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vol.5 『コロナ以降のスポーツ施設のあり方』〜サッカー・フットサルづくりの教室2020〜


第5回のテーマは、テーマは「新型コロナ以降の施設のあり方-スポーツによるコロナ社会の価値創造-」。
株式会社スポーツファシリティ研究所代表の上林功さんにご登壇いただきました。新型コロナウイルスは、もはやスポーツグランドづくりにおいても如何様にも切り離すことのできない問題になりました。今回の教室を経て、スポーツ観戦の観点から上林さん自身が思考していること、この時代においても活用できる既存のアイディアからグランド作りにおけるヒントを得ることになりました。

(第1回〜4回の様子はこちらから)


上林さんは、日本では他にあまり例を見ない、「建築×スポーツ」を専門に活動する方です。過去に手掛けた主な作品としては、「Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島」「ZOZO マリンスタジアム改修工事」「兵庫県尾崎スポーツの森公園水泳場」等が挙げられます。

今回の講義は、コロナ時代におけるスポーツ観戦の問題を認識した上で、その問題をどう解決に導くのかというアプローチで行われました。

まず念頭に置かなければいけないことは、
【点の感染対策ではダメ、社会意識を変える】
といった考え方です。

某大学のスポーツ観戦のにおける社会不安研究結果によると、主に以下の二つのリスク認知が最も不安を感じるということが判りました。

【多人数集合のリスク認知】
大勢の人が集まる,不特定多数の人との接触など

【観戦行動においてのリスク認知】
観客の応援行動,待ち行列での待機など

皆さんがスポーツ観戦に行くとします。その際になんとなく不安に感じる部分が上記の二つが主ということです。その「なんとなく」を解決に導くことが、社会不安を払拭し安心してスポーツ観戦を楽しめることにつながります。

この対策を練り、実行しなければスポーツ文化自体が危ういという問題意識を持とうと上林さんは訴えます。

では、どのようにこれらの問題を解決するのか。
新規創造ももちろんですが、既存アイディアの利用やアップデートも解決に導いてくれるのかもしれません。

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ここでは3つのアイディアを紹介したいと思います。

1. 三蜜回避をチャンスに
・シートに付加価値をつける(ホスピタリティシートやオープンスペースの活用)
→前者のホスピタリティシートは、昨年開催されたラグビーW杯2019で用いられたものです。当時は主にVIPや来賓の方々向けのシートとして利用されていましたが、観戦者がグループに分けられていることから、仮に陽性者がでた場合の濃厚接触者等の特定が容易になります。これらの観点からコロナ回避において注目されている観戦スタイルの一つとなっています。また、後者のオープンスペースの利用はマツダスタジアムのネソベリアが挙げられました。広いスペースで寝そべって観戦できるのがこのシートの特徴ですが、コロナ回避にもつながるアイディアの一つにもなります。両者ともに言えることは、座席に座って観戦するという本来のスタイルに捉われず、全くそれとは違ったシートを用いてそこに付加価値(コロナ対策を含め)をつけるという考えです。

2. IoT/ICTの利用
・バーチャルグランドスタンド(双方性の確保)
→この観戦スタイルを耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。ベルギーのサッカーリーグで始まり、イングランドプレミアリーグにもインスピレーションを与えた観戦スタイルです。ライブ配信を楽しんでいるサポーターの方々の映像をスタジアムに映すというこのアイディア。無観客試合の中でも観客を、という考えのもと始まったサービスではありますが、観戦者がスタジアムに戻ってきた後でも継続しても面白いのではないでしょうか。ファンがゲームに介入できるという双方性は新しい価値ですね。

3. コロナ共生時代のスポーツ観戦
・街とスタジアム -公衆衛生との共存-
→現在そして未来、スタジアムは社会的な役割を持たないと存在の意義が薄れてしまいます。街とスタジアムが隔たれることなく、街とスタジアムが一体化したデザインが今後は求められます。現存する例としては、スタジアム×公園を体現したカリフォルニア・サンノゼに在るアバイアスタジアムや現在改築が進められているバルセロナ・カンプ・ノウが挙げられました。カンプ・ノウに関しては、外側のコンコースが街との共存を表現するというアイディアが評価され採用されたと言います。閉鎖的な空間ではなく、スタジアムの周辺空間を巻き込むという視点から得られる開放的な印象がコロナ共生時代では大切になります。

世界に少々目が向いてしまいましたが、実は日本でもコロナ渦において新しい取り組みも実施されているんです。FC今治が実施した「どんどんビジョン」やDeNAベイスターズの「ハマスタBAYビアガーデン」がその事例です。前者は商店街近くの芝生エリアを利用、後者はスタジアムのすぐ横を利用しました。外で観戦を楽しむというのは、コロナを回避しつつもW杯時にみられるパブリックビューイングのようなお祭り気分も味わえて、とても楽しいですよね!

上林さんのご登壇後の質疑応答セッションでは参加者の皆さんがグランド作り、そして運営していく上での感染対策の観点から想像される問題をメインに有意義なディスカッションが行われました。

グランドの設計で力を入れるべきポイントはグランドの外側である、キャッシュポイント、AIカメラ、助成金や行政との取り組み、クローバーを利用したグランド等々…

サポート役として参加している我々も、食いついて聞き入ってしまうような貴重なお話ばかりでワクワクしました!

さて、次回の第6回目は、川崎フロンターレ施設事業グループグループ長 谷田部然輝にご登壇いただき、「人が集まる場づくり」をテーマにお話しいただきます。今シーズンは驚異的な強さでJ1リーグを優勝した川崎フロンターレ。このクラブがいかに地域と共に歩んでいるのか、次回もまた有意義な時間になることは間違いなさそうです!


<文:小田 晋太朗>
Instagram: @shintaro_yc
Twitter : @oda_shintaro


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