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リファラルのススメ #2

100名規模かつ社内でのリファラル理解度はゼロからスタート、採用ターゲットとの繋がりが多い社員は多くないという会社でリファラル採用を進めるならということで記事をシリーズ化しました。

第1回目は「そもそもリファラルって何?」「なんでやらないといけないのか?」というリファラルの概要を書きました。

今回は、リファラル採用を導入する全体像を考えていきたいと思います。

いまの自社の現状を知る

リファラルに限らず、どんな施策を始めるにしても兎にも角にも自社を知るというのが大切です。リファラル採用において、把握しておきたい項目は以下の5つです。

社員総数:在籍社員の総数、紹介元の母集団
協力社員数:社員のうちリファラル実行にポジティブな人数
コンタクト数:紹介から面談やリファラルイベントにつながった数
応募数:紹介から選考に進んだ数
採用決定数:採用が決定した数

リファラルをゼロから始めるという場合であれば社員総数しか現状は数値としてもっていないということになりますが、多少なりでもやっているという場合は最低1年間は遡って数値を把握してみましょう。

現状を把握できたら、次は目標設定です。目標設定期間は短すぎても長すぎてもよくないので、1年間程度の計画を立てましょう。クォーターごとに定期的にふりかえりをします。

ポジションごとに何名採用するかという採用計画に基づいて、リファラル採用における目標達成の数値をおきます。リファラルにおいて目標として定めたい項目は以下の通りです。

・社員協力率(協力社員数÷社員総数)
・一人あたりのコンタクト数(コンタクト数
÷協力社員数)
・応募率(応募者数
÷コンタクト数)
・内定率(内定数
÷応募者数)

リファラル施策の準備

目標を設定したら実際にリファラル採用を推進するための準備に入ります。
準備をどれだけ入念に行えたかで、リファラル採用が社内に浸透するかが決まります。

① ペルソナ設定
他の採用施策と同様に募集ポジションごとに具体的な人物像(ペルソナ)を設定し、社員に明示します。特に社員が個別に声をかけるリファラルでは、どんな人を紹介すればよいのかを迷わないようにすることが必要です。
大切な友人・知人に声をかけるわけですから、「この人ならしっかり条件にマッチしている」と確証を持てなければ二の足を踏んでしまいます。

上記はペルソナ設計に関する別記事にも記載しましたが、ペルソナは必要なスキルセットのみではなく、マインドセットなど具体的に考えましょう。

② 会社の魅力を伝えやすいコンテンツを準備する
会社が求めている人物像にマッチする人が友人・知人の中にいたとして、社員が自ら会社の魅力をわかりやすく説明するのは難しいです。
人事などの業務でそもそも会社の説明になれていれば話は別ですが、多くの現場社員は「うちは良い会社だよ」という説明になってしまい、具体的になにが良いのかもぼやっとしてしまいますし、紹介しようとしている人物がどこの部分を重要視しているかを理解してトーク内容を変えるのはまず無理です。

以下のような項目が見ればわかるというコンテンツやトークスクリプトを作成し、紹介元となる社員が困ることがないようにします。

仕事内容
一緒に働く人
会社のフェーズ
働く環境(成長できるか、福利厚生など)
報酬

事前に会社のどこに対するエンゲージメントが高いのかを社内調査しておくと、コンテンツ作成の参考になります。

③ Ver.0施策を一緒に動かしてくれる社員を決める
いきなり全社的に施策を開始する前に、数名のポジティブな社員に協力を依頼してVer.0として仮のリファラル施策の検証に協力してもらうことがオススメです。限られた人数で仮の施策を運用してもらうことで協力しやすいポイントややりにくいポイントの意見を集めやすく、まとめやすくもなります。

またVer.0のリファラル採用運用チームのメンバーになってもらう社員は、以下のような社員が理想的です。

・採用ターゲットになりうる人との交友関係が広い人
・社内を巻き込むことがうまい人
・自社が好きでエンゲージメントの強い人

各部署から1〜2名程度はメンバーになってもらえるとポジションごとの視点も取り入れやすいです。

④ リファラル事例作成
リファラルは人脈があり、無理やり他社から引き抜くというヘッドハンティングのイメージを持ってしまい、一般職にとってハードルが高いと思われがちです。過去にリファラルの実績がある場合は、採用をした社員と、リファラルされて入社した社員の対談インタビュー記事を作成して、「リファラルは自分たちでもできる、難しく考えなくてもいい」と理解しやすいようにすることが必要です。
いまはまだ実績がないという場合でも、実績ができた段階で事例記事を増やしていきましょう。

以下のようなテーマでインタビューをするなど、聞きたいことをまとめておくと便利です。

(声をかけた側) 
・なぜリファラル採用をしようと思ったのか?
・リファラル採用をするための具体的なアクションは?
・どうやってその相手に声をかけたのか?
(声をかけられた側)
・声をかけられてどう思ったか?
・入社を決めたポイントはどこだったのか?
(共通)
・二人は元々なにつながりの知り合いなのか?
・リファラル採用の懸念事項はなにか?
・今後もリファラル採用を実施するにはどうするとやりやすいか?

こんな記事になります。

このリファラル事例インタビューは以下の目的で作成します。

・リファラル採用施策の課題の把握
・社員が参考にしやすいリファラル採用の仕方を明示
・リファラル採用の協力における社員の理解促進コンテンツの獲得

社員のインタビュー記事をnoteなどで公開することで、リファラル採用を強化していることを社外にもアピールできます。

⑤ 紹介しやすいプロセスの設計
リファラルの設計において重要なのが、社員にとって最も友人・知人を紹介しやすいプロセスを準備することです。社員とその友人・知人の関係性をしっかり考慮する必要があります。入り口は気軽なものであることが大前提です。

例えば以下のような流れです。

社内のピザパーティーや興味のありそうなサークル活動に遊びにきてもらい、紹介元社員と役員やマネージャー、紹介された人でカジュアルに話せる場を作る。(役員やマネージャーは自然に会話に入るのがポイント)
そのうえで「この人良いかも」という人がいれば、人事メンバーに共有してもらい、ATSのタレントプールに登録する。

⑥ 評価・称賛方法や基準を決める
リファラルを浸透させるには、協力社員に対する評価や称賛を徹底することがモチベーションの向上につながります。

実際に紹介した人数の多い社員や採用につながった紹介ができた社員だけを評価したり、称賛すると、実は紹介にはつながっていなくても新規求人がでるために積極的に友人・知人に送ってくれていた隠れポジティブ社員のモチベーションを下げてしまいます。この計測を人力で行うのは非常に難しくツールの導入を検討するべきです。

リファラル施策の実行

施策の準備ができたら、さっそく実行をしていきます。
ここで紹介する実行については、まずはポジティブな社員のみで実行するプレ施策から開始することを想定しています。

① Ver.0プレ施策チームのキックオフ
準備段階で選定したメンバーにリファラル採用Ver.0運用チームのプロジェクトを正式に打診し、キックオフミーティングを実施します。

キックオフでは、主に以下のことを話します。

・プロジェクトの目的・概要
・実施期間
・メンバーに期待する役割
・メンバーからひとこと(意気込みなど)
・プロジェクトのスケジュール管理方法や施策の進め方
・報告ルールや連絡手段
・定例ミーティングの設定
・質疑応答

ちなみにリファラル施策は経営に近い要素がたくさんでてきます。せっかく進めたのに経営会議ですべてNGが出たとなると水の泡になるので、できれば最初から役員クラスの方にオブザーバーとして入ってもらいましょう。

② Ver.0プレ施策チームで施策をブラッシュアップする
キックオフで認識のすり合わせを行ったら、仮施策をプロジェクトメンバーのみで実際に運用します。

ここでのポイントは社員の交友関係サーベイから実際の紹介まで一通り実際に動いてみるということです。
準備段階であくまで「これがあるといいだろう」という想像の元作成したアピールブックやトークスクリプトなどのツールが本当に一般の社員に扱いやすいものか、内容に過不足がないかは実際に知人にみてもらって、質問を受けてわかることもあります。

また交友関係サーベイなど社内向けに行うワークも、どのようにやるとわかりやすく混乱を招かないかをまずは少人数で行ってブラッシュアップします。

プロジェクトメンバーから出たリファラルに関する質問はまとめてFAQとしておいておくとよいでしょう。

③ 施策のリリース
Ver.0プレ施策チームでブラッシュアップした施策を経営層に提案して了承がでたら、社長もしくは担当役員からリファラル採用を全社で行う旨を発表してもらいます。ここは人事からでもなく、プロジェクトリーダーからでもなく社長・取締役クラスから行うことがポイントです。

「なぜ全員で採用をやるべきなのか」を熱意をもって社員を巻き込むための重要な機会です。たとえ具体的な説明は人事にパスするとしても「なぜ会社としてリファラルに踏み切るのか」は経営層から発言した方が社員の士気はあがります。(うちはフラットな社風だから権威は関係ないと思う人もいるかもしれませんが、実際にはやはり影響力が違います)

以下のようなポイントで話をしてもらえると良いでしょう。

・会社の状況と今期の目標
・目標を達成ための課題共有
・リファラル採用の目標
・リファラル採用の重要性と課題について
・リファラル採用で社員に求めること
------------------------ここからは人事からでOK-------------------------
・求める採用ポジションについて
・過去のリファラル採用経由での入社実績の紹介(あれば)
・具体的な紹介フロー
・質疑応答先の明示

④ 交友関係サーベイ
Ver.0プレ施策チームを中心として、いくつかのグループごとに紹介できそうな友人を一緒にリストアップするワークを行います。

時間は30分ほど必要です。

・採用したい人物像の伝達
・FacebookやTwitter、LINEなどに登録した友人リストを見てもらう
・採用したい人物像に当てはまりそうな人をリストアップしてもらう
・リストアップした人に対してのアクションを決定する

リストアップした人へそれぞれどんなアクションができるかを決定し、定期的に進捗を確認していくところまでしっかり管理できる仕組みづくりをしましょう。

⑤ 継続的な進捗の可視化
採用決定以前のアプローチ数、コンタクト数、応募数などの数字の進捗を朝会やSlackなどのコミュニケーションツールで通知するようにします。募集をかけているチームのマネージャーなどから、定期的に求める人物像について発表してもらうとより認知が広がります。

また、リファラルから応募や採用決定などの成果があがったときは、紹介元の社員を会社全体で称賛します。「リファラル採用をする人が事業に貢献できる、評価される」と言ったことがより全社に浸透しやすくなります。表彰制度などがあればリファラル貢献度に応じて賞を作っても表彰してもよいでしょう。

他のリファラル施策を検討する

基本的な施策の運用が一通り浸透してきたら、追加でできることを検討していきます。ここでのポイントは追加施策はあくまでも基本ができるようになってから行うことです。これがトレンドだからと次々に追加すると社員は結局なにがなにやらわからなくなってしまいます。

うまく回ってきているなと思ったらそのときに「採用目標設定を現場チームにも持ってもらう」「リファラル強化期間キャンペーン」を実施するなど補足的に追加できるものから試していきます。

さいごに

ここまでをしっかり運用できれば、基本的なリファラル採用の施策実施が行えるはずです。
リファラル施策の設計自体は概ね自力でできますが、リファラルが進むうちにリアルタイムで数値把握したいという要望がでたり、社員にフローが浸透しない場合はまだ紹介プロセスが複雑な可能性があり、もっと簡易なプロセスを組む必要があります。紹介ポジションの把握や応募者の進捗管理の可視化も行うとなると、自力でやるのは難しいに等しく人事側の負担が大きくなります。本格的にリファラル採用をしようと腹を括るのであればクラウドサービスの導入は視野にいれた方が現実的です。とはいえ、リファラルに知見のない中小企業にとってこの手のクラウドサービスは安いとは思えないものです。だからこそ、今回ご紹介したようにプロジェクト単位のスモールスタートで自社でもリファラルができる実感を持ってからクラウドサービスの予算を検討すると経営層を納得させやすいでしょう。

いかがでしたか?長くなってしまいましたが、リファラル導入のための全体像でした。
次回以降は、全体像の中から具体的にどう動くかイメージのつきにくいものを深堀りして説明していきます。

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