世界はここにある㊽ 第三部
ロセリスト邸の一室でナオはじっと主が来るのを待っていた。
彼が来ればソファには座らず、必ず窓際の古いロッキングチェアに座るだろう。彼はアンティークとはいえ、そう高価ではないマホガニーの椅子が気に入っていた。その椅子に座り窓の外のブナの森を見ながら物思いにふけるのだ。彼が外へ出て行くことはほとんどない。年齢的に足が弱ったせいもあるだろうが問題は他にあった。しかしそれを知り我が事の如く彼をいたわるものはいない。なぜならそれをもう一人の彼が酷く嫌ったからだ。
チャールズ・D・