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PGAプランスゴールド 謎の集団訴訟と8つの興味

ここでご紹介する訴訟は係争中のため、プラバシー保護のため訴訟の事件番号はもとより、原告・被告の個人情報が特定されないよう配慮してある。
俺、マサヨシの一個人の感想だと思ってほしい。

この訴訟との出会い

2021年7月、認定司法書士の勉強のために判例閲覧と傍聴を兼ねて東京地方裁判所に行ってきた。
裁判所に行ったことがない人は多いと思うが、裁判所に行くと、その日に傍聴できる裁判を検索できるiPadのような電子端末があり、離婚調停などのプライベートなものを除いて、誰でも傍聴することができる。
その日、俺は異常に被告の人数の多い訴訟を発見した。
被告の人数が多すぎて、端末の一覧表示の枠に被告の名前が収まりきらないほどだった。

しかし、それよりも目立ったのは、訴訟の被告となっている人たちの名前だ。
2020年に非常に大きな話題となった暗号資産アービトラージ投資のPGA、プランスゴールドアービトラージでよく名前を見たり聞いたりしたリーダーの人間たちだったからだ。


俺とPGA

俺はPGAに参加していた投資家(サービス利用者?)の一人だ。
2020年の5月ぐらいに同業の友達に紹介され、10万円を入れて始めた。俺には他に紹介できる友達もいないので、一人で運用をし続けた。

8月の末にはちゃんと元本が倍となり元本+利益で出金までできた
個人的にはプラスになった投資だった。

しかし2020年の10月にPGAはサービスがメンテナンスとなり、出金停止に。
利益が得られなかった参加者は大炎上し、PGAに参加していない様々な野次馬も加わり、前代未聞の警察沙汰まで起きる騒ぎとなった。

俺としては、出金が止まった当初は、法律の勉強もかねて様々な掲示板やLINEコミュニティなどで情報を収集し、どうなるのかを見守っていた。
しかしPGAが止まって半年ぐらいたった頃には、特に動きもなくなっていたので最近まで忘れていたほどだ。
まさか偶然訪れた東京地裁でPGAの訴訟に出くわすとは、本当に驚くような偶然が世の中には存在するのだと思う。

既に口頭弁論の時間は過ぎていたので傍聴はできなかったが、事件番号はわかった。
どのような訴訟なのか非常に気になった私は、PGAを紹介してくれた友達に連絡を取り、その友達とその友達にPGAを紹介した人に、私の少ない貯金から奮発して千葉でも有名な高級焼き肉をおごり、その場でいろんな方のツテをたどってもらい、試験勉強のためということで後日、訴状を見せてもらうことに成功した。
もちろん、訴状をコピー印刷などはしていないし、写真も撮影していない。目に止まったポイントをノートにメモした程度だ。

このNoteは自分の備忘録としての意味と、今、投資でマイナスになって訴訟を考えている人などにお役に立てばと思い、まとめている。

訴訟を簡単にまとめると・・・

全国から集まった約30名のPGAの被害者(投資資金がマイナスになった人達)が、PGAで目立っていたインフルエンサー約20名を紹介グループの枠を超えて、共同不法行為をしたということで損害賠償を求めているもの



この訴訟の意義

会社の人間ではなく、PGAを紹介していたインフルエンサー(トップアフィリエイター)のうち、セミナーや動画などで人前に出ていた人間のみを紹介系列関係なく訴えていること。
小規模セミナーやマンツーマンでPGAを積極的に紹介してたような人は、儲けていても含まれていない。とにかくネット上で目立った人間を被告としているように感じる。

この訴訟で原告に有利な判決が出れば、似たような海外拠点の暗号資産投資サービスに対しても判例として使うことができる。つまり、PGA以外の投資案件で泣き寝入りしていた人達にとって希望が生まれる可能性がある。
また、誰でも手に入るような比較的少ない証拠で訴訟を起こしているので、同じ手法を使いやすい。もちろん、この訴訟の判決が出てない以上は真似をするのは怖いが。


この訴訟のリスク

この訴訟で被告に有利な判決が出れば、既に飛んだ案件やこれから飛びそうな案件で似たような訴訟をする時に、インフルエンサー側にとって有利な判例となる可能性が高い。
逆に訴訟を考える被害者としては今後、「この訴訟の判決のせいで裁判しにくくなった!」という最悪な判例として歴史に残る可能性がある。


それではここから俺、マサヨシが感じた興味深いポイントを上げていく


興味ポイント1「被告が多すぎる」

この集団訴訟、加害者として訴えられている被告が20人近くもいる。
会社の人間や最初に持ち込んだ人だけに絞り込んで戦うものと違い、PGAを紹介していたインフルエンサーを手当り次第に被告にしている印象を受ける。

PGAは「紹介制」だったので、原告と被告の関係性を考えると、約30人の原告と約20人の被告の因果関係などが求められたりするとどうなるのだろうか。
原告30人 ✕ 被告20人で「600通り」の関係性を示さねばならないのか?
このあたりは気になるところだが、裁判官が被告一人ひとりの状況を判断してくための時間と労力は大変だろうと思う。


興味ポイント2「被告の選定基準」

PGAにはBaron、Viscount、Earl、Marquess、Dukeといったランクがあり、当時の最高位のタイトルだったデューク、そしてマーカスの人達はよくセミナーにも登場していた。
デュークになるには4人(4系列別)のマーカスが必要となるのだが、なぜかこのうちの2系列のトップにいたマーカスの2名は被告になっていない。
しかし、興味深いことに、その被告になっていない2名のマーカスのグループにいて目立っていたインフルエンサーの人間は被告に入っている。

なぜトップを外したのかはわからないが、そのような系列の違うインフルエンサー達を、原告側が系列関係なく訴えている。
おそらく、被告にされた側の人間の中には

・紹介報酬の発生する自分のグループのダウンラインではない

・PGAに投資する際のお金を受け取ったことがない

・PGAの説明をしたことがない

・原告とメールや電話などで連絡を取ったこともない

・そもそも原告と一度も会ったことがない

という人もいるだろう。
被告側から「原告と会ったことがない」「紹介報酬をもらえる関係もない」「自分との関係性を証拠で示せ」と今後反論された時にどのようになるのかは注目したいところだ。


興味ポイント3「共同不法行為をどう立証するのか」

共同不法行為は通常はもともとのサービス提供をおこなっていた運営会社の社長とその役員、もしくは、その会社の役員と親しい外部のトップの広告塔の人間に適応されることが多いのだが、今回の訴訟は運営会社ではなく会社の人間ではないインフルエンサーに矛先が向いている。
さらに、紹介の系列を無視して被告を選び出しているので、その被告たちがどのようなつながりで共同して不法行為をおこなったのかを原告は示さなければならない。
今回の訴訟は被告だけでも約20名いて、全員が顔見知りという可能性も高いとは言えない状況である。

どのように共同不法行為を原告は立証できるのか、興味深いところだ。


興味ポイント4「原告の被害金額が大きすぎる」

月利20%が謳い文句だったPGAは、いま考えると緊急事態宣言で自粛傾向の中で真逆を行くような派手さがあった。
コロナウイルスで将来の人生に不安を感じる人は多い中で、一つの希望だったのかもしれないし、人生の勝負をかけたくなる気持ちはわかる。
しかし、それにしても原告の被害金額が大きい。
原告の人数は約30名、他の投資なら30人から一人100万ぐらいで3,000万円ぐらいかと思うかもしれない。
しかし、この原告の被害金額の総額は約2.5億円におよぶので、一人平均1000万円弱だ。
もちろん、全員が一定金額ではなく、下は約50万、上は約1億円という幅である。
PGAの動画で、数億円を稼いだリーダーが「私は自己資金10万円で始めました」と言っていたような記憶があるが、この原告団はなぜこのような大金を注ぎ込んだのだろうか。

しかも原告は、東京、千葉、埼玉、神奈川、新潟、宮城、富山、愛知、大阪、山口、京都、滋賀、奈良、岡山、鳥取、香川、福岡、鹿児島、熊本 といった約20の都道府県の人達なのだから、日本全国に一発勝負をかけたいお金持ちはたくさんいるのだなと実感する。

これだけの大金を突っ込んだのは、何かしらPGAの運用で利益を実感していたからではないかと思うが、原告側がPGAから利益を引き出していなかったのか、紹介を出していなかったのかどうかなどは、問われたらどうなのかは気になるところだ。


興味ポイント5「原告の証拠がネットですぐ手に入るものばかり」

やはり裁判で重要になるのは「証拠」だと俺は思う。
証拠がなければ「あなたの勝手な被害妄想ですか?」で終わってしまう。
だから俺は、原告が用意する証拠がどのようなものかを知りたかったのだが、原告が用意した証拠は

・PGAの会社概要資料

・PGAの報酬プラン資料

・週刊SPAの記事

・PGAに入金する際の振込明細書&暗号資産の送信履歴

大きくこの4つしかないのである。

共同不法行為を裏付けるような証拠資料、原告側とのやり取りの履歴などは添えられておらず、なぜ一人平均1,000万円弱のお金を投資することになったのか、その経緯などが全くわからない。

PGAにお金払いました。PGAとは会社概要とプランはこちらです。週刊誌にポンジだと取り上げられていました。だから詐欺なので目立ったインフルエンサーはまとめて不法行為をした加害者なので、損害賠償を求めます。

原告から現段階で提出されている証拠を見ればおそらく、多くの人がこのような印象を受けるだろう。

もちろん訴状には原告の弁護士が、いかに被告たちに責任があるかについて文章でまとめてあるのだが、文章と証拠は別物である。
だからこそ、証拠だけでは上記のような印象を受けてしまうのだ。

もちろんここから訴訟が進行する中で新たな証拠なども出てくるだろう。しかし裏を返せばこれぐらいの証拠で訴訟を起こすことが可能ということでもある。
訴訟をするのに戸惑っていた人達は、一つの勇気をくれるかもしれない。もちろん、訴訟に負けたら訴訟費用も、かけた時間も返ってこないという覚悟は必要だ。
投資も裁判も自己責任ということなのだ。


興味ポイント6「情報の少ない弁護士」

PGAの法的な問題や訴訟などについては、テレビでも多数取り上げられたり、書籍を書いたり、ユーチューブチャンネルを持っていたりと弁護士自身の情報がかなり多い人達が担当しているという印象がある。
しかし、この集団訴訟を任されている弁護士は、名前で検索しても情報はほとんど出てこない。
所属している弁護士事務所の名前が出るぐらいで、顔写真も出てこない。
もちろん、有名だから敏腕で勝ちやすく、無名だから負けやすい。といった相関関係は無い。
逆に原告30名をとりまとめ、被告20名を訴えるわけなのだから、このベールに隠された弁護士が今後どのように訴訟を進めていくのかは非常に興味深いし、被告側に対して「相手の出方がわからない」というプレッシャーを与えられているのではないかとも思える。


興味ポイント7「落とし所はどこなのか」

原告側としては「PGAに投資した金額」+「訴訟費用」これらを全額返してもらえるのが、最高の結末だろう。
ただ、被告は20人近くいるし、その被告全員が1名の弁護士に任せることは無いだろうから、原告の弁護士は被告それぞれと戦っていくことになる。
これは非常に大変なことだと思うし、被告によっては「無視する」「和解する」「徹底抗戦する」といったそれぞれの形があるだろう。
これらがどのような落とし所で決着を迎えていくのか。
被告の人数が多いので、それぞれの結末は同じとは思えない。裁判慣れしている人間、高い金額で高額な弁護士を雇って放置する人間、あえて無視して欠席裁判を受け、支払い命令を無視する人間、それぞれがどのような結果になるのかは人間観察の意味でも興味深い。


興味ポイント8「原告が勝訴した場合、どのような返金割合になるのか」

奇妙なポイントの3でも取り上げたが、原告は最小金額約50万、最高金額約1億円と、約200倍の差がある。
この訴訟に勝利し、原告全員に行き渡るだけの損害賠償金額が支払われればなんの問題もない。
しかし、2.5億円の請求金額に対して、5000万円までしか回収できなかった場合、一人あたり150万円ずつというわけにはいかないだろう。
1億払った人は2500万ぐらい回収したいだろうし、50万の人でも10万円ぐらいしか返ってこなければ訴訟にかけたコストを考えるとマイナスになってしまうかもしれない。

このあたりはもちろん、返金割合などは訴訟の前から決めているだろうが、実際にどのような形で返金されるのかは興味深い。
これからの長い答弁と審議の中で時間をかけて結果がどうなるのか、非常に興味深いし今後の参考になりそうだ。

総括

暗号資産の投資は、私もPGAから始めたので経験は浅い。
ただ、銀行に預けていても貯金が増えるわけでもなく、コロナで日本も今後どうなるかわからない中で、一攫千金の夢を見たい人達にとっての一つの選択なのかもしれない。
(一攫千金の夢を見るにしては、今回の原告は7割ぐらい数百万円もの金額を投資しているので、勝負をかけ過ぎだと個人的に思う)

 PGA以外にも訴訟になっている暗号資産投資の話は多数存在するが、PGAのもたらしたインパクトは大きい。
 俺が聞く話では、今までの「リーダー」と言われる人達は、投資がうまくいかなくなると、その話を一切せず、紹介した人達に連絡を取ることもせずに逃げるか、「次で取り返しましょう」と新たな投資を勧めてくるようなタイプが多いという。
そういう人達は本当にこのような訴訟があることを知って行動を改めたら良いと思う。

 今回の訴訟で原告と被告にどのような判決がもたらされるのか。集団訴訟は判決までに数年かかるようなことがネットには書かれているが、今後、忘れずにこの訴訟の判決を見届けたいと思う。


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