世界はここにある51 第三部
高山はフランツの私邸に車を乗り入れた。ゲートでのチェックはいつもより厳しい感があった。身分が不確かなわけではないが、予定が無いことで手続きに時間がかかったようだ。許可がおり車を駐車スペースに停める。エンジンを切ったあとフランツにどう切り出すか、高山は車から降りずに暫くの間考えていた。思案に余っていた時、隣の駐車スペースに車が停まる。ウォルフの車だ。彼は高山の車に気付いていた様で降りてすぐに近づいてきた。
「ドクター、昨日はどうも」
「やあ、ウォルフ。忙しいようだね。チーフ