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車の運転について

以前私は『運転論』という本をアマゾンで出版しました。

その当時はことさら『あおり運転』が取りざたされたので、あおり運転にスポットを当てながら、そうする人間の心理について考察しました。

車を運転すると人が変わる、という言葉をよく聞いたと思います。

人が変わるのではなく、匿名性を利用できるので無理な追い越しや割り込みに対して罪悪感がわかないのです。

それと意識のなかで、その行為をしているのは『私』ではなく『車』がしていることと思っているのかもしれません。

私は日々高速を大型トラックで走っています。鳥栖から高知への定期路線便です。

最近はドライブレコーダーを装着している車が多いのであおり運転をする人はほとんどいなくなりました。

証拠が残るので、以前のような匿名性を利用した運転はできないことを多くのドライバーが理解したのでしょう。

人間の行動パターンは決まっています。フランスの皇帝ナポレオンは次のようなことを言いました。

『人間を動かす二つのてこは、恐怖と利益である』

ということは、あおり運転をしなくなったのは利益がないし、捕まるかもしれないという恐怖ということでしょう。

日常生活でもそうですが、人間が自発的に行動する時の多くは利益がからんでいます。

食欲がわけば何かを作り食べます。これも、生きるための利益です。眠たい時には寝ます。これも体力と心を充電するための利益です。

仕事をする時はお金を稼ぐための最も明確な利益ですね。

以前多かったあおり運転にしても、他者を威嚇して、ストレス解消する利益と思い通りに運転して、少しでも目的地に到着する時短を獲得する利益がからんでいます。

しかし、時短のために速度を上げて事故をした場合は本末転倒してしまいます。

人間はそこに利益があるだろう、と予測して行動するけれども、何事も経験が浅いと失敗する可能性も比率的に大きいでしょう。

私たち長距離ドライバーの多くは、走行距離で言えば一般ドライバーの10倍以上は走っています。

一般ドライバーは一年で1万キロと言われています。私は一年で14万キロ走っています。もちろん、私より多く走られているトラックドライバーもたくさんいます。

昔、戦争時に零戦パイロットに要求されたのは航続時間でした。運転時間が長い程、熟練したパイロットと認められたのです。

乗り物は経験が長い程、どう行動すればベストなのかが、あらゆる局面を経験していることでわかるようになってきます。

社会は分業することで、その道のエキスパートを育てて発展してきました。いくら弁護士や医者が頭がよくても、床屋さんのように上手く髪はきれないし、寿司職人のように上手く寿司をにぎれません。

私たちトラック運転手もたいそうなスキルがあるわけではありませんが、運転の経験は積んできています。

おそらくトラックやバス、タクシーの運転手の大半は、今目の前を走っている車がどのような行動をするかを予測していて、車が右によりだしたら、右折するなとか、減速しだしたら左のコンビニに入るななどの推測をし、かなりの確率で当たっていると思います。

なぜ、そんな予測をするのかは、乗用車を運転する人はウインカーを出さずに右や左にまがったりするので衝突するおそれがあるからです。

運転歴が長くなってくると、車種だけで、その車がどのような運転をするのかも推測できます。

もちろん、100%ではありません。しかしかなりの確率で当たります。

車の運転にしろ、全ての物事にしろ、多く経験すると人間の心理を理解しやすくなる、というお話でした。

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