が、実際はもっと国際センスが良かったドゴールは「植民地の時代は終わりや」と考え、独立を容認する姿勢を出す。これが1958年の出来事だ。
ちな、現在のフランスは第五共和制の政治システム。つまり、Ver.5と思えばいい。Ver.1はもちろんフランス革命。第五共和制の政治システムはドゴールの時代に移行している。
[1] 独立是非を植民地の住民投票した。
ダホメってどこ?
ぼくはダホメという国を知らなかった。すでに存在しない国で、現在のベナンにあたる。とはいえ、日本人でベナンを知っている人も希少だろう。西アフリカの国だと思っておけばいい。
栄光の賛歌
ところで劇中でMerleuxが大使3人と共に次の言葉を言う。
Gloria in excelsis Deo.
Et in terra pax hominibus bonae voluntatis.
Laudamus te,
benedicimus te,
adoramus te,
glorificamus te.
ぼくは知らなかったので、フレーズを調べてみると、ミサのフレーズとのこと。
いきなりこのフレーズが出てきた理由は・・・ちょっとわからない。詳しい人がいれば聞きたいくらいだ。
笑いどころ
正直なところ、この話はかなりキツいジョーク。人種差別ギリギリというか、ほぼアウト。人によっては受け付けないかも。
だが、しかし、フランス人がそういう態度をとってきたのは事実であるし。フランス人の自虐ネタだと思えばいい。
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オチ
終盤になって、大使が次々と不審死。一人は交通事故、もう一人は心臓発作で亡くなる。特に説明がなかったので、「え?何??独立阻止派でもいるのか??」と思ったが、特にそういう描写もない。
実はエージェントMoulinierが独立支援を自分の手柄にするために、Merleuxの仕事を妨害していたのだった、というオチ。最後の最後でMerleuxはそれに気が付き、自分の仕事を中断する。
最後のシーン、ニッコニコのエージェントMoulinierと困惑顔の大使がテレビに映るのだった。
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