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告白雨雲 #毎週ショートショートnote

「では雨雲よ、最後に言いたいことはあるか?太陽神が聞いていただけるそうだ」

雨雲の重そうな身体が小刻みに震えていた。かかる不条理に。

「あんたはいいよな、すべての生命の源みたいな扱いで」

太陽神に5トンほどの水をばらまき雨雲は吠えた。少し身体が小さくなった。

「雨が降らなきゃ、あんたをあがめる人間も生きていけないんだよ」

もう5トン分小さくなった。

「あんたが照らして水が蒸発して俺を作るんだろうが!それをちょっと雨を降らす場所間違ったからって、毎回怒鳴られてよ。人間が変なもの飛ばしてきて雨降らす時代だぜ?デカい山が邪魔で500年くらい雨降らせられなかったんだよ、チリの砂漠なんてよ!そんなのも全部俺のせいか?!」

250万トン分小さくなった。

「俺がいなきゃならないくせに作り替えばかりでよ、風はあんたの手下だろ黒幕は・・」

最後まで言えず雨雲は消えた。

「やばかったな、今回は」

太陽神はニヤリと笑い、気温は季節外れに5度上昇した。

完409文字



たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「告白雨雲」に参加させていただきました。


告白ではなく意見陳述という場、毒はくで裏お題のような感じもしますが。

チリのアタカマ砂漠というところは、2015年あたりまで500年降雨の記録がなかったそうですが、最近は少し降るそうです。それでも最も降雨量の少ない地域として有名で雲がないので星空がこれもまた、世界有数の綺麗な星空だそうです。こんなことを書くと、ますます雨雲がかわいそうになりますが世の中にはこれと似たようなことが知らないところで起こっているような、いないような・・・
読んでいただいてありがとうございます。

『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

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