見出し画像

読書について

現代は読書離れが加速していると言います。その理由はお察しの通り、テレビ、ゲーム、パソコン、スマホがあるからです。
幕末、明治期の文化人たちは、それは本を大事にし新しい本があると聞けば誰かから借りて、写本をしたほどです。
勝海舟はまだ20代の頃、お金に困ると知人から1冊当時の価値で10万円程する本を知人から借りてきて3冊程写本して、売って小銭を稼いでいたそうです。
現代では古本屋に行けば1冊100円の文庫本を買えます。
価値が低い物には興味がわかないのでしょう。
勝海舟や福沢諭吉は、それは本をこよなく愛し読んでいたそうです。
当時は本は貴重だし、『あの本を読んだぞ』と新しい知識を自慢したことでしょう。
読書と聞くと、イコール勉強という嫌なイメージを抱く人もいるでしょう。
私も以前はそう思っていた時もありました。しかし、興味のある本や、読みやすい作家さんの本に出会うと、食い入るように読んでしまうのです。
大学生の時に司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』に出会ってから大はまりし、『翔ぶが如く』『坂の上の雲』などの大長編も楽しませてもらいました。
『人生論ノート』で有名な哲学者三木清は著書『読書と人生』の中で、中学生までに読書の習慣が身に付かなかった者は生涯、その習慣はないだろう、と言いましたが、私はそうは思いません。
私は就職してからは、月に1冊の本も読まなかったのですが、35歳くらいから東野圭吾さんと百田尚樹さんの小説にはまり、それでやっと習慣化し週に3冊は小説を読んでいます。
何故、本を読むようになったかは、意識が変わったからだと思います。読むという文字の羅列を目にするという意識ではなく、その作家の面白い話に耳を傾けるというスタンスに変わると、ストレスなく読めるようになりました。
それと己を高めたいという強い意識もありましたね。
読書の醍醐味は、自分の好きな時間に誰にも気を使うことなく好きな作家のお話を聞けることです。
学生の頃はエッセイや自己啓発本の類いをよく読みましたが、あまり記憶に残りませんでした。しかし、30代から小説を読むようになってからは、意外と話の隅々まで覚えているのです。
この理由を考えてみると、単純なことです。小説は起承転結と時系列が整っていて、主人公に感情移入する度合いで心に残ります。
感情が入った時の記憶は、脳の海馬に刻印されるのでしょう。
百田尚樹さんの『永遠の0』を読んだ時の感動と衝撃は半端ではなく、小説の中で登場人物が語った会話の節々までほとんど覚えている程です。
だから、私はこれから読書をしてみようと思っている方には小説をおすすめします。
私個人的には、東野圭吾さんの小説はとにかく読みやすいし、面白い。読みはじめると、最後まで一気読みする作品が何作もあります。
このように好きな作家に出会えると、信頼できる先輩や師匠ができたようで心強くなります。
それと、人間は能力の高いアウトプットをするためには、当然ながら質の高いインプットをしなくてはなりません。その一般的なものが、学歴です。よりいい大学に入りその道をのばします。
だからといって、大学にいっていなくても世の中には頭のいい人はたくさんいらっしゃいます。
おそらく、そういう人は人の話に耳を傾けて、有益な情報を吸収するためのアンテナを常にはりめぐらせているのでしょう。
多くの人は言葉を取得する方法として、耳学問が主体になっていると思います。他人から聞いた言葉。テレビのコメンテーターの言葉。最近ではYouTubeなどの動画から聞こえる言葉を聞いて自分の日本語に取り入れて、実際に使っていると思います。でも、その言葉の意味を正確に理解して使っているでしょうか。知ったかぶりで話している人もいるのではないでしょうか。
その点、読書で仕入れた言葉、知識は文字によって理解するのでより確実な情報と言えます。
そして何より小説の良いところは、主人公が遭遇した難問やトラブルを擬似体験していくことで、現実に似たような場面に遭遇すると解決案をみちびきだしやすくなります。
よく読書家は大きな失敗をしない、と言われますが当然だと思います。何故なら人類の失敗の歴史を知っているからです。
そもそも、何故書物なる物が存在しているかは、人間の人間たる所以です。動物は今生きて経験したノウハウを次の世代に引き継ぐことはできません。生まれたらまたゼロからスタートです。しかし、人間はどうでしょう。先人が残してくれた技術を継承して、さらに発展させていきます。
書物はその最たるものです。そして、凄いのは2000年以上前に書かれた孔子やプラトン、アリストテレスの本がまだ読みつがれているのです。
書いた本人たちも作家冥利につきると思います。
人間は確実に死にますが、こうして本という形で自分の脳にあったことが、人類の役に立っている事を考えれば、見方によっては死ではなく生き続けているのと同じではないでしょうか。
多くの作家さんの理想の到達点はそこにあるように思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?