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人と比べるのは何のため

 人と比べてしまう。それがずっと私を悩ませてきた。そして今も。何か新しいことを始めたり、自分よりすごい人(私の周りには大体すごい人しかいない)を目の当たりにしたりすると、自分がどうしようもなくダメな人間に思えてしまう。自分を責めてしまう。あの人はできてるのに自分はなんでできないんだって。
 人と自分を比べることに意味がないことはわかっている。正直比べていいことなんて何一つない。たぶんこれは癖みたいなもので。
 昨日の自分と比べて成長してるとか、良くなってるとか、そういう積み重ねを大事にする価値観を、素直に受け入れられない部分も未だにある。

 透明なグラスの表面を汗がつーっと流れ落ちる。茶色の境界線が一段、下がる。そうして彼女は言った。
「それって、自分と他人を比べて劣ってるな、ダメだなと思うこともそうだけど、自分の方が優れてるなって思うこともあるってことでしょ」
 その言葉にハッと気づかされた。自分が誰かより優れている、勝っていると思いたいから、人と比べることをやめられないのかもしれない。 心当たりは、山ほどあった。
 容姿、成績、知識。なんでもそう。誰かに評価されたい、客観的に見て誰かより勝っていたい。そんな気持ちが常にどこかにあった。好きになる人や恋人と自分のステータスを比べてしまうのも、同じ理由だろう。そこまでして人と競って、私は何を得たいのだろう。

 つまりは自分に自信がないということであり、自分で自分を好きだと思えないということだ。自分で自分を褒められないから、認められないから、代わりに誰かに評価してもらう。そっちの方が振り回されはするけど楽だから。いや、本当は他人の評価に振り回される方がしんどいはずだ。
 昔誰かのツイートで、大学生にもなると周りからの評価よりも自分がどうありたいかで生きたほうが良いというのを見た。自分がどうありたいか。その軸がブレブレで、なんなら探してる途中で。その家庭にいる自分を肯定できていないのかもしれない。
 そして嘘をついたり約束を破ったり、浅ましいことをするたびに削られているのは他の何でもない自尊心で。自分を信じられないのは、自分で自分を裏切ってきたからで。正しいことがすべてじゃない。すべてじゃないけれど。後から自分が振り返って、穴があったら入りたいと思うようなことはしないでおこうと思った。
 つまりどういうことかと言うと。課題を提出し忘れたことを、先生に正直に連絡せずに「パソコンが壊れていた」なんて見え透いた嘘をつくのはやめよう。

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