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Fridge with me#毎週ショートショートnote

今週のお題「バイリンガル餃子」

台湾出身の彼は優しい。
付き合ってもう2年になる。
彼とは価値観が多く共通しているし、私の英語の先生でもある。
そして張り詰める国際関係の中の母国のことをいつも気にしていた。

そんな彼と意見が合わないことが1つあった。
餃子の水か焼きかということ。
家の冷蔵庫にはいつも餃子を作って冷凍している。
私は焼き餃子一択の浜松女子だ。
でも、彼と休日に作る餃子タイムは喧嘩も楽しい。

「ねえ、餃子ってバイリンガルだよね」
流暢な日本語で彼が言う。
「?」
「豚はカナダ、ニラは中国、椎茸韓国、皮の小麦は米国、キャベツは日本・・」
「ほんとだ、食べれば4か国語話せるようになればいいね」
「美味しい時間はいつも通じ合ってるよ。言葉がなくてもね」
彼は餡の付いた手でわざわざ私の頬を突っつき、そしてキスをした。

そんな彼は緊張が高まった母国へ兵役志願のために帰る決意をした。
私は彼の母国愛に結局負けた。
なにがバイリンガルだ!
私は冷蔵庫のドアを思いっきりたたいた。

完 410文字



たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「バイリンガル」「ギョウザ」に参加させていただきました。

皆さんの不思議餃子ワールドを目の当たりにして、これは太刀打ちできないなーと思い、緊張のアジア情勢を盛り込み・・・とつぶやいても発想の貧困さは如何せん隠せないか・・
まあいい。参加することに意義がある。と自分を落ち着かせた。
冷凍餃子のストックはまだあるし。
休日のお昼はそれを食べよう。争いには参加しないけどね。



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